このあいだ「読む野球」に書いたが、あの事件の「被害者」だった小林繁の言葉が全てを物語る。これは江川卓ではなく、巨人に対して吐かれた言葉だ。
(矢崎良一著「元・巨人」)から
そりゃ確かに法律的には一日の空白があったかもしれない。でも、それがあるからできるんだと言うのは、もう子どもの発想だと思った。(中略)単なる法律的なミスのわけでしょう。(中略)我々の生きている社会と言うのは、そんなものではないよね。暗黙のルールと言うものが存在しているはずだから。

選手に求められるモラルと、球団、機構に求められるそれとは次元が違う。

野茂英雄のケースのようにルールにない移籍を求めて画策することも、選手には許される。野茂自身がどう思っていたかはわからないが、結果的に彼がルールにない行動をしたことで、選手がNPBからMLBへと移籍する道が開けたわけだ。
当時、私は野茂英雄の移籍を積極的に応援していた。

野茂同様、金子千尋が国内FAと、ポスティングの二股をかけたことは、ルール上問題が無かったわけだから許容されると思う。
しかし、それに乗じて「腰掛移籍」のオファーをした他球団の無分別には問題がある。そういう前例を残せば、以後、ポスティングの趣旨やNPBとMLBの関係が変質してしまう恐れがある。
自球団のことだけ考えて、プロ野球全体のことを考えないのは、浅はかだと思う。

球団は「プロ野球」という閉ざされた業界の一員であり、業界なくして自らの存立がないことを常に意識しなければならない。
球団同士の、ルールの精神を軽視した駆け引きや、出し抜きあいは、結局、リーグ、球界全体を衰退に導く。これが私の一貫した考え方だ。
それは野球でもビジネスでもなく、汚らしいエゴである。
巨人だけでなく、あらゆる球団のそういう動きに反対だ。

主としてこのブログは竜党ですがさんに対する答えとして書いたが、最後にもう一つ。
ファンは野球界の重要なステークホルダーだが、ファンは、球団と利害を共有していない。ファンは球団が強いことだけでなく、スポーツの担い手として健全であることも求めていくべきだ。

私は昔南海ホークスファンだったが、南海が過去に強引な手法で多くの有力選手を獲得したことを、球団史上の「恥辱」だと思っている。
「他球団もやっていたこと」ではあるが、だからといって南海もそうして良いわけではない。
そういうルール軽視と拝金主義が、1970年の「黒い霧」につながったと思うし、今に至るNPBの旧弊さ、モラルの低さにつながっていると思う。

ファンはアマチュアである。チームが勝ったからと言って一銭も入らないどころか、優勝セールだなんだと出費を強いられる存在だ。
だからこそ、球団に対しても、選手に対しても、その挙動、判断を厳しく見守っていく必要があろう。常に批判的であるべきだと思う。

球団のやることは、ルール無視だろうが、ルールの精神を踏みにじっていようが、何でもOKというのは、ファンのモラル・ハザードだと思う。言い方を変えれば「贔屓の引き倒し」とも言えよう。

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