高校野球のタイブレーク制の導入が決定しそうな様相だ。
朝日新聞
日本高校野球連盟は27日、大阪市内で理事会を開き、選手の健康管理やスムーズな大会運営を目的に、来春の硬式の地区大会でタイブレーク制を導入することを決めた。
同点のまま延長戦に入った場合、何回からタイブレークを始めるかや場面設定、打順については、来年1月22日に全国9地区の代表者らが集まる懇談会で話し合う。
高野連はいまだに「選手の健康管理」を錦の御旗にしているが、タイブレーク制と選手の酷使の問題はほとんど関係がない。
過去5年の甲子園の高校野球の延長戦について調べた。

大会によってばらつきがあることが分かる。全く延長戦がない大会もあれば、2011年夏のように9試合もあった大会もある。
実力が近い学校同士が当たれば延長戦の可能性が高くなる。これは偶然だろう。
しかし、延長戦は平均すれば全試合数の1割に満たない。
タイブレークが10回から適用されたとしても、1大会で4~5試合程度。
実際には12回当たりから適用されると予想されるが、その場合は全体の3%以下。1大会で1試合程度だ。
タイブレークはまず地区大会で適用されるが、延長戦の比率は甲子園と大きく変わらないと思われるから、地区大会でもあくまで例外的なものにとどまるだろう。
タイブレークは野球の国際化のために検討すべきものだ。チーム、個人の記録の処理の問題など課題はあるが、国際化の進展に寄与するのなら導入することもあり得るだろう。
何度も言うが、この仕組みと「選手の健康管理」はほとんど関係がない。
タイブレークを導入することで、延長戦を一人で投げ抜く投手が出なくなると言いたいのだろうが、タイブレーク自体が滅多に起こらないから、高校野球全体の「健康管理」にはほとんど寄与しない。
今の高校野球の健康面の問題は主として投手の「投球数の過多」と「連投」の問題だ。
それによって投手が消耗するだけでなく、肩や肘に修復不可能な故障を負って、その後の野球人生や生活一般に深刻な影響を及ぼす可能性があることが問題だ。
高校野球が本当に「選手の健康」を考えるのなら、多くの国際大会と同様「投球数の制限」と「登板間隔」についてのルールを設けるしかないのだ。
もう一つ、地区大会のレベルから、高野連の責任でメディカルチェックを厳格に行い、異状があれば出場停止を命じることができるようにすべきだろう。
しかしそれをすることで「甲子園での日程調整が難しくなる」「高校によっては投手の数が揃わなくて出場できなくなる」などの弊害があると言われている。
ルールを変えれば、運営方法が変わるのは当たり前だ。また参加者が変化を強いられるのも当然のことだ。それを乗り越えて改革を奨めなければ、その効果は期待できない。
要するに高野連や関係者たちは「今の興行システム」「今の高校野球の成り立ち」を変えたくないのだ。
「選手の健康」を犠牲にしても「今のやりかた」を守りたいのだ。
今の甲子園は「利権」になっているのだ。そしてその「利権」を「伝統」であるかのように言っているのだ。
こんな意識の低さではそもそも「野球の国際化」にはついていけないだろう。
このあたりについては、こちらにも書いた。


「文藝春秋オピニオン 2015年の論点100」に書いています
高野連は「タイブレーク制を導入したことで、選手の健康管理は強化された、問題はクリアされた」と言いたいのだろうが、免罪符にもならない。
出来の悪いまやかしである。問題は殆ど解決されない。
率直に言って、この人たちには何も期待してはいけないのだと思う。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!
↓
クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。
1973年佐伯和司、全登板成績
広尾晃、3冊目の本が出ました。


日本高校野球連盟は27日、大阪市内で理事会を開き、選手の健康管理やスムーズな大会運営を目的に、来春の硬式の地区大会でタイブレーク制を導入することを決めた。
同点のまま延長戦に入った場合、何回からタイブレークを始めるかや場面設定、打順については、来年1月22日に全国9地区の代表者らが集まる懇談会で話し合う。
高野連はいまだに「選手の健康管理」を錦の御旗にしているが、タイブレーク制と選手の酷使の問題はほとんど関係がない。
過去5年の甲子園の高校野球の延長戦について調べた。

大会によってばらつきがあることが分かる。全く延長戦がない大会もあれば、2011年夏のように9試合もあった大会もある。
実力が近い学校同士が当たれば延長戦の可能性が高くなる。これは偶然だろう。
しかし、延長戦は平均すれば全試合数の1割に満たない。
タイブレークが10回から適用されたとしても、1大会で4~5試合程度。
実際には12回当たりから適用されると予想されるが、その場合は全体の3%以下。1大会で1試合程度だ。
タイブレークはまず地区大会で適用されるが、延長戦の比率は甲子園と大きく変わらないと思われるから、地区大会でもあくまで例外的なものにとどまるだろう。
タイブレークは野球の国際化のために検討すべきものだ。チーム、個人の記録の処理の問題など課題はあるが、国際化の進展に寄与するのなら導入することもあり得るだろう。
何度も言うが、この仕組みと「選手の健康管理」はほとんど関係がない。
タイブレークを導入することで、延長戦を一人で投げ抜く投手が出なくなると言いたいのだろうが、タイブレーク自体が滅多に起こらないから、高校野球全体の「健康管理」にはほとんど寄与しない。
今の高校野球の健康面の問題は主として投手の「投球数の過多」と「連投」の問題だ。
それによって投手が消耗するだけでなく、肩や肘に修復不可能な故障を負って、その後の野球人生や生活一般に深刻な影響を及ぼす可能性があることが問題だ。
高校野球が本当に「選手の健康」を考えるのなら、多くの国際大会と同様「投球数の制限」と「登板間隔」についてのルールを設けるしかないのだ。
もう一つ、地区大会のレベルから、高野連の責任でメディカルチェックを厳格に行い、異状があれば出場停止を命じることができるようにすべきだろう。
しかしそれをすることで「甲子園での日程調整が難しくなる」「高校によっては投手の数が揃わなくて出場できなくなる」などの弊害があると言われている。
ルールを変えれば、運営方法が変わるのは当たり前だ。また参加者が変化を強いられるのも当然のことだ。それを乗り越えて改革を奨めなければ、その効果は期待できない。
要するに高野連や関係者たちは「今の興行システム」「今の高校野球の成り立ち」を変えたくないのだ。
「選手の健康」を犠牲にしても「今のやりかた」を守りたいのだ。
今の甲子園は「利権」になっているのだ。そしてその「利権」を「伝統」であるかのように言っているのだ。
こんな意識の低さではそもそも「野球の国際化」にはついていけないだろう。
このあたりについては、こちらにも書いた。
「文藝春秋オピニオン 2015年の論点100」に書いています
高野連は「タイブレーク制を導入したことで、選手の健康管理は強化された、問題はクリアされた」と言いたいのだろうが、免罪符にもならない。
出来の悪いまやかしである。問題は殆ど解決されない。
率直に言って、この人たちには何も期待してはいけないのだと思う。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!
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1973年佐伯和司、全登板成績
広尾晃、3冊目の本が出ました。
コメント
コメント一覧
実力に差がある場合が多いので延長戦の割合はさらに
少ないと思います。
今回の侍ジャパンの日米野球にも球数制限はありましたし、リトルリーグの国際大会も導入しています。
日米野球は本来なかったものをWBCのために日本側の要請で作ったものですしリトルリーグワールドシリーズは塁間すら違う競技です(まあ子供用にといった配慮ですが)
甲子園の完投延長再試合なんてみるたびに投げすぎだろと思う身としては無いよりはマシな気もするのですが、要するに延長戦の有無にかかわらず故障者が多発してるわけだからこれで対策しましたなんて言うのはまやかしだという事でしょうか?