清武氏のこうした言論活動に対し、讀賣側はヒステリックな非難を繰り返した。
噴飯ものだったのは
「清武は、社内の高度な秘密情報を勝手に持ち出して公開した。窃盗だ」
と攻撃したことだ。
ジャーナリズムは不正を世間に知らせる仕事である。そのためには「情報源が秘匿したがる情報を入手する」ことも、得た情報の公開も許されている。
讀賣新聞だけではないが、日本の大手新聞社が「記者クラブ」を通じて政府、行政が発信する情報を無批判に「お知らせ」する「広報誌」に堕している中、清武氏が行ったことは内部告発であり、真っ当なジャーナリズムだと思えた。
讀賣新聞は自らのわきの甘さと、企業としてのお粗末ぶりを恥じるべきであり、「情報を盗まれた」などと騒ぐのは、言論のプロとして恥ずかしいことだと思えた。
その後、巨人に関するスキャンダルが噴出した。
阿部慎之助、上原浩治、高橋由伸らの入団時に巨額の裏金が支払われていたことが発覚。巨人側はこの事実を否定せず「コンプライアンス上問題はない」と強弁した。
また原辰徳監督の過去の女性スキャンダルも明らかになった。巨人はこのスキャンダルをもみ消すために金を支払っていた。
讀賣側は、こうした情報を漏らしたのは「清武氏しか考えられない」と非難した。
こういう形でプロ野球の内幕が暴かれることは、これまであまりなかった。保守的で、旧弊で、社会的存在としての自覚に乏しいプロ野球と言う組織の欠点や恥部が明るみにでるのは、大変良いことだと思う。
清武氏は情報の持ち出しを否定した。しかしその後、外国に在住する交際相手に書類等を預けていたことが報道されるなど、彼が情報を盗んだと思われる報道が続いた。
讀賣側の言論封殺もあって、清武氏の発言はトーンダウンした。
そして清武氏が「公憤」ではなく「私怨」で讀賣側を攻撃したような印象が広まっていった。
訴訟では讀賣側は、大弁護団を組織して有利に裁判を勧めた。渡邉氏は法律家ではないが、裁判が大好きで、非常に強い。清武氏は法廷では讀賣側の敵ではなかったようだ。
今後の裁判も、讀賣側に有利に推移するのではないか。
そういう意味では「清武の乱」は、鎮圧されたかのように思える。
しかし、一連の清武氏の告発によって、いくつかの重要なことが明らかになった。
1) 世間で不確かな「噂」として報じられていたプロ野球チームの「裏金」や不正が、本当に行われていたこと。
2) 新聞、テレビなどがそれらを(おそらくは知っていながら)全く報道してこなかったこと。球団発表の情報だけを流す「広報紙」になっていること。
3) 新聞と言うメディアがもはや、時代の要請にこたえるような使命感や倫理観を持ち合わせていないこと。
この事件以後、プロ野球チームや新聞メディアを「疑惑の目」で見る人は増加しただろう。
プロ野球改革の機運が高まったことと「清武の乱」は無関係ではないはずだ。
そして「清武の乱」は、讀賣側、とりわけ渡邉恒雄氏に強烈な打撃になったことは間違いがない。
渡邉氏はめっきり老いた。また巨人の横暴も鳴りを潜めつつある。
今年のストーブリーグの元気のなさは、巨人と言うチームが「普通の球団」になりつつあることを意味しているのかもしれない。
「清武の乱」がなくても、旧弊なプロ野球は変化せざるを得ない状況に追い込まれていったとは思う。
Jリーグ、サッカー界が、次々と清新な改革を打ち出し、若い層を中心に着々とファンを獲得している中、プロ野球はこのままいけば「老人が見るスポーツ」になり、自壊していく恐れがあった。
比較にならない小さな組織だが、四国アイランドリーグPlusのガラス張りの会計と、勇気ある改革を見るにつけ、プロ野球は変わるべきだと思う。
「清武の乱」は、既得権益の牙城たる「巨人」にダメージを与えたことで、相対的な他球団の発言力が高まり、改革を加速させる効果があったと思われる。
清武氏は、プロ野球の古い体質を誰よりも知るジャーナリストとして、今後も発言を続けてほしいと思う。
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コメント
コメント一覧
当時日本シリーズとまんま被りの時期に反旗を翻し、野球界の話題が日本シリーズから清武ナベツネの話題にシフトしたこと
ナベツネと対立するといった2面から野球ファンは何かでかいことをやろうとしてるんじゃないか?といったような期待が膨らんだにもかかわらず会見内容がアレでずっこけたファンはそう少なくないと思います
やり方を間違わなければ世論も味方にできたのでは?といった感じなのでそこは残念です
ジャーナリストなら、世論を味方につけるような多数派工作しないと、「ドンキホーテの突撃」と同じです。
読売やナベツネの悪事を暴いたといっても、これは内部告発でなくて情報漏洩、結局自分で「コンプライアンス違反」というオチでしたとさ、とでも言いたくなる話でした。
いつも客観視して思うのが、反読売、反ナベツネ、果てはアンチ巨人という考えが、球界の改革派かつ良識派であるみたいな顔をするのが鬱陶しい、ということです。
巨人ファンであることと、NPBが変わることができない元凶が讀賣、巨人であることを分けて考えることができない限り、進歩はないでしょう。
野球史を読み返してみてはいかがでしょう。
今後の野球界に10もたらせたであろうものが、1にしかならなかった。
せめて5くらいまでは持って行って欲しかったという印象です。
既に色々指摘されていますが、
日本における守旧派の親玉のような存在に喧嘩を売るわけですから
世論を味方につけるに足るビジョンの打ち上げや自身の立場の確立が
必要だったと思うのですが、そういう戦略的な相談相手はいなかったのでしょうか。
告発時はかなり期待していただけに、現状は残念ですね。
讀賣新聞だけではないが、日本の大手新聞社が「記者クラブ」を通じて政府、行政が発信する情報を無批判に「お知らせ」する「広報誌」に堕している中、清武氏が行ったことは内部告発であり、真っ当なジャーナリズムだと思えた。
このくだり非常に違和感を感じます
彼が資料を持ち出した理由は社会正義に燃えてどうしてもコレを世に問わなければならないと思ったからですか?
もしそうならば、読売社内のコンプライアンスなどというどうでもいい案件ではなく、最初からこのことを告発すべきではないでしょうか
彼の資料持ち出しは、明らかに読売を追い出され、訴訟になった場合に使うための武器であって、つまりは私的な動機ですよね
事実彼は最終的に持ち出しを認めたものの当初は「私物に紛れた」などと苦しい言い訳をしていたし、巨人の悪を暴くために資料を持ち出して朝日に渡したという主張もしていません(広尾さんも以前、「正直清武に戻れ」というエントリで清武氏の不純さを突いていたはずですが)
これは権力を告発するジャーナリストの姿ではないでしょう
彼は追い出されるGMとして行動したのであって新聞記者として行動したわけではないのです
どこが真っ当なジャーナリズムなんでしょうか
まさに清武氏の行動が私怨だったのか、公憤だったのかがこの事件の一つの焦点であり、それがはっきりしていないから、議論が分かれているわけです。
私怨だと決めつけられても納得しかねます。
清武氏の著書を野球以外も全部読みましたが、ジャーナリストとしては立派な人だと思います。
当サイトはこの事件の発生時点からずっと取り上げており、その過程で清武氏の支援グループとも連絡を取っていました(今は無くなってしまいましたが)。
その時の感触では、真っ当な理由があったようにも思えました。
原監督のスキャンダルや、選手の裏金問題については、恐らくリークしたのは清武氏だと思われますが、彼をそれを否定し続けました。
しかしその後、そうした情報が海外にいる愛人の手元に秘匿されていることが明らかになり、必ずしも公憤と断定できないのではないかとも思えるようになりました。
ただ、彼の行動が、きっかけとなって巨人の汚点が明らかになったのは少なくとも「怪我の功名」ではあったと思います。
清武氏は『巨人の球団代表』としての公的な怒りの告発と、己の全てを傾けた仕事を否定された『清武英利という私人』としての怨みの報復の双方を行いたかったのではないでしょうか。
(公とは人によって定義が異なる、案外主観的なものではありますが、清武氏個人としては公の気持ちはあったと思います)
つまり、巨人の球団代表だった清武英利氏という『公私を抱えた一人の人間』の行いであったのだろう、というのが私の見解です。
巨大な相手に立ち向かうには戦略が稚拙だった、というのは皆様が仰るとおりだと思います。
これに関しては、抱えていた怒りが何かのきっかけで急に「切れて」しまったからなのではないでしょうか。
最初から本気で告発するつもりだったならば、もっともっと以前から、もしくは我慢して時間をかけて、周到に準備したと思います。
それをしないで竜党ですが様が書かれたような苦しい言い訳をしなくてはならない手段に走ってしまったのは、それが計算ではなく本人でも制御のきかない「暴発」だったからなのではないでしょうか。
また、この件とその後のスキャンダルに関しては、同じ次元で考えてはいけないでしょう。清武氏が訴えたのはあくまでもコーチ人事に関してであって、裏金や原監督の問題についてではありません。これらをひとまとめにするのは正に牽強付会というべきです。広尾さんの面目躍如たるところかもしれませんが。
「けがの功名」と「真っ当なジャーナリズム」は全然違うんじゃないですか
よく読んでほしいのですが、清武さんが真っ当なジャーナリズムかどうかには、疑念があると書いています。言葉尻ではなく文脈を読んでいただなかないと真意が伝わらない。
清武氏が下っ端の管理職クラスだったのならともかく、よみうり本社の役員という立場でありながらなぜ裁判で争わなければいけなかったのか?
役員なら取締役会で堂々と渡邊氏と対峙すれば良かっただけの話です。
しかし面と向かって立ち向かう気概がなかったので裁判沙汰にして世論の支持を得ようという姑息な手段に訴えた。
このあたりの清武氏の下心は大衆やマスコミにはよくわかっていたようで、清武問題の関心は急激に冷めていきましたよね。
私も判決の記事を読んだときに”まだやっていたのか”とすっかり忘れていました。
どんな球団、どんな組織、あるいは個人にも世間には知られたくない秘め事はあるものです。
巨人というチームの宿命でこのような秘め事はすっぱ抜かれやすいのですが、もちろん他のチームで似たようなことは存在すると思います、公にならないだけで。
だからといって、パンドラの箱を無理にこじ開けようという気にはなりませんね。
知らぬが花という言葉もありますが、清武氏の行為は知りたくもない他人の秘め事を公にしただけで球界には何の利ももたらさなかったというのが私の見方です。
真っ当なジャーナリズムではない機密情報資料の窃盗ならば、読売側の非難にも理があることになりますよ
このエントリに限らず、読者から指摘があると、あなたは全体をよく読んで真意を汲み取れとコメント欄で書いておられますが、そもそも「真意が伝わらないのは読者の読解力のなさ故だ」というのは、物書きとしては言ってはならない言葉です
自分の文章が下手だと自白しているようなものですから
ベストセラー日本の論点の著者に名を連ねるほど出世した広尾さんですから十分お気をつけください
本や雑誌に書くよりも、あなたに理解してもらう文章を書く方が難しいですね。大部分の方とは議論がかみ合うのですが。
もうよろしいんじゃないですか。
違法なことをしたけれど、それで相手の問題が解ったんだから良かった、相手は悪人だから殴り飛ばして構わないみたいな考え、結果オーライな話はいかがなものかと思ったまで。
「相手が悪いんだから構わない」みたいな考えがまかり通れば法も警察もいらないことになります。
道徳論としても通用しません。