長々と続けて、申し訳なく思っている。後から後から考えが浮かんできた次第。これで最後にさせていただく。
3)今後の影響

今回の黒田博樹の選択、決断の真意はわからない。
彼の野球観、人生観が、このような選択をさせたのだと思う。
27日にも書いたが、私は、プロフェッショナルである黒田博樹が、MLBでの「残り時間」と、自分の「身じまいの方法」を勘案して、この選択をしたのだと思う。

広島東洋カープは、以前から黒田にオファーを出していたのだから、今回の黒田の心境、環境の変化とは無関係だったのだろう。「ダメ元」でもあろうし、NPBに復帰するときの「保険」にしたいという意向もあったはずだ。非常識で厚かましいとは思うが、結果オーライである。

黒田のような決断は、誰にでもできるわけではない。多くの選手が、成績が落ちてクビになっても野球をする機会を求めて必死に奔走する中で、余力を残して自らの「引退の花道」を作ることができるのは、本当に限られた選手だけだ。
見事な野球人生であり、素晴らしい選択だったと思う。

しかし、これは、実力と、運と、本人の人生観がマッチしなければ起こりえない、極めてレアなケースだ。
例外的な事例と見なすべきものだと思う。

憂慮するのは、黒田の選択を「金よりもカープ愛を取った男」という分かりやすい物語に集約しようと言う動きである。
「日本男児」「男気」などということばは、黒田の特殊な事例を普遍化する動きだと思う。
そういう形で「黒田を見習え」という風潮が蔓延することを恐れる。

同じケースで黒田のような選択をせず、衰えてチームに迷惑をかける可能性があっても高額の年俸をもらうことを選択する選手がいたとしても、何ら非難される筋合いはない。
黒田に比べて「球団愛」「愛国心」が足りないとか、「金への執着が強すぎる」などと言われる筋合いはない。

日本人は、同調圧の強い社会に生きている。
誰かを讃えることが、即、「彼と同じことをせよ」という圧力につながりかねない。
張本勲は、すでに
「他の人も見習ってほしい」と言っているが、そういうことをいいたい人がいっぱいいるのである。

ブログをやっていると、自分は安全な立ち位置にいて、人には最大限の努力や誠意を強要する人がたくさんいることがよくわかる。匿名性があれば、どんなことでも言う輩がいるのだ。
そういう人が、最近増えているのではないだろうか。

そういう空気の中で、黒田の純粋に「自分のための」決断が、ゆがめられ、拡大解釈されることを恐れる。
MLBに今いる選手、今後目指そうと言う選手に少なからぬ影響を与える事を恐れる。「黒田はこうしたのに」という引用が増えることを恐れる。
黒田博樹本人も、そんなことは望んでいないのではないか。

そのためにも、黒田博樹は、落ち着いたらはっきりと、今回の決断について、自らの口で語ってほしいと思う。

MLB評論家の豊浦彰太郎さんのブログを再度紹介する。
黒田博樹の決断が立派なのは、それが「誰かのため」にしたことではなく、純粋に「自分のため」にしたことだからだと思う。
自らの出処進退を自分で決めることが一番難しく、尊いのだと思う。

本年最後の更新。皆様お世話になりました。

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