高校野球の「酷使」について、昨年もたくさん書いた。そのために「少年野球指導」関係の本も結構読んだ。その中のベストがこれだ。

この手の本は「実用書」だからあまり面白くない。
投球、守備、打撃の技術論が中心で、育成方法や体のケアなどはお添え物のようにちょこっと載っている程度のものが多い。
トレーニング方法をしっかり書いたものも少ない。
メンタルケアに至っては、
「今の時代に合った指導を」
などと書いた本まである。自分たちが育った時代とは違うのだと言いたのだろうが、今の指導法を理解している人が書いたとは思えない。
「言葉で伝えよう」
「健康第一」
という言葉も良く見かけたが、具体性がないお題目のような内容だった。

要するに、昔からやっている少年野球の指導法では、世間から非難を浴びかねないから、気を付けろと言いたいような本が多いのだ。
その中で、この本は一味違った。



著者の馬見塚尚孝さんは筑波大学野球部の部長兼チームドクター。大学まで野球選手だった。
この本は子供時代から壮年期まで「健康的に野球をプレーし続けるにはどうすればよいか」について書かれている。

指導者は、どうしても目先の勝利を追いかけたがる。少年野球であっても、プロ野球など大人の野球の真似をしたがる。
この本では
「おとなとジュニアは違う」
というところから始まっている。
30ページ以上も使って、大人と子供の体、プレーでの動きの違いをしっかりと説明している。

スポーツドクターは「高校野球の選手の多くは、小学校、中学校時代に肘や膝を痛めている」と指摘する。
ボーイズやリトルリーグなどの指導者が、勝利、実績に固執するあまり、子どもたちに過酷な練習を強いたり、大人並みのプレーをさせたりすることも多いのだ。
少年野球の指導者の中には「教育者」というより「人買い」のような人間もいる。有望な子どもを高校に紹介してキックバックをもらう連中も多い。
彼らは、「金の卵」が年に数個取れればよいのであって、その間に「ただの卵」が壊れてもかまわない。

そういう指導者に当たった子供は災難以外の何ものでもないが、この本を読んでいれば、悪い指導者=大人と同じ指導をする は見分けがつくのではないだろうか。

この本で注目すべきは
「目指す場所はどこか」という部分だ。
小中学生の野球選手は、甲子園を目指して頑張るが、頑張りすぎて体を壊す子供も多い
筆者は肘を痛めた子供に「投げるのを我慢しよう」と訴えるとともに、「ピークをどこに持っていくか」を考えようと言っている。
プロを目指す子供は、高校野球で無理をするよりも、大学野球でピークが来るように頑張るべきだ、大学で活躍してプロを目指すことを、中学生の内から考えるべきだ、と唱えている。

日本の野球には高校野球=甲子園と、プロ野球という二つのピークがある。最初のピークで潰されないようにしよう、と言っているのだ。

馬見塚尚孝さんは、中島大輔さんのコラムでも注目すべき意見を述べている。

少年野球界の誤った定説を論破する

馬見塚さんは実に明確に現代の少年野球の指導の弊害を指摘している。
このコラムは当ブログの読者必読だ。

ベースボールマガジン社の本にしては、デザインも良い。
馬見塚さんの考え方が広がれば、少年野球、そして高校野球の指導法も大きく変わるだろう。
その意味でも、この本が広く読まれて欲しいと思う。


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