大坪正則『パ・リーグがプロ野球を変える』



東日本大震災前に出版された本は、何となく時代遅れになった気がしてページを開くのが億劫になるのだが、この本は古びていなかった。

NPBの歴史をリードしてきた巨人を筆頭とするセリーグの元気がなくなり、パリーグが躍進している昨今。その理由を経営的な側面で、明らかにしている。

転機は2004年、近鉄バファローズの消滅騒動に端を発し、ストライキにゆれたあの年だ。騒動の果てに、楽天が参入し、時を同じくしてダイエーからソフトバンクがホークスの経営権を買い取った。ITベンチャーの2社がパリーグに入ったことで、これまでの親会社依存の球団経営に大きな波紋が広がった。さらに千葉ロッテのバレンタイン、日本ハムのヒルマンというMLBのファンサービスを知る監督が、ストに揺れるチームとファンの距離を縮める方法を教えた。結果的にこの年に6球団のフランチャイズが地方に分散したことも大きかった。

まさに「災い転じて福をなす」で、ここからパリーグの体質改善が始まった。この本では、6球団の経営の推移を追いかけている。野球ではなく経営の話だが、なるほどと思わせることも多い。特に、これまでの球団はファンではなく、親会社の意向を気にかけていた、というのは首肯できる。また、日本ハムを除くパの5球団が、ホーム球場の営業権を握ることで、球団と球場の経営の一体化が進み、球団の経営が健全化したことというのもわかりやすい話だ。

とはいえ、パの6球団は単独で黒字になったわけではない。巨人阪神に匹敵する観客動員を誇るソフトバンクでさえも未だに親会社から補てんを受けている。日本ハムのように、親会社が実質的にスポンサーになっている会社もあるが、まだ独り立ちはできていない。

しかし、この7年の間にパリーグの経営陣、スタッフの意識は大きく変わった。IT関連の一括管理をする株式会社パシフィックリーグマーケティング(PLM)の設立が、大きな転機となりそうだ。MLBなど北米のプロスポーツがしているように、全国放送の放映権やグッズ関連のマーチャンダイジングなどをPLMが一括管理するようになれば、球団の経営は安定し、黒字化に大きく踏み出すことができるのだ。後半の改善へ向けた提案は、大坪氏のかねてからの持論、説得力がある。

当たり前のことだが、リーグ、組織全体が潤うためには「戦力の均衡」が重要だ。完全ウェーバー制にして弱小球団から良い選手を取ることがリーグの繁栄につながる。この自明の理を未だに拒絶する球団があること、そして裏金が未だに横行しているであろうこと、さらにTV放映権がリーグや連盟ではなく特定の球団に握られていることが、NPBの発展を阻害している。そして、NPBが発展しないためにMLBへの人材流出が続いている。

こうした問題の多くが、もう一方のリーグ=セリーグに偏在していることが、NPBの発展の重い足かせになるのだろう。

スポーツマネジメントのプロから、こんな明快な「答え」が出ているのだ。

まずパリーグから幸せになるのも、一つの手かもしれない。

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