広告の仕事でアスリートや指導者に話を聞くことがある。
依頼者のある話なので、それを具体的にブログで取り上げたり、スピンアウトで書いたりするのはルール違反だ。具体名は出さないが、昨日まで3日連続でスポーツ有力校の指導者に話を聞いた。
はっきりしているのは、今どきの高校の指導者は競技に関わらず、トレーニングを科学的に行っているということだ。
有力校の多くは、監督の下にコーチがいるのはもちろん、トレーナーがいる場合も多い。スポーツ用品メーカーや医療機器メーカーの担当者も頻繁に訪れて、最新のトレーニング機器や身体のケア製品を提供する。最新の技術、知識ももたらす。
高校野球で大きな実績を残した監督は、
「今と昔では子どもたちも違う。だから指導法も違う。昔のやり方では通用しない」と断言した。
今は体に違和感が生じたら直ちに申し出るように指導しているという。
「ひじが痛いのを1日隠していたら、回復は10日遅くなる。我慢してプレーすればするほど、試合に出られない日が多くなる」
スパルタの指導で知られた名監督から、こんな話を聞くとは思わなかった。

多くの指導者が、昔は子供たちを鉄拳制裁で従わせていたことも認めた。
ある監督は「毎日僕らをボコボコに殴っていた先生が、今、体罰撲滅プロジェクトの委員ですからね、驚きますよ」と言った。
少子化時代、私立高校の経営陣にとって、生徒の確保は最大の課題だ。特にスポーツコースでは、広告塔にもなる有名選手を一人でも多く確保したい。経営陣も指導者も中学校を回って必死にスカウトをする。
そうした有名選手は、良い指導者のいる学校、そして練習環境が良い学校に進みたいと思っている。
学校側も、指導法に定評のある指導者を招聘しようとする。そしてトレーニング施設も充実させようとする。
当然、投資も大きくなるが、少子化時代を生き残るためには不可避の投資なのだ。
最近、高校野球の名門校が大学の傘下に入るケースが増えている。平安が龍谷大平安、北陽が関大北陽、名門校の名前がどんどん変わっている。
これは、「進学」を考えてのことだろうが、同時に大学と言う巨大資本を後ろ盾にすることで、大規模な設備投資をしたいという意向も働いている。もちろん大学の施設を活用することができるメリットもある。
少子化時代を生き残るために、高校スポーツは、確実に変化している。
「精神論」「根性論」は影をひそめ、より科学的なアプローチが主流になっている。
その変化は、競技者の選手寿命を考えれば、好ましい変化だと言えよう。
もちろん、愛媛済美の故上甲監督のように「精神論」をいまだに前面に出す指導者もいるだろうが、実感としてはそういう人たちは少数派になっているのではないか。
しかしながら、野球に関して言えば、「甲子園」という大きな存在が、何十年も変わらないために、選手は常に「故障」「リタイア」の危機にさらされている。
指導者がどれだけ大切に選手を扱おうと、甲子園を目指して勝ち進むためには、投手は「連投」を余儀なくされる。安楽智大のように何百球も投げることを強いられる。
高校野球の指導者たちにとってそれは不可避の大前提ではあろう。
しかし、一方でほとんどすべての指導者が「高校で競技生活を終わってほしくない」とも思っている。そのために無理をしてほしくないと思っている。
「甲子園」が、高校球児の未来をゆがめている、そういう側面があるのは確かだろう。
野球に限定して言うと、もう一つ、進化を妨げている存在がある。
それは少年野球だ。
ボーイズやリトルリーグ、高校よりもさらに若いローティーンの子どもたちの硬式野球のチームだ。
ここにも優秀な指導者はたくさんいる。科学的なトレーニングを導入している指導者も多い。
しかしながら、一方で、高校野球関係者などに良いパフォーマンスを見せようとして、無理をさせる指導者も多いのだ。それを望む親も少なくない。
当然、少年野球の指導者も「子どもたちの未来」を考えて指導をしている。
しかし一方で、良い素材を有名校に送り込むためには、試合で好成績を上げさせなければならない。そのために、まだ発育途上の子どもに連投をさせたり、無理なフォームで投げさせたりする指導者もいるのだ。
また、少年野球は高校に比べても経済規模は圧倒的に小さいし、施設も充実していないから、故障に対するケアも十分とは言えない。
高校野球の指導者は「高校に入ってくる時点で、多くの子どもが肘か肩をやっている」と語る。
これでは、いくら高校野球で科学的なトレーニングをしても意味がない。すでに子どもたちは「爆弾」を抱えているのだ。
こうした問題はローティーンの時代からスポーツエージェントがつくアメリカでもあるようだ。
スポーツビジネスの巨大化は、そうした「子どもの搾取」につながっている。
そんな問題が背景にあって「トミー・ジョン手術」は増大している。
とくに日本の場合、少年時代の体の酷使が長い尾を引いているケースが多いようだ。
この問題を解決するためには、一人の野球選手の長い競技生活を全て包括するような取り組みが必要だ。
いくら高校、大学のケアが行き届いていたとしても、少年野球時代に無理にをして土台の部分を毀損していては、手遅れになる。
野球界はムラ社会で、とかくセクトを組みがちだが、この問題を解決するためには、プロだアマだ、高校だ、大学だ、ではなく、全野球界、そしてMLBも含めたトータルな取り組みが不可欠だ。
そういう目で俯瞰したときに、トミー・ジョンの問題だけでなく、野球の進歩を妨げているさまざまな問題が浮かび上がってくるのではないか。
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!
↓
クラシックSTATS鑑賞もご覧ください。
渡辺清、全本塁打一覧|本塁打大全
広尾晃、3冊目の本が出ました。


はっきりしているのは、今どきの高校の指導者は競技に関わらず、トレーニングを科学的に行っているということだ。
有力校の多くは、監督の下にコーチがいるのはもちろん、トレーナーがいる場合も多い。スポーツ用品メーカーや医療機器メーカーの担当者も頻繁に訪れて、最新のトレーニング機器や身体のケア製品を提供する。最新の技術、知識ももたらす。
高校野球で大きな実績を残した監督は、
「今と昔では子どもたちも違う。だから指導法も違う。昔のやり方では通用しない」と断言した。
今は体に違和感が生じたら直ちに申し出るように指導しているという。
「ひじが痛いのを1日隠していたら、回復は10日遅くなる。我慢してプレーすればするほど、試合に出られない日が多くなる」
スパルタの指導で知られた名監督から、こんな話を聞くとは思わなかった。

多くの指導者が、昔は子供たちを鉄拳制裁で従わせていたことも認めた。
ある監督は「毎日僕らをボコボコに殴っていた先生が、今、体罰撲滅プロジェクトの委員ですからね、驚きますよ」と言った。
少子化時代、私立高校の経営陣にとって、生徒の確保は最大の課題だ。特にスポーツコースでは、広告塔にもなる有名選手を一人でも多く確保したい。経営陣も指導者も中学校を回って必死にスカウトをする。
そうした有名選手は、良い指導者のいる学校、そして練習環境が良い学校に進みたいと思っている。
学校側も、指導法に定評のある指導者を招聘しようとする。そしてトレーニング施設も充実させようとする。
当然、投資も大きくなるが、少子化時代を生き残るためには不可避の投資なのだ。
最近、高校野球の名門校が大学の傘下に入るケースが増えている。平安が龍谷大平安、北陽が関大北陽、名門校の名前がどんどん変わっている。
これは、「進学」を考えてのことだろうが、同時に大学と言う巨大資本を後ろ盾にすることで、大規模な設備投資をしたいという意向も働いている。もちろん大学の施設を活用することができるメリットもある。
少子化時代を生き残るために、高校スポーツは、確実に変化している。
「精神論」「根性論」は影をひそめ、より科学的なアプローチが主流になっている。
その変化は、競技者の選手寿命を考えれば、好ましい変化だと言えよう。
もちろん、愛媛済美の故上甲監督のように「精神論」をいまだに前面に出す指導者もいるだろうが、実感としてはそういう人たちは少数派になっているのではないか。
しかしながら、野球に関して言えば、「甲子園」という大きな存在が、何十年も変わらないために、選手は常に「故障」「リタイア」の危機にさらされている。
指導者がどれだけ大切に選手を扱おうと、甲子園を目指して勝ち進むためには、投手は「連投」を余儀なくされる。安楽智大のように何百球も投げることを強いられる。
高校野球の指導者たちにとってそれは不可避の大前提ではあろう。
しかし、一方でほとんどすべての指導者が「高校で競技生活を終わってほしくない」とも思っている。そのために無理をしてほしくないと思っている。
「甲子園」が、高校球児の未来をゆがめている、そういう側面があるのは確かだろう。
野球に限定して言うと、もう一つ、進化を妨げている存在がある。
それは少年野球だ。
ボーイズやリトルリーグ、高校よりもさらに若いローティーンの子どもたちの硬式野球のチームだ。
ここにも優秀な指導者はたくさんいる。科学的なトレーニングを導入している指導者も多い。
しかしながら、一方で、高校野球関係者などに良いパフォーマンスを見せようとして、無理をさせる指導者も多いのだ。それを望む親も少なくない。
当然、少年野球の指導者も「子どもたちの未来」を考えて指導をしている。
しかし一方で、良い素材を有名校に送り込むためには、試合で好成績を上げさせなければならない。そのために、まだ発育途上の子どもに連投をさせたり、無理なフォームで投げさせたりする指導者もいるのだ。
また、少年野球は高校に比べても経済規模は圧倒的に小さいし、施設も充実していないから、故障に対するケアも十分とは言えない。
高校野球の指導者は「高校に入ってくる時点で、多くの子どもが肘か肩をやっている」と語る。
これでは、いくら高校野球で科学的なトレーニングをしても意味がない。すでに子どもたちは「爆弾」を抱えているのだ。
こうした問題はローティーンの時代からスポーツエージェントがつくアメリカでもあるようだ。
スポーツビジネスの巨大化は、そうした「子どもの搾取」につながっている。
そんな問題が背景にあって「トミー・ジョン手術」は増大している。
とくに日本の場合、少年時代の体の酷使が長い尾を引いているケースが多いようだ。
この問題を解決するためには、一人の野球選手の長い競技生活を全て包括するような取り組みが必要だ。
いくら高校、大学のケアが行き届いていたとしても、少年野球時代に無理にをして土台の部分を毀損していては、手遅れになる。
野球界はムラ社会で、とかくセクトを組みがちだが、この問題を解決するためには、プロだアマだ、高校だ、大学だ、ではなく、全野球界、そしてMLBも含めたトータルな取り組みが不可欠だ。
そういう目で俯瞰したときに、トミー・ジョンの問題だけでなく、野球の進歩を妨げているさまざまな問題が浮かび上がってくるのではないか。
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コメント
コメント一覧
私は、学童野球(軟式)の監督をしています。
高校以上で肘、肩に故障をする選手の95%が、小学生時代の練習が原因だそうです。
学童野球でも、一部は科学的な指導を勉強している指導者も増えてきましたが、まだまだごく一部。
ちなみに、先月対戦した相手チームは、寒い時期の練習試合で120球完投させていました・・・
学童野球(特に軟式)は、いまだに近所の野球好きのおじさんたちが、昔の理論を振りかざしています。
サッカーのような指導者のライセンス制度が望まれますが、縦割り且つ権力闘争に明け暮れている野球界にはハードルが高いです。
ありがとうございます。全体として意識改革は進んでいるようですが、頑迷固陋な部分は残っていくわけですね。
もちろん、9イニングではない野球なんて野球ではないという意見もあるでしょうが、別に一律で9イニングでなければならない理由はありません。ボクシングがプロとアマでラウンド数が違うように、マラソンにフルとハーフがあるように、プレイヤーの体力に合わせて柔軟に調整すればいいと思います。
そうしたルール改正を実現するには、日本の野球界全体を統括する強力な統一組織がなければいけないのでしょうけど。