ニッカンスポーツ
超党派の国会議員でつくるスポーツ議員連盟は14日、スポーツ振興くじ(サッカーくじ、愛称toto)の制度改正に関するプロジェクトチーム(PT)の会合を開き、新たにくじの対象とするスポーツはプロ野球を軸に検討することを決めた。新くじ発売で売り上げを伸ばし、増大が確実視される国立競技場の改築費などに充てる狙いがある。
この手の安易な提案をするのは、どんな顔をした国会議員なのだろうと思う。スポーツ議員連盟の会長は、オリックス・バファローズのベテラン控え外野手の夫人だが。

年間2000万人を超す観客動員があるプロ野球顧客を対象に賭博を開帳し、その寺銭をオリンピック関連の施設の改築、建設に使おうというのだ。
国立競技場の改築費用は当初、3000億円と言われた。縮小はされたが、1700億円と言う巨額になっている。
これに税金を投入することへの批判が高いから、他から資金をもってこようということ。箱モノ行政を続けるために、民間から金を吸い上げようというわけだ。

超党派国会議員と言うのは、なんとなくJCのおぼっちゃんのようなにおいがする。派手で景気のいいことをぶち上げるのは大好きだが、泥臭い実務や社会的な影響はあまり考えずに、浅薄な提案をする。
パチンコ換金やカジノの合法化を推進する「国際観光産業振興議員連盟」、靖国神社参拝を行う「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」など、一人では何もできない小物議員が束になって何かをしようと言う集団。イデオロギーや確たる考えもないから、超党派でつるんでいる、と言う印象だ。

スポーツ議員連盟は去年、NPBのエクスパンションを提案した。二宮清純さんが知恵を貸したのではないかと思うが、これも実現性に乏しい空疎なプランだった。
そして、提案以降動いていないように思える。超党派議連は「言いっぱなし」も多いのだ。

NPBの熊崎コミッショナーは「何も聞いていない」とした。おぼっちゃんたちは、当事者に連絡や相談もせずに、勝手にぶちあげたのだ。

野球界はこの提案を冷静に受け止めるべきだろう。
「スポーツ振興」、「オリンピックを成功させよう」という空疎なスローガンに踊らされることなく、プロ野球、そしてファンのメリットを考えるべきだ。
サッカーのTOTOは、2001年から始まったが、人気はいまひとつで600億円の売り上げ予定が157億円まで落ち込んだ。購入方法や投票システムを見直し、当選金の倍率を挙げるなどの改定によって、売り上げは1000億円を超え、助成事業費は188億円に上っている。
しかしそれによって、Jリーグの観客動員が増加したという事実はない。また、TOTOの売り上げはJリーグやクラブにはほとんど入らない。またその運営に関してJリーグ側は一切発言できない。
要するにサッカーをネタにした賭博が、サッカーとは無関係に行われているに過ぎない。Jリーグはスポーツ振興のダシに使われているだけである。

プロ野球くじが、サッカーと同じようなものなら、NPBは、これに乗るべきではないだろう。NPBは官尊民卑の匂いが強い組織ではあるが、煩瑣なリスクだけを負ってメリットがないのなら、断るべきだろう。

ただし八百長のリスクは大きくはない。コンピューターが無作為に勝敗を選ぶ「非予想系くじ」になるとされるからだ。
また「黒い霧」事件当時と比べて、野球選手の年俸は飛躍的に高くなった。数十万、数百万の金で動く主力選手は少ないと思われる。
我らが夕刊フジ江尻良文編集委員は「プロ野球新クジ案、断固拒否せよ! “黒い霧事件”の苦い経験を忘れるな」とえらい権幕だ。江尻さんはくじが導入されたら選手がすぐに八百長すると思っているようだが、今の選手はそれほど馬鹿ではないと思う。“巨人・渡邊最高顧問は野球くじ断固拒否の切り札になる”と尻尾を振って見せたが、問題はそこではないだろう。

NPBは、野球くじがメリットがあるのならやるべきだ。
くじの売り上げから、NPB側に優先的に補助金が交付されるのなら、やっても良いと思う。
NPBは今、オールスターと日本シリーズの興行収益以外に独自の財源をほとんど持っていない。12球団の顔色をうかがいながら運営している。
仮に、野球くじの売り上げの1割がNPBに入り、NPBの独自財源として野球振興に使われるのなら、大いに有益だ。
選手の年金制度や、野球の普及、そしてNPB独自の放送メディアの設立など。さらに、経営的に苦しい球団への援助などもできるのなら、12球団に対するNPB機構のステイタスは飛躍的に上がるはずだ。12球団はほとんど儲かっていないのだ。NPBを通じて余得が廻るようにしたいところだ。

もちろん、侍ジャパンにも力を入れたい。「がんばれニッポン」もいいが野球ファンとしてはその前に「がんばれ侍ジャパン」だろう。

例えば「オールスターくじ」を「特別くじ」として発行すれば、「芸能人野球大会」みたいになっているオールスターも真剣みを帯びてくるだろう。日本シリーズも同様だ。

超党派議連は「口だけ議連」だから、実現の可能性は高いとは思えないが、NPBは野球くじをビジネスチャンスにすべきだ。


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