さし当たってはメッセンジャー、マートンの話である。
昨年の最多勝ランディ・メッセンジャー、首位打者マット・マートンが不振だ。
メッセンジャーは、8試合に登板して2勝5敗ERA5.88、規定投球回数以上投げた投手の中で最下位(20位)、マートンは0本塁打10打点.241、規定打席以上25人中24位。
確かに調子が悪い。その原因は別稿で考えるが、二人に対する風当たりは日増しに強くなっている。

メッセンジャーは4/22のDeNA戦で6回7失点。初回から苛立った態度を見せた。また3回の打席では見逃し三振。4回は犠打のサインを見逃してバスターを2度仕掛けた挙句、見逃し三振。
これに対し、メディアは“職場放棄”と報じ、コーチ陣の「表向きに懲罰がないというのは示しがつかないのではないか」というコメントを紹介した。
そして5/11、一軍選手登録を抹消。「成績だけでなく、そのわがままぶりに頭を抱えてきた中西投手コーチら首脳陣の不満もあった」と報じた。
他球団のスコアラーの「今年のメッセンジャーは力を抜きながら投げている。(中略)イニング、試合数を投げたいから抜いているんじゃないの。出来高を稼ぐためか分からないけど(笑い)」と言うコメントも報じた。

マートンは、「判定を不服として審判に詰め寄ったり、5/3の巨人戦後には報道陣に暴言を吐くこともあった」「以前からコーチと大喧嘩したり、「舌禍事件」で騒がせてきた助っ人の増長は今季、いよいよ歯止めがきかなくなっている」と報じられた。
「旧悪」まで蒸し返して「態度の悪さ」をあげつらっている。

日刊ゲンダイは、これらをまとめて
ついに単独最下位の阪神 助っ人の増長招いた球団の“遠慮”
と断じている。

阪神の成績不振の大きな原因が、外国人選手の不振にあることは間違いない。
逆に言えば、阪神は「外国人選手で持っている」。
昨年の阪神のポストシーズン進出はメッセンジャー、マートンだけでなく、呉、ゴメスも含めた4人の外国人のおかげである。しかし「日本人は何をやっているのだ」という論調にはならない。

外国人は活躍しているときは「当たり前」、不振に陥ると「怠慢」「増長」「反省が足りない」と非難される。これ、宿命ではあろうが、日本社会のつまらなさを見るようで気持ちが悪い。

Murton-20150514


彼らがそういう風に言われるのは第一に「赤の他人」だからだろう。彼らは日本人じゃない。所詮はいつかは帰っていく連中だ。よそ者なのだ。だから、手厳しく扱うべきだ。「なめられてはいけない」などと言う意識も働く。

もう一つは、態度の問題だ。多くの外国人選手は不振に陥るといらだちを露わにする。周囲に当たり散らしたり、指導者の言うことを聞かなかったりする。
日本人ならば、「反省している」「僕のせいです」「申し訳ありません」と平身低頭して恭順の意を示すところで、彼らは粗暴な態度を示すのだ。多くの日本人はこれが気に入らない。

これは日米文化の差の最たるものだ。
何度も紹介しているが、2012年、ダルビッシュ有は不甲斐ない投球をしたあと、ワシントン監督に謝りに行って「いいか、これからは二度と謝ったりするな」と諭されている。
例え不甲斐ない成績であっても、その選手は全力でプレーしたのなら謝罪は必要ない。努力と結果が結びつかないことはよくあることだ。次に頑張ればよいことだ。
それにMLBでは「謝罪したから処遇が変わる」ことはあり得ない。不振が続けば何百回「ごめんなさい」を繰り返しても他の選手にポジションを奪われる。それが嫌なら好成績を残すしかない。プロとはそういうものなのだ。




今回の出来事は、まさに2012年のダルの事件の裏返しだ。

メッセンジャーの登録抹消や、マートンのスタメン落ちに際して、メディアは和田監督が「大変な決心をした」かのように報じている。また、これを「懲罰」のように報じている
しかし成績が悪くなれば、他の選手にとってかわられるのは当たり前のことだ。
メッセンジャーやマートンは残念には思っただろうが、プロである限り、その処遇を受け入れたはずだ。「懲罰」とも思わなかっただろう。

我々は、メッセンジャーやマートンが、これまで偉大な成績を残したことに思いを致すべきだろう。彼らがいなければ、阪神はもっと惨めな成績になったはずだ。彼らにとって代わることができる日本人選手はいなかった。
しかし彼らにだって不調、不振な時はある。その途端に手のひらを反して極悪人のように言うのは不当だ。

そして彼らのメンタリティが日本人とは違うことを理解すべきだろう。窮地に陥ったときにとる態度は日米では大きく異なるのだ。
「日本人と同じようにせよ」という同調圧は狭量に過ぎる。

日本人は「責任者さがし」が偏執的に好きな民族だ。特に「赤の他人」はあとくされがないから「責任者」にされやすい。しかし、それで事態は好転しない。

メッセンジャー、マートンを叩いて見せる、という「お遊び」はあまり上品ではないし、建設的でもないように思う。もう「昭和の御世」ではないのだし。

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