前回、アメリカのマイナー・リーグは独立リーグと本質的に同じであることを紹介した。
最初に、独立リーグありき|独立リーグ論01
違いはマイナー・リーグがMLB傘下でリーグ戦を戦っていること、選手の年俸をMLB球団側が負担(全部、一部)していること。
それだけチームの負担は軽くなるが、独自に球場を確保し、お客を集めて興行をし、その収益で生計を立てている点は、独立リーグと同じだ。
何度か紹介したが、ロジャー・カーンの「ひと夏の冒険(Good Enough to Dream)」は、スポーツライターの筆者がマイナー・リーグを運営することになり、選手たちと奮闘する話。野球の本中の傑作だ。地方のみすぼらしい球場に何とかお客を集め、収益を得ようと奮闘努力する様は、アメリカのマイナー・リーグの本質を表している。
マイナー・リーグも、独立リーグも、自らの才覚で球場にお客を集め、物品を売る。そしてスポンサーを集める。ラジオやテレビで宣伝をする。誰に依存することもなく、今でいうマーケティングをリーグ運営者自らの手で行い、収益を得ることが基本になっていたのだ。
アメリカの野球は徹底的に「独立採算」を貫いてきた。後に詳述するが、アメリカの野球は選手だけでなくマネジメントやマーケティングのプロも育ててきた。これが、日本とは決定的に違う点である。
なおマイナー・リーグはアイスホッケー、バスケットボールなどの北米スポーツには存在するが、独立リーグは野球だけである。野球と言うゲームがいかにローカルに深く根付いてきたかを物語っていると思う。
さて、MLBが巨大な存在になっても、長期にわたって地方ではマイナー・チームが大きな存在感を保っていた。
特にアメリカの西海岸では、パシフィックコースト・リーグの球団が観客を集めていた。
このリーグは19世紀末に独立リーグとして創設され、その後MLB傘下のマイナー・リーグになった。第二次世界大戦後はマイナーでは最もレベルの高いAAAとなったが、西海岸にMLBが進出するまでは、実質的にこの地域のトップリーグだった。
当時のチームには、ロサンゼルス・エンゼルス、サンディエゴ・パドレスと言う、のちにMLB球団になるチームもあった。
日本の戦後野球史に大きな足跡を残したサンフランシスコ・シールズも、このリーグの球団だ。1949年には「マイナー最強チーム」という触れ込みで来日した。
このリーグからは有名なディマジオ兄弟、ポール・ウェイなーなどの名選手が出ているが、一方でこのリーグに長くとどまり、ローカルスターとして活躍した選手もたくさんいた。
このリーグは独立採算のリーグだから、収益を得るために試合をしまくった。1925年にこのリーグのソルトレイクシティ・ビーズに属するトニー・ラゼリがシーズン60本塁打を記録しているが、ビーズはこの年、少なくとも197試合を戦っている。
MLB傘下になっても独自にリーグ戦を運営し、お客を集め、ローカルスターを生み出してきたのだ。
アメリカでは1940年代にはテレビ放送が始まり、MLBの試合の情報は全米にオンタイムで伝わるようになったが、それでも生で見る野球の魅力は、色褪せなかった。マイナー・リーグは長期にわたってMLBを補完する役割を果たしてきたのだ。
1958年、ブルックリン・ドジャース、ニューヨーク・ジャイアンツという2つのMLBチームがロサンゼルス、サンフランシスコと言う西海岸の大都市に移転。2球団が成功してからは(ジャイアンツは苦労したが)、西海岸にMLBのチームが次々と誕生、勢力図は一変した。
前述のようにMLBに昇格する球団もあったが、マイナー・チームの地位に甘んじたチームもある。また消滅したチームもある。サンフランシスコ・シールズは今、サンフランシスコ・ジャイアンツ傘下のフレズノ・グリズリーズになっている。
しかし西海岸の野球は、半世紀以上に渡って実質的な独立・リーグが担ってきたのである。
かつて、MLB傘下のマイナー・リーグには、親球団を持たない独立系のチームもあった。しかし近年は、マイナー・リーグのチームはすべてMLB球団とアフィリエイト契約を結んでいる。
昔に比べれば自由度は少ないようだが、それでもマイナー球団は独立採算制で運営されている。
そしてMLB機構の外側に独立リーグがある。以前に比べれば、その存在感は小さくなっているようだが、彼らも独自に集客をし、独立採算を維持している。依然、アメリカのプロ球界の一員として存続しているのだ。
アメリカの独立リーグ(マイナー・リーグを含む)の特色を上げるとすれば、以下の3つになろう。
1.独立採算
これまで述べてきたとおり。
2.MLBを補完する存在
独立リーグはMLBと競合したり、対立したりする存在ではない。1910年代フェデラル・リーグがア・ナに続く「第3のMLB」として設立された。しかし既存のMLBと対立して3年でつぶれた。
MLBと競合しては独立リーグは成立しえないのだ。MLB(国内トップリーグ)の敵ではなく、常に友好関係を保ち、補完機能を果たすのが基本姿勢となっている。
3.徹底した地域密着
独立リーグ(マイナー・リーグも含む)は、MLBとは異なるマーケティングで、集客をする。巨大メディアを利用して大きな集客をするのではなく、地元に密着し、地道に主客をする。その活動が、地域におけるチームの存在意義につながっていく。
アメリカの独立リーグは歴史もスケールも日本とは全く異なるが、目標ではあろうと思う。

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1980年梶間健一、全登板成績【虎退治しつつ、チーム最多の15勝】


それだけチームの負担は軽くなるが、独自に球場を確保し、お客を集めて興行をし、その収益で生計を立てている点は、独立リーグと同じだ。
何度か紹介したが、ロジャー・カーンの「ひと夏の冒険(Good Enough to Dream)」は、スポーツライターの筆者がマイナー・リーグを運営することになり、選手たちと奮闘する話。野球の本中の傑作だ。地方のみすぼらしい球場に何とかお客を集め、収益を得ようと奮闘努力する様は、アメリカのマイナー・リーグの本質を表している。
マイナー・リーグも、独立リーグも、自らの才覚で球場にお客を集め、物品を売る。そしてスポンサーを集める。ラジオやテレビで宣伝をする。誰に依存することもなく、今でいうマーケティングをリーグ運営者自らの手で行い、収益を得ることが基本になっていたのだ。
アメリカの野球は徹底的に「独立採算」を貫いてきた。後に詳述するが、アメリカの野球は選手だけでなくマネジメントやマーケティングのプロも育ててきた。これが、日本とは決定的に違う点である。
なおマイナー・リーグはアイスホッケー、バスケットボールなどの北米スポーツには存在するが、独立リーグは野球だけである。野球と言うゲームがいかにローカルに深く根付いてきたかを物語っていると思う。
さて、MLBが巨大な存在になっても、長期にわたって地方ではマイナー・チームが大きな存在感を保っていた。
特にアメリカの西海岸では、パシフィックコースト・リーグの球団が観客を集めていた。
このリーグは19世紀末に独立リーグとして創設され、その後MLB傘下のマイナー・リーグになった。第二次世界大戦後はマイナーでは最もレベルの高いAAAとなったが、西海岸にMLBが進出するまでは、実質的にこの地域のトップリーグだった。
当時のチームには、ロサンゼルス・エンゼルス、サンディエゴ・パドレスと言う、のちにMLB球団になるチームもあった。
日本の戦後野球史に大きな足跡を残したサンフランシスコ・シールズも、このリーグの球団だ。1949年には「マイナー最強チーム」という触れ込みで来日した。
このリーグからは有名なディマジオ兄弟、ポール・ウェイなーなどの名選手が出ているが、一方でこのリーグに長くとどまり、ローカルスターとして活躍した選手もたくさんいた。
このリーグは独立採算のリーグだから、収益を得るために試合をしまくった。1925年にこのリーグのソルトレイクシティ・ビーズに属するトニー・ラゼリがシーズン60本塁打を記録しているが、ビーズはこの年、少なくとも197試合を戦っている。
MLB傘下になっても独自にリーグ戦を運営し、お客を集め、ローカルスターを生み出してきたのだ。
アメリカでは1940年代にはテレビ放送が始まり、MLBの試合の情報は全米にオンタイムで伝わるようになったが、それでも生で見る野球の魅力は、色褪せなかった。マイナー・リーグは長期にわたってMLBを補完する役割を果たしてきたのだ。
1958年、ブルックリン・ドジャース、ニューヨーク・ジャイアンツという2つのMLBチームがロサンゼルス、サンフランシスコと言う西海岸の大都市に移転。2球団が成功してからは(ジャイアンツは苦労したが)、西海岸にMLBのチームが次々と誕生、勢力図は一変した。
前述のようにMLBに昇格する球団もあったが、マイナー・チームの地位に甘んじたチームもある。また消滅したチームもある。サンフランシスコ・シールズは今、サンフランシスコ・ジャイアンツ傘下のフレズノ・グリズリーズになっている。
しかし西海岸の野球は、半世紀以上に渡って実質的な独立・リーグが担ってきたのである。
かつて、MLB傘下のマイナー・リーグには、親球団を持たない独立系のチームもあった。しかし近年は、マイナー・リーグのチームはすべてMLB球団とアフィリエイト契約を結んでいる。
昔に比べれば自由度は少ないようだが、それでもマイナー球団は独立採算制で運営されている。
そしてMLB機構の外側に独立リーグがある。以前に比べれば、その存在感は小さくなっているようだが、彼らも独自に集客をし、独立採算を維持している。依然、アメリカのプロ球界の一員として存続しているのだ。
アメリカの独立リーグ(マイナー・リーグを含む)の特色を上げるとすれば、以下の3つになろう。
1.独立採算
これまで述べてきたとおり。
2.MLBを補完する存在
独立リーグはMLBと競合したり、対立したりする存在ではない。1910年代フェデラル・リーグがア・ナに続く「第3のMLB」として設立された。しかし既存のMLBと対立して3年でつぶれた。
MLBと競合しては独立リーグは成立しえないのだ。MLB(国内トップリーグ)の敵ではなく、常に友好関係を保ち、補完機能を果たすのが基本姿勢となっている。
3.徹底した地域密着
独立リーグ(マイナー・リーグも含む)は、MLBとは異なるマーケティングで、集客をする。巨大メディアを利用して大きな集客をするのではなく、地元に密着し、地道に主客をする。その活動が、地域におけるチームの存在意義につながっていく。
アメリカの独立リーグは歴史もスケールも日本とは全く異なるが、目標ではあろうと思う。

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コメント
コメント一覧
>なおマイナー・リーグはアイスホッケー、バスケットボールなどの北米スポーツには存在するが、独立リーグは野球だけである。
少し調べてみたのですが、アイスホッケーにもバスケにも独立リーグに相当するリーグはあるようです。ただ、どうやら完全なプロとは言えないようですから、その意味では「独立リーグは存在しない」と言えるのかもしれません。
バスケに関しては、NBAが本格的なマイナーリーグを組織したのはわずか10年ほど前のことでして、これがきっかけで、多くの独立リーグが淘汰されたり、あるいはNBA傘下に入ったりしたようですね。
セミプロは入れないで、ということです。