ポストシーズンの3試合、阪神はよくやったと思う。2戦目では外国人選手が初回に2発打ってタイに戻したのだから。しかしベンチの雰囲気は微妙だったはずだ。
たとえるなら「閉店セールの大混雑を裁く店長とスタッフ」というところか、シーズンが終われば退任が決まっている監督、コーチ陣が「日本一」を目差していたのである。

阪神の首脳陣は、表面上は応援しつつも「勝ってもろたら困る」と思っていたはずだ。
すでに和田監督には引導を渡し、次期監督の人選に入っている。しかも金額まで漏らして、札束で引っ張ろうとしている。
和田豊監督が間違って「日本一」にでもなろうものなら、ファンは「和田監督留任運動」をやり出すはずだ。そうなれば、こんなタイミングで解任を決めた経営陣は責任を問われる。窮地に立たされる。監督候補に挙がっている人間も気分を害するだろう。来季の監督、コーチ人事は白紙に戻る可能性さえあった。「負けてくれて、ほっとしている」が偽らざるところではないか。

ファンも微妙な心持で応援をしていたはずだ。チームはまだ可能性があるのに、球団の経営陣が「投げている」のだから。
ベンチと観客席にはささやかながら連帯感が生まれていたかもしれない。

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阪神が招聘しているのは金本知憲である。広島カープ育ちだが、キャリアのピークを阪神で迎えた主力打者。阪神を優勝に導いた立役者であり、知名度も抜群だ。
阪神の経営陣は「有名人を監督にしたら、客がバーッと来よるやろ」という発想で金本にオファーを出している。金本が躊躇するふりをすると「5億5年」の大型契約を持ち出したとの報道まで飛び出した。
阪神の経営陣は「監督なんて、誰がやっても同じや」とも思っている。どうせ誰がやっても同じなら、客を呼べそうな人間をトップに据えたいと思っている。昭和の感覚である。

金本は、リーマンショックで10億円以上の損失を出したと言われる。また裏社会の「舎弟」であるとのうわさも絶えない。多くのメディア関係者は、金本の取り巻きの異様さに驚いた経験があるはずだ。巨人が野球賭博疑惑で揺れる中、トップに据えるにふさわしいとは思えない。
新聞辞令ではあるが、清原和博をコーチに据えるなどと言う話さえ出ている。

阪神経営陣は、マット・マートンにもシーズン中に契約しない旨を伝えたようだ。
確かに今年のマートンは、さえなかった。守備もいまいちだったし、打率も3割を大きく割り込んだ。緩慢な守備も目立った。これで4.5億は高すぎるとは思う。
しかし、マートンはそれでも打撃10傑の9位にいる。セの外国人では3番目だ。過去6年で1026安打を打っている。打率も.310をマークしている。
マートンにしてみれば「どれだけ実績を積んでも、1年だめならクビなのか」というところだろう。外国人選手に対するリスペクトのなさに腐っているのだと思う。金本知憲の選手晩年も知っているだけに、複雑な気持ちだろう。
マスコミも「なめている」「さぼっている」と書き立てた。非常にセンシティブな選手だけに、やる気を失ってもいたと思う。
しかし34歳と言う年齢は、まだ働ける。致命的な故障もない。
これだけの実績である。他球団がほっておかないだろう。守備がだめだからパ・リーグと言う話もあるが、私は守備も含め復活する可能性はあると思う。セのチームに行くのではないか。そして大活躍するのではないか。
ツイッターが彼の人柄をしのばせる。
阪神は、トーマス・オマリーで犯した愚を再演することになるのではないか。マートンの代わりが務まる選手は、そんなに簡単に見つかるとは思えない。

和田豊監督は、地道にチームの戦力を整備した。若手の起用には慎重で、抜擢はあまりしなかったが、上本や大和、江越、梅野などが目を出しつつあった。藤浪晋太郎を順調に成長させたのも、和田監督と中西清コーチの功績ではあろう。また福留などベテランの再起も和田監督の手柄だと思う。

しかし阪神経営者はそういうちまちました手腕をあまり評価しないのだ。彼らの脳裏にあるのは「1985年」である。バース、掛布、岡田が打ちまくってとにかく圧勝する。そういう派手な采配を期待しているのだろう。

多くの阪神ファンは、こうした経営陣よりも野球を知っている。甲子園でどんな野球をすべきかをもっと具体的に描いているはずだ。経営陣より野球への認識は上ではないか。

阪神タイガースは、藤村冨美男と金田正泰、吉田義男と村山実など、何度もお家騒動を繰り広げてきた。その根底には、球団を真剣にマネジメントしようとしない親会社の存在があると思う。
底の浅い「人気取り」しか考えず、「客寄せパンダ」ばかり呼びたがるその体質。そして「社内秘」を保持できない軽薄さが、事態を混乱させてきた。
いまだにその伝統は、脈々と続いているようだ。


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