清原逮捕の報を受けて、江夏豊の名前がクローズアップされてきた。
江夏豊は清原和博に匹敵する、あるいはそれを上回る実績のある大投手だ。
キャリアSTATS

Enatsu


通算206勝158敗193セーブ、最多勝2回、最優秀防御率1回、新人から6年連続での最多奪三振(当時はタイトルではないが)、セーブ制度が制定されてから最多セーブ6回、沢村賞1回、MVP2回、ベストナイン1回、オールスター出場16回。
先発投手としてずば抜けているだけでなく、クローザーとしても草分け的存在だった。
また、シーズン奪三振記録400、オールスターゲームでの9連続奪三振など、奪三振王としても君臨した。

その江夏豊が、いまだに野球殿堂入りしていない。
200勝投手で、殿堂入りしていない投手には、他に平松政次がいるが、成績では江夏の方がかなり上。
そのうえ、平松はまもなくエキスパート表彰で、選出されようとしている。

しかし江夏はエキスパート表彰の候補にさえなっていない。

その理由は明らかにされていない。
江夏は1970年の「黒い霧事件」では、野球賭博関係者との交際が明るみに出て戒告処分を受けている。この事件に関与した選手は1人も殿堂入りしていない。この中には2452安打を打った土井正博も含まれているから、これが理由になっている可能性がある。

しかし、より大きな理由は引退後の覚せい剤所持での逮捕ではないかと思われる。
江夏は1993年3月、覚せい剤所持の現行犯で逮捕された。所持していた覚せい剤は、清原が0.1gだったのに対し、江夏は50gとけた外れに多かった。末端価格は乱高下するが1回の使用量0.02g2000円としても江夏の場合500万円相当になる。このために、執行猶予が付かず懲役2年の実刑に処せられた。

95年4月に出所後の江夏の生活は大きく改善されたといわれるが、この犯罪歴は深刻だ。

私はたまたま居合わせた飲み会で何人かの「江夏番」記者、編集者の愚痴を聞いたことがある。江夏はちょっと信じられないほど横暴で、暴君のようだという。気に入らなければインタビューもドタキャンするし、暴言も吐く。無理難題も言う。
しかし、今の江夏の周りには多くの人がかかわっている。孤独ではなく、常に仲間がいる状態のようだ。おそらく、覚せい剤とは無縁の生活を送っていると思われる。江夏は今年68歳、そういう年でもないだろう。

江夏豊が野球殿堂入りできないのには、野球賭博への関与と、覚せい剤という明らかな理由がある。二つともに深刻で、重大な過失、犯罪だ。

しかし、私は江夏豊は殿堂入りすべきだと考えている。それだけの実績を残した上に、贖罪したからだ。

「黒い霧」事件については、江夏は、直接野球賭博や八百長に関与したわけではなく、それに関与した暴力団員と飲食を共にしただけだ。それでも3か月の出場停止処分を受けている。私は、再発防止のために、野球賭博に関与した人物は根こそぎ処罰すべきだと思っている。しかし全員を死刑=永久追放にすべきだとは思っていない。
野球賭博の当事者や、八百長を仕組んだり、自ら行ったりした人間は、永久追放すべきだと思うが、不用意にかかわりを持った程度の人間は、一定のペナルティの後に赦免すべきだ。事実、江夏も、永久追放以外の他の選手も球界復帰している。
球界復帰がかなったのであれば、以後は、他の選手と何ら変わることなく業績を評価し、殿堂入りさせてしかるべきだと思う。

また覚せい剤の問題は、反社会的であり、深刻だが、それが初犯であれば刑に服し、一定の期間を経れば赦免すべきだ。
覚せい剤など薬物中毒の問題は、重犯の問題がより深刻だ。初犯の時点で「人間失格」の烙印を押してしまえば彼らは深みにはまってしまう恐れがあるのだ。

江夏の功績、そして贖罪の過程を考えれば、もう一度殿堂入りを考慮すべきだ。

と思っている最中に、ぐつの悪いことに清原の事件が起こってしまった。話がしづらくて仕方がないが、江夏は存命中に野球殿堂入りさせるべきだと考える。

そのことが、清原和博の将来にも大きな影響を与えると思う。

清原和博の「その後の物語」を「転落の詩集」にするのか、それとも「復活の歌」にするのか。
そのことに野球殿堂がかかわるのは良いことではないかと思う。見捨ててはいけないと思う。



清原和博、全試合

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