2日の夜8時過ぎ、東京、港区のマンスリー・マンション(ウィークリーではなかった)の最上階にある清原の自宅に捜査員が踏み込んだ時、清原はリビングにいた。左手には注射器、ストローが入ったビニール袋を持っていた。
テーブルには別のビニール袋があり、そこには粉末の覚せい剤が入っていた。0.1グラムと微量だったが、これが動かぬ証拠となった。
他にキッチンから注射器2本も見つかった。またリビングの床にはガラス製のパイプが転がっていた。パイプは少し焦げていて、使用したことをうかがわせた。

捜査員はその場で粉末を鑑定し、覚せい剤であることを確認。清原はその所持を認めた。また覚せい剤を注射やパイプによる吸引で使用したこともほのめかせた。

清原は警視庁で取り調べを受けた後、深夜に病院に入った。尿検査、血液検査をしたものと思われる。
その後、警視庁に収監された。

警視庁は、清原和博が覚せい剤を使用していることを2014年の秋以降の段階で把握していた。
この時期に多くのメディアが警視庁の動きを把握していた。逮捕は秒読みと言った関係者もいた。
しかし清原は有名人であり、彼の逮捕は社会的にも大きな影響を与える。万が一にも誤認逮捕はできないと慎重に捜査を進めていた。
今回の逮捕に至ったのは、前日に清原が出した家庭ごみの中から、微量の覚せい剤が検出されたからだという。

不可解なのは、そこまで包囲網が狭められている中で、清原がテレビに出続け、タレント活動を続けたことである。周囲の人々はこれに気が付かなかったのだろうか。
おそらく、所属事務所も含め、清原のプライベートにはだれもかかわっていなかったのだろう。彼がテレビに出ていないときに何をしているのか、誰も把握していなかった。
清原のブログを読んでもわかるのは、彼の日常が非常に孤独だったということだ。周囲には、野球人はおろか、芸能人の影もない。昔の仲間はみんな去ってしまったのだろう。
パチンコ会社のオーナーがパトロンだったと言われるが、その人物も清原の私生活には深く関与していなかったのではないか。

孤独な清原は1人になると売人に連絡を取って、覚せい剤を購入していたのだと思われる。
4つの携帯電話が押収されたが、ここから彼の購入ルートが解明されるはずだ。そこに他の野球人がかかわっている可能性はあまり高くないのではないか。

こうした姿から見えてくるのは、「野球以外には何も学んでこなかった」清原の半生だ。
野球さえできればいい、数字さえ残せばいい、といういびつな考え方で純粋培養された清原は、野球をしなくなった途端、生活の規範も、人生の目標も失ったのだろう。
何度も言っているが、こうした人間を生んだ日本のアマチュア野球は「教育」とは言えない。

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しかし、誰もがそうなるわけではない。

KKコンビと言われたPL学園の同僚、桑田真澄は、巨人に入団後、いくつかのスキャンダルを起こしている。中には暴力団の関与を疑わせるものもあり、ある時期までは、清原以上に“危うい”存在だった。
しかし、おそらくはトミー・ジョン手術で渡米したあたりが契機となって、桑田は急速に変わっていく。
野球に対して真摯になり、求道者のような姿を見せるようになる。現役最晩年にはピッツバーグ・パイレーツで投げた。おそらく、投手として実績を上げることよりも、MLBの野球を学ぶことが目的だったのだろう。

桑田は強い学歴コンプレックスがあると思われる。
高校卒業後、早稲田大学に入学予定だったことが、その底にあると思われる。土壇場でこれをキャンセルしたことで、PL学園と早稲田のルートは断たれたと言われるが、そういう負い目もあって引退後早大大学院に入学し、修士になった。その後は東京大学の大学院でも学んでいる。
桑田真澄は、中学、高校と野球しか学ばなかったために空いた大きな欠損を、引退後埋めようとしたのだともいえよう。
学歴にこだわるのはスノッブにも思えるが、彼はある時期から世間の広い部分が見えるようになり、自分にかけているものが具体的にわかるようになったのだろう。賢いとはこういうことだ。

アマチュア野球界が「清原の悲劇」から学ぶべきは、「野球ができるだけ」の子供を作ってはならないということだ。
今や、「野球だけで世渡りができる」時代ではない。野球馬鹿はセカンドキャリアで必ず苦しむことになる。
大阪桐蔭などの強豪校は、昔のPL学園とは違う指導法をしているようだが「野球ができるだけ」の子供を作っている点は、何ら変わりがない。
平日は7時間、休日は寝る時間以外すべて野球に費やす日々を送っている。これでは、野球馬鹿しか生まれない。
桑田のように自ら学び、変革できる人間ならばいいが、そうでない人もいる。
「清原の悲劇」は、こうした指導に内包されている。

アマチュア野球は「シーズンスポーツ」にするべきだろう。
野球はある時期までしかできない。その時期以外は、野球以外のスポーツをしなければならないようにすべきだと思う。
そして「野球以外にも違う価値観がある」ことを学ばせることが必要だろう。
そういう教育を始める有力校が出てきてほしい。



清原和博、全試合

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