率直に書くが、今、清原関連以外のことを書いても全くヒットしない。他のサイトも同様らしい。1週間がたつが、その影響は甚大だ。野球の将来にも大きなダメージを与えたのではないか。


拙著、「巨人軍の巨人 馬場正平」の取材でも何度か耳にしたが、1950年代のプロスポーツ界は裏社会勢力と強く結びついていた。




アメリカで活躍していたジャイアント馬場が、力道山死去の報に接してアメリカに残るか、帰国するかで迷っていた時に、彼を帰国させたのは山口組組長田岡一雄の一言だったことはよく知られている。
田岡は美空ひばりの後ろ盾で、小林旭との結婚の仲人だった。また吉本興業など芸人の後ろ盾でもあった。

当時のプロ野球界では、キャンプ入り前日にしかるべき地位の球団フロントが土地の大親分の事務所に一升瓶と金一封をもって挨拶に行くのが仕事になっていた。美人局などの女性トラブルや、ちんぴらがみかじめ料を要求するなどのトラブルから選手や球団を守るためだ。
そのかわりに酒席に招かれることもあったという。
当時の映画界が、撮影前に土地の暴力団事務所に挨拶をしたのとまったく同様だ。

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スポーツ、芸能界だけでなく、一般社会ともかかわりがあった。小さな町でも商店街にはずれには暴力団の事務所があった。店主が相応のみかじめ料を支払うのも当然だった。

祭ともなれば、ガマンを体中に施した連中が、勇んで神輿をかついだものだ。また神農などがどこからともなく表れ、屋台を出したものだ。
それが昭和の風景だった。

スーパーが進出する際にも、土地の接収にこうした事務所が動くことがあった。スーパーは表立ってこうした勢力に利益供与することは憚られたから、スーパーの店舗から出る産廃の処理を系列企業に委託するなどした。
私は格安での産廃処理の提案をした一般企業の社長が、しばらくたって何者かに襲われ大けがをしたのを知っている。

裏社会は「必要悪」であり、多くの人々にとって、何らかの形で関与せざるを得ないものだった。

1970年の「黒い霧事件」は、暴力団の息がかかった人間が野球選手を取り込んで八百長を仕組んだ事件だった。この際に暴力団と交際をした選手が何人も謹慎処分になった。
しかし、この謹慎処分はまさに形式的なものであって、プロ野球界と裏社会の交流の根絶を意味するものではなかった。

21世紀に入って、コンプライアンスの順守がさまざまな分野で求められるようになるとともに、警察権力はこれまで「いかさず、殺さず」で黙認してきた暴力団と全面対決するようになる。
1991年に施行された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律=暴対法」は、2008年に改正され、強力なものになった。
これ以後、日本の国家権力は、暴力団の公然組織を日本から根絶させることに注力しはじめた。

そうしたなかでも野球界と反社会勢力の関係は形を変えて温存されてきた。
原辰徳巨人前監督にかかわるスキャンダルで、読売グループが1億円もの金を反社会勢力に支払ったのは、裏の関係が表に噴出した例の一つだ。
昨年の巨人、野球とばく事件もそうした一端が明らかになっただけだ。根は深い。

プロ球界は、裏社会との関係を明らかにし、根絶を誓うべきだが、実際には難しい。

球団や親会社と裏社会との関係は、昨日今日始まったものではなく、数十年以上にわたっている。各企業には暴力団対策の部署があり、その都度、臭いものにふたをしてきた。総会屋、神農と博徒は厳密には違うが、同一人物がかかわって言ることもあり、企業では同じ部署が対応することが多かった。
今は当局の指導で利益供与はしていないが、叩けば誇りが出るのは間違いがない。

「根絶宣言」をし、本当に一切関係を断てば、これまでの関係を白日の下にさらされる恐れがある。それは新聞社や大メーカーにとって大きなイメージダウンになる。
事を荒立てず、彼らとの関係をフェードアウトさせたいというのが本音だろう。

警察が根絶しようとしているが、裏社会は衰退していない。
中国の裏社会との提携が進んでいるし、企業舎弟など姿を変えた形で勢力を維持、拡大している。裏社会のビジネスと言えば、これまで違法賭博、風俗、売春、薬物売買などだったが、最近はIT、不動産、建設業から流通関係にまで広がっている。
当局が公然勢力を撲滅しようとする中で、非公然化が進んでいるのだ。

そういうなかで清原和博のような刺青、シャブという「わかりやすい関係」は、裏社会にとっても迷惑ではないかと思う。
清原は「昭和の時代」の感覚で、プロ野球選手としてふるまい、堕落していったのだ。

警察による「暴力団撲滅」が進む中で、世間の目は変化しつつある。
昭和の時代までは、「やくざは町内の必要悪」として看過されてきたが、今の社会では「あってはならないもの」になっている。
暴力団との親和性が強いスポーツは、教育上好ましくないものになっている。

清原夫人の仕事が激減しているようだが、世間は、彼女が被害者であることは承知の上で「裏社会との関連があるもの」を公然社会から抹消しようとしているのだ。

この事件は、母親世代にさらに悪い印象を植え付けることだろう。
「野球のやは、やくざのや」という致命的なイメージダウンにつながりかねない。徹底浄化の動きが俟たれる。


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