今日はもう一つ、他の人の記事から。
沖縄や徳島にも球団が誕生? 「プロ野球16球団拡大」のXデー
自民党が国会で再度上げた16球団構想について、メディアが無視している件についての記事。私も先日挙げた。僭越ながら、私よりこちらの方が良い記事だ。
ほぼ同じことを言っておられる。異論はないが、そこで取り上げられた一文に目がいった。
球界関係者から「12球団の中に黒字球団がいくつあるのか知っているのか」という反論が上がったことに関して、筆者は
そもそも、その体質こそが問題であって、球団が独立採算で利益を上げる方向に転換しなければ企業としての発展はない。
と言っている。すでに広島は独立採算になっている(パトロン企業がいるとは聞くが)。また楽天やDeNAも経営の健全化に取り組んではいる。
しかし多くの球団では、いまだに親会社頼みで、赤字経営が続いている。
球界関係者は「だから16球団になるなんて無理だ」と言っているのだが、そもそも赤字やぎりぎりの収益で80年以上もこんな事業を続けてきたこと自体が異常だ。
大企業の道楽という不健全な形でここまでやってきたから、NPBはいつまでたってもビジネス感覚が身につかず、モラルやコンプライアンスの意識も低いのだと思う。
NPBの改革を総括する 4赤字か?黒字か?|野球史
ずっと思っていたことがある。
巨人選手の年俸総額は45億円前後、売り上げは250億円前後。年俸を原価とすれば、粗利率は82%ほどだ。個々に人件費や試合運営の諸経費、広告宣伝費、球場使用料などがかかってくるが、本来であれば十分に利益が残るのではないか。
しかし巨人の経常利益は数億円だという。
他球団の中には、巨人には及ばないまでも200万人の観客動員がありながら、赤字経営の球団もたくさんあるという。
球団は選手の年俸削減には割と熱心だが、それ以外に利益が上がるような経営努力をどれくらいしているのだろうと思う。
以前にも少し触れたが、NPBのキャンプでは、選手が練習メニューを移行するたびにグランドが整備される。その時にはいったい何人いるんだ、というくらい多くのスタッフがグランドに出てきて球場を馴らしたり、用具を整えたりする。
キャンプには、おそらく選手よりも多くのスタッフが従事している。
独立リーグやKBO、CPBLなどの試合や練習では、スタッフはごく一部だ。選手やコーチなどもグランド整備をする。
NPBでは、選手、指導者がそういう準備をすることはたとえ二軍でも一切ない。
贅沢なもんだと思っていたが、こうしたスタッフの経費も球団から出ているのだとすれば空恐ろしい。
かつてはミズノなどのスポーツメーカーから社員が出向していたが、今もたくさんいるのだろうか。

オフになると選手の戦力外通告の話が良く出てくるが、少し実績を残した選手の中には球団職員になる人も多い。
スカウト、用具係、広報担当、少年野球担当など。どれだけポストがあるのかと思う。
こういう元選手を抱え込む費用も、経費の中に入っているだろう。
さらに、本体の企業にとっては球団は天下り先としても機能している。
本体では処理できない経費を付け替えたり、いろいろと便利使いされているのではないかと思う。
だから多くの球団は決算報告書を公開しないのだと思う。
NPB球団は、そうした「親会社のお財布」「やめた野球人の受け皿」の役割をしている。
経営の上でコスト意識があるとは思えない。
「儲からなくてもいい」「無駄な人間がいてもいい」という甘い認識があるのではないかと思う。
今どきのビジネスでは考えられない、ふやけた企業経営だ。
球団が増えるということは、そういう生ぬるい企業が増えることではないことは言うまでもない。
経営感覚のある経営者が率いる、独立採算の球団が増えて、NPB全体の経営が健全化することを意味している。
12球団の多くがエクスパンションを拒んでいるのは、マーケットや顧客が奪われること以上に、しっかりした企業が参入してくれば、自分たちの経営のお粗末さが露呈するのを恐れているからではないか。
門田博光、チーム別&球場別本塁打数(南海時代)|本塁打大全
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「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取り扱いについて」
の影響もあろうかと思います。
プロ野球以上に広告費依存になっています。試合数が少ないのでしょうがないといえばしょうがないですが
要は、「(直接的には)無料で楽しんでいる客が多い」ということなのだろうと思います。
メディアも球場に広告を出したりしていますが(まあ、付き合い、ってやつでしょう)、可能であれば、コンテンツを提供している以上、ニュース等での素材も含め、テレビとか新聞とかからもっと金をとれればよいのでは、と思います。五輪の放映権みたいなものです(新聞社や通信社は無料で写真を掲載できるのですかね?)。
あと、「用具係」の話は、無駄と言えば無駄ですが、あえて言えば、それで関係者、特にOBが食べていけるのなら、それはそれで年金的役割を果たしているわけであり、あるいは選手は野球に集中できるわけであり、
それはそれでよい気もします。
10球団の話が出たときは驚きましたが(なにせ、最大の娯楽なんですよ!)、まあ、パリーグを中心に、いろいろ努力はしていると思うので、現状が絶対悪とは言えないと思います。
メジャーなんて、チケット代は日本の2倍くらいの感じがします。
無料券や割引チケットを考えると、もっと差がある気もします。逆に言えば、それだけ日本のファンは、安く野球を楽しめている、ともいえます。
実際は儲かっていても、親会社との連結の都合や税金対策などで意図的に赤字決算している可能性もありますし。
確かに、日本はプロスポーツのチケットは安価であると思います。
実は先日、日本代表の香川選手も所属する独・ドルトムントのサポーター集団が、
チケット価格の高さに対する抗議行動として、試合中のグラウンドに
テニスボールを投げ込むというアピールをした事件がありました。
これは
「サッカーはテニスのような高所得者のスポーツじゃないぞ!」
という意味合いで行ったそうなのですが、その時に出た記事に書かれていたチケット価格は、具体的な数字は忘れましたが、
野球のネット裏席など軽く上回る額だったのは確かです。
基本、欧州のサッカーもNPBと同じく「基本は赤字」がスタンスです。
(その国でNo.1の娯楽、という点も似ています)
競馬の馬主や、F1のオーナーと同じ感覚で、
利益よりも名誉のためにオーナーが資金をつぎこむスタイルが殆どです。
Jリーグのように人件費を切り詰めて黒字にしようとはしません。
しかしNPBと違い、所謂「サッカー大国」は巨額のテレビ放映権収入があります。
日本の感覚ですと、それがあるならチケット価格は抑制できるのでは・・・
と考えてしまいますが、西洋では結構そこからもふんだくるのですね。
ここらへんは西洋人との感覚の違い、としか言えない気がします。
赤字の企業がここまで存続していることを見ても、意図的な赤字経営であるのは間違いないです。
それが問題です。
彼らは独立採算の健全経営をするノウハウが全くないままここまで来てしまっています。
清原の問題とエキスパンションは直接関係がないでしょう。
道楽でやる球団経営そのものを変えないと、将来はありません。今までがそうだからというのはナンセンスです。
>届かにゃい様
ドルトムントが抗議したチケット代の話ですが、正確にはアウェーでの試合におけるシュツットガルトの対応に対してのものです。人気チームをホームに迎え入れるということで、シュツットガルトが通常よりも高い値段を設定したことに対するもので、恒久的な措置ではありません。
>日本の感覚ですと、それがあるならチケット価格は抑制できるのでは・・・ と考えてしまいますが、西洋では結構そこからもふんだくるのですね。
放映権があまりに巨額であるがゆえに、プレミアリーグのチームの中には、今の支出であれば、チケット代をタダにしても黒字になるというチームもあるようです。すなわち、選手補強へ回す金がまだまだ余っているということの証左でもありますが……。
>ふぐかにさん
放映権ビジネスが貧困なのは、テレビをタダで見る文化が定着しているという日本人の国民性の問題もあります。野球界、スポーツ界単体の問題でどうこうなるわけでもないと思います。
ちなみに、日本のサッカー選手たち(クラブ)は、インタビューの際にギャラを得ていますが、欧州のサッカー選手、一流監督は、どんなスターでも、インタビューはノーギャラで受けます。
まず、「親会社頼みの経営の赤字経営」という批判は間違っていると思います。
たしかにNPB球団の売上の多くは親会社からの収入(広告費)です。
しかし、そのような形態でも、資金繰りに行きつまることなく、運営は長期的に継続しています。それは健全な経営と思います。
親会社とは言うけれど、要は彼らを大口スポンサーです。一般に広島は独立採算制と言っていますが、実際にはマツダ株式会社という大口スポンサーがあっての経営であって、マツダから独立しているとは言えません。どの球団も実質的に大企業の広告費ありきで運営しているという意味で違いはありません。
一方で記事中の「経営努力をすすめるべきだ」という意見には賛成です。
本気で優勝を目指すのであれば、資金は有効に活用しなければなりませんし、収入は増やさなければなりません。
NPB球団の補強・育成はお寒い状況が続いていますが、これは経営努力が不充分であることが原因と言えます。早急な改善が必要でしょう。
広島の大口スポンサーはマツダではありません。マツダは今や小口の広告主です。他に存在すると言われています。
NPBの経営が健全でないというのは、親会社からの資金が入っているからではありません。収支のバランスがとれていなくて、年俸以外の合理的なコスト意識がないと考えられるからです。
要するに資金の還流や、甘く代用のトンネル企業のようになっている可能性があることを指摘しています。
ドルトの件は存じておりましたが、まぁいいかと思って省かせていただきました。
説明ありがとうございます。
(リバプールのELのチケット価格に対する抗議の方が良かったかも・・・)
しかし、今でもNPBでも巨人・阪神戦のみ特別料金、というのは普通にありますが
敵側ファン席にボッタ価格を付ける、という感覚もまた理解し辛い面ではありますね。
交流戦の千葉マリンで巨人側外野左翼席のみ5000円!
とでもするようなものです。そりゃ怒るでしょうな。
11. 広尾 晃さま
>収支のバランスがとれていなくて、年俸以外の合理的なコスト意識がないと考えられるからです。
基本、世界のどの国のプロスポーツ団体って、おうおうにしてそのような存在ではないですかね?
善いか悪いかは別にしまして。
プロ野球:12球団+NPB本体
Jリーグ:Jクラブ(J1、J2、J3)+Jリーグ本体
収入源
スポンサー収入
チケット代
放映権料
その他(グッズ)
どれも劣っているし、問題はスポンサー収入のところが一番だと思う。早い話が放映権料を落として沢山、地上波で貰ってそこそこ視聴率がとれてテレビ局的にそこそこペイできるならそのほうがいいです。放映権料を捨てて、代わりにスポンサー収入や、新規ファン、サポーターの獲得でチケット、グッズ収入など見返りもあり、いわゆるダンピング商法に近くなります。将来投資にもなりますし。
この中で恐らくプロ野球が赤字を出し放題でやれるのはソフトバンクとオリックスぐらいでしょう。セリーグ、とりわけ、広島除いて、モバゲー以外の4球団は赤字を殆ど出せないだろうから、ここの球団運営の仕方は注視していくといいと思います。恐らく、収入源はスポンサーやチケット収入でこれらは、色々なつながりでしょうね。それと読売、阪神、中日は放映権料。
要は球団の収入は
・チケット収入
・スポンサー収入
・放映権料
・マーチャンダイジング(グッズ等)
の4つとなり、特に上の3つはシーズンが始まる前にあらかた収入が確定する。流動的になりうるのはマーチャンダイジングの部分と、一部のチケットのみ。また、年間70試合程度しか収入源がない上に、オフシーズンは収入源がほぼないことも収益改善の阻害要素になる、とのこと。それでも大堀氏時代のベイスターズは親会社の支援無しで6期連続で黒字決算を達成しています(チームがそれなりに強かったこともあるでしょうが)。
また、支出の多くの部分を占めると思われる選手年俸ですが、この手の話になると話題にのぼる広島カープは去年の段階では全球団7位の支払額です。もはや決して赤貧球団ではありません。また、支払総額を見てみると上位の巨人・ソフトバンク・阪神(去年からはオリックスも)を除くと、25億円プラスマイナスあたりに集中していて、はっきり言って各球団で大差が無い状況。
去年のファン感謝デーでチームの収支を公開した日ハムを参考にすると、売上は毎年110億~120億円前後。親会社からの30億の広告宣伝費を除くと、ダルビッシュのポスティングマネーがあった2012年以外は赤字ということだそうです。ファイターズの場合は札幌ドームの使用料が過分に足かせになってはいるでしょうが。
確かにメジャーはエクスパンションでビジネスを拡大させたのでしょうが、それは先日の記事で触れられたとおり、アメリカの放映権ビジネスが地域密着型だからではないでしょうか。地域密着型であるがゆえに、チームのある地域が増えれば、それだけ金を出す視聴者が増えるという単純な構造になっているんでしょう。
また、球団の誘致のため、地元政府が球場建設に巨額の公金を注入するのも、日本とは文化的に異なるところです(日本にもそういう文化はありますが、桁が違う)。
プロ野球はエクスパンションの前にやることがあります。1リーグ3地区性もその一つ。他にも、採算性の低いチームの本拠地変更を検討することや、3軍制を広めて草の根の展開に繋げること、やる気の無い親会社を入れ替えることなど、盛り沢山です。
エクスパンションすれば、パイの食い合いが確実に生じますが、それを打ち消すだけのパイの拡大がなるかどうか大いに疑問です。まずやるべきは、現12球団の採算性をあげることです。
年俸以外の合理的なコスト意識がない
資金の還流や、甘く代用のトンネル企業のようになっている
どちらも適切な指摘と思います。
ソフトバンクや楽天、DeNAが中心になって改めて欲しいものです。