今回発覚した裏契約金が、プロ野球ビジネスにとって、どのくらいの大きさなのかをいろいろ比較してみよう。まず2011年度の年俸上位10傑との比較。単位億円
keiei-20120329-02


景気が低迷している中、選手の年俸も抑制されがちだ。2011年のNPB最高年俸はダルビッシュ有の5億円。2001年に阿部慎之助はこの倍の金額をもらっている。
一度にもらったわけではなく、分割していたようだが、それは税務上の処理、あるいは巨額契約を隠蔽したいと思っただけで、支払時期がかわっただけだ。
江本孟紀氏は「プロで1試合も出ていない選手に巨額の金を支払うのが問題」といっていたが、この表を見るとそれが実感できる。



また、こうした巨額契約をしないで入団した選手は、この事実を知っていれば相当不満を抱くと思うのだが。

次に過去5年間のMLBアマチュアドラフト全米1位選手の契約金との比較。為替レートが変動しているので難しい部分はあるが、1ドル80円で換算。

keiei-20120329-01


ここ数年新人選手の契約金が高騰している。悪名高い代理人スコット・ボラスが有望選手の契約を独占しているからだ。
2009年のスティーブン・ストラスバーグは4年1510万ドル(12.1億円)という空前の契約を勝ちとった。このときも「プロで1試合も出ていない選手に」という批判が巻き起こった。ただし、こうした巨額契約は極端な例に過ぎない。昨日の東京ドームのオープン戦で本塁打を打ったダスティン・アクリーは、ストラスバーグの年の2位で、5年750万ドル(6億円)だったが、多くの選手は契約金はゼロ。有望選手でも10万ドル程度が多い。

阿部以下巨人選手が結んだ契約は、この金額に匹敵する。MLBよりもはるかに経営規模が小さい球団が、毎年これだけの支出をしていたのだ。

最後に、その球団の経営規模についてのデータとの比較。

中国新聞から

広島東洋カープは27日、広島市中区のホテルで株主総会を開き、2011年決算を承認した。売上高は96億5006万円。当期利益は2億313万円。1975年から37年連続の黒字となった。
 売上高は昨年に比べて約2億円の減収となった。昨季は主催72試合の総入場者が158万2524人で前年を約1万7千人下回り、入場料や飲食収入などがダウンした。当期利益は9200万円減った。外国人選手を含む選手総年俸は過去最高の約20億円になったという。
 今季も150万人以上の観客動員を目指す松田元オーナーは「勝つ喜びと(球場を)訪れる楽しさを提供できる球団でありたい」と話した。


有数の健全経営球団といわれる広島の経営報告。ただし、親会社からの補てん額がどれくらいだったかは分からない。独立採算で考えた場合は、当然赤字だったと思われる。

華やかに見えるが広島東洋カープは年商100億足らず、経常2億円。従業員100人~200人程度の中小企業の経営規模なのだ。

巨人は、2008年売上高240億円、年俸総額55億円、経常利益24.7憶円を計上している。広島を最小とすれば、恐らく巨人のこの数字が最大。それでも中小企業の域を出ない。
巨人は2012年、年俸総額は38億円程度に縮小している。これは、経営状態を反映しているものと思われる。
これらの数字を阿部以下の選手の裏契約と同一に並べてみる。単位、億円。

keiei-20120329-03


広島が、巨人が出したような契約金を出せないことは一目瞭然だ。また、巨人にしても経常利益の4割の金額を一人の新人選手に与えることは、経営上考えられない。当然親会社である読売新聞社(連結売上4500億円前後)の金が動いたのだろうと思われる。

ただし5億、10億という巨費を秘密裏に動かすことは、有価証券等報告書の提出義務があり、透明性を求められる上場企業では考えられない。非上場の読売グループならではだ。同様にドラフト廃止論者の西武も非上場企業グループである。

裏契約の年俸は、経営的に考えても非常識だ。まともな経営者なら、会社の屋台骨を揺るがすような支出を許すはずがない。

2004年の時点で、かなりの数の球団が「完全ウエ―バー制移行」を求めていたというのは、至極当然だと思う。

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひ、コメントもお寄せください!