「あぶさん」が連載を開始したのは、1973年の3月のことだ。巨人の連覇は8回を数えていた。長嶋茂雄、王貞治は現役。
「巨人の星」は2年前に連載を終了、「新巨人の星」はまだ始まっていない。
連載中の人気漫画は少年ジャンプの「侍ジャイアンツ」、「アストロ球団」、少年サンデーには水島新司の「男どアホウ甲子園」、少年マガジンでは同じく水島の「野球狂の詩」、少年チャンピオンでは同じく「ドカベン」。
水島新司は実質デビューから4年目だったが、すでに野球漫画では第一人者になっていた。
その水島が少年誌ではなく、青年誌「ビッグコミックオリジナル」に進出した第一作が「あぶさん」だった。
ビッグコミックは、漫画アクションとともに、青年コミック誌の双璧になっていたが、アクションが「ルパン三世」によって、人気になる中、やや旗色が悪かった。
ビッグコミックオリジナルはビッグコミックより1歳半上の層をターゲットにした漫画誌。前年創刊。このセグメンテーションは成功し、ビッグコミックグループは、アクションを引き離していくのだが、「あぶさん」の連載は、その大きな原動力となった。
今読み返しても、クオリティの高さにうなってしまう。
画も、ストーリーも今の漫画と全くそん色がない。むしろ、今よりもグレードが高い。
漫画は90年代以降急速に進化したが、水島新司は、20年も前から、きわめて高いクオリティの漫画を描いていたのだ。

最大のポイントは、水島新司が取材をしたということだろう。単行本の1巻のカバーの見返しには、水島が当時南海の監督だった野村克也に話を聞いている写真が載っているが、水島は徹底的に取材をした。
今もそうだが、多くの漫画家は20代前半でデビューする。スポーツ選手などに取材をして話を聞きこむには、社会経験が少なく若すぎる。
しかし水島は当時33歳、苦労人であり、相手から話を聞き出すことが十分可能な年齢だった。
恐らく、写真も何万枚となく撮ったことだろう。
私は70年代の大阪球場近辺をよく知っているが、今読むと当時の巷の匂いさえ立ち上ってきそうだ。
70年代半ばから大阪球場を核とする難波地区は再開発される。たまたま私はその広告を担当する会社に入ったから、大阪球場近辺の様変わりをオンタイムで見ているが、「あぶさん」は、その移り変わりも極めて正確に描いている。その仕上げとして南海ホークスは身売りされたのだ。
水島新司は荒唐無稽な野球漫画も結構描いているが、野球のプレーシーンや、用具、球場などは徹底的に写実している。
とりわけ「あぶさん」では、一点一画も揺るがせないという決意が見て取れる。
フィクションは、あぶさんこと景浦安武と、その周辺だけ。あとはリアル。
そうした明確な考え方が、「あぶさん」を史上最高の野球漫画にしたのだろう。
景浦安武は1946年12月17日生まれ。今年師走には古希を迎える。
以下、内容に入っていこう。
1976・77年西本聖、全登板成績【二軍で最多勝からの一軍定着】
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連載中の人気漫画は少年ジャンプの「侍ジャイアンツ」、「アストロ球団」、少年サンデーには水島新司の「男どアホウ甲子園」、少年マガジンでは同じく水島の「野球狂の詩」、少年チャンピオンでは同じく「ドカベン」。
水島新司は実質デビューから4年目だったが、すでに野球漫画では第一人者になっていた。
その水島が少年誌ではなく、青年誌「ビッグコミックオリジナル」に進出した第一作が「あぶさん」だった。
ビッグコミックは、漫画アクションとともに、青年コミック誌の双璧になっていたが、アクションが「ルパン三世」によって、人気になる中、やや旗色が悪かった。
ビッグコミックオリジナルはビッグコミックより1歳半上の層をターゲットにした漫画誌。前年創刊。このセグメンテーションは成功し、ビッグコミックグループは、アクションを引き離していくのだが、「あぶさん」の連載は、その大きな原動力となった。
今読み返しても、クオリティの高さにうなってしまう。
画も、ストーリーも今の漫画と全くそん色がない。むしろ、今よりもグレードが高い。
漫画は90年代以降急速に進化したが、水島新司は、20年も前から、きわめて高いクオリティの漫画を描いていたのだ。

最大のポイントは、水島新司が取材をしたということだろう。単行本の1巻のカバーの見返しには、水島が当時南海の監督だった野村克也に話を聞いている写真が載っているが、水島は徹底的に取材をした。
今もそうだが、多くの漫画家は20代前半でデビューする。スポーツ選手などに取材をして話を聞きこむには、社会経験が少なく若すぎる。
しかし水島は当時33歳、苦労人であり、相手から話を聞き出すことが十分可能な年齢だった。
恐らく、写真も何万枚となく撮ったことだろう。
私は70年代の大阪球場近辺をよく知っているが、今読むと当時の巷の匂いさえ立ち上ってきそうだ。
70年代半ばから大阪球場を核とする難波地区は再開発される。たまたま私はその広告を担当する会社に入ったから、大阪球場近辺の様変わりをオンタイムで見ているが、「あぶさん」は、その移り変わりも極めて正確に描いている。その仕上げとして南海ホークスは身売りされたのだ。
水島新司は荒唐無稽な野球漫画も結構描いているが、野球のプレーシーンや、用具、球場などは徹底的に写実している。
とりわけ「あぶさん」では、一点一画も揺るがせないという決意が見て取れる。
フィクションは、あぶさんこと景浦安武と、その周辺だけ。あとはリアル。
そうした明確な考え方が、「あぶさん」を史上最高の野球漫画にしたのだろう。
景浦安武は1946年12月17日生まれ。今年師走には古希を迎える。
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