昨日、野球賭博関連で、二つの考え方を紹介した。いろいろな意見をいただいたが、かなりかけ離れたものもあるので改めて考えたい。

その前に、今号の「週刊ベースボール」の「短期集中連載」は、清原和博の96年前後の記事だけ。わずか2ページ。フェードアウトしていいかなー、という感じだ。ここ2週間ほど充実した内容だっただけに残念。



さて、野球賭博関連での2つの考え方とは
1選手の有害行為は、指導者、チームにも連帯責任がある
2選手の有害行為は、選手が成人の場合、選手の責任。

というものだ。

1の考え方は、指導者は競技だけでなく、選手の生活全般について指導しているのだから、選手が不祥事を起こせば責任があるという考え方。
2の考え方は、プロ選手はチームと契約する個人事業主だ。言動はすべて自己責任。不祥事を起こせば、選手だけに責任がある。指導者、チームは被害者だ、という考え方。

2の場合、バドミントンなどアマチュア選手はどうなるのか、と思うが、アマであっても、企業と雇用契約を結んでいても、成人した社会人は、自己責任ということになるのだろう。

で、再発防止策も2つで大きく異なる。
1はより厳しく指導し、禁止、罰則事項を多くして、選手をさらに縛る。
2は幼時からの教育を徹底し、善悪の判断、社会性を身に着けさせる。


ご指摘のあった通り、2つの考え方は1か2かではなく、どちらによりウェイトをかけるかという問題だ。
個人主義を徹底している西洋社会と、個よりもコミュニティを優先する日本社会では、ウェイトのかけ方は違ってくるだろう。

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しかしながら、こうした議論に混ざって、

元々野球選手は遊び好きなのだから、少々の賭博や有害行為は大目に見るべきだ

罪に問われない違法賭博を野球選手(アスリート)だけ問題視する必要はない


という意見も出てきている。

これは

これまでこうした有害行為は看過されてきたのだから、今さら目くじらを立てなくてもいい

という意見でもある。

改めて言うが、今掲げた1、2両方のいずれの考え方でも、野球賭博、違法賭博は厳しく取り締まることに変わりはない。

選手が野球賭博や違法賭博に関与していれば、1でも2でも徹底的に調査するのが基本だ。
その上で、
1は、連帯責任として指導者、球団もペナルティを受ける。
2は、選手だけがペナルティを受ける。


2の考えでは、選手は自己責任なのだから、球団はほったらかしにすればよいという人もいるが、そうではない。球団は組織や仲間を守るため、有害行為をする選手は追放しなければならない。

いわば1の考え方では、指導者、球団は「教育者」であり2では組織の治安を守る「保安官」だ。その違いだけだ。

選手の賭博や有害行為を騒ぎ立てるなという人は
「野球選手が一般人よりも、清廉潔白、品行方正であるべき理由はない」
と主張している。

コメントのやり取りでも記したが、私はこの考え方はおかしいと思う。
野球に限らず選手、アスリートは

①知名度、認知度が高く、その言動が社会に大きな影響を与える
②青少年の心身の健全な育成を目的としているスポーツの頂点にいる
③スポーツそのものが「ルール」「規範」と「フェアプレーの精神」で成り立っている


さらに、プロ野球選手の場合は

④多額の報酬を得て、社会的地位も高い

だから、一般人よりも誘惑が多い。また発覚した時のインパクトも大きい。特に有名選手は、そのスポーツジャンル全体に深刻な影響を与えるから、一般人より厳しいハードルを設けるべきだということだ。

この背景には、「社会の変化」特に「コンプライアンス意識の変化」がある。

これまでの日本社会では、違法行為や非常識な行為でも、看過されているものごとがたくさんあった。飲酒運転、禁煙場所での喫煙、違法賭博、選挙違反などなど。

ここ20年ほどの間に、これまでセーフだったものが、どんどんアウトになってきている。

昔は職場で高校野球のトトカルチョをしたり、賭けゴルフをしても、何らとがめられることはなかった。

しかし、今は、このことが警察に通報されると犯罪になる。公務員や責任ある立場の場合、新聞などに掲載されて、責任問題に発展することもある。

警察はかつては暴力団の存在を許容し、これをけん制していたが、今ではこの根絶を目指している。暴力団は相対的な悪ではなく、絶対悪になった。

人々の意識も変わった。ネットの普及とともに、一般人の情報発信も容易になり、小さな犯罪、違法行為が、大きな問題に発展しかねないようになっている。

人々が互いを見張り、何かおかしなことをしないか探し回る「監視社会」になっているのだ。

それが良いことか悪いことかはわからない。しかし、みんな、そういう社会に生きているのだ。

プロ野球選手やアスリートだけが、昔のままの「緩いコンプライアンス意識」で良いはずがないのだ。むしろ、社会的ステイタスが高い人には、一般人より高いコンプライアンス意識が求められている。

これは善悪、是非の問題ではない。現代社会に生きていくうえで必要な「防衛策」あるいは「武装」と言って良いと思う。

今日、田母神俊雄という人物が公職選挙法違反で逮捕された。この男は、都知事選の選挙資金でスタッフに金を配ったり、上等の背広を買ったりした。「昔の倫理観、コンプライアンス意識が、俺様だけは通用する」と思っていたのだと思う。
時代に取り残されているのだ。滑稽極まりない。

プロ野球も、今、世間の考え方に追いつかなければ、置いていかれる。田母神様のようになる。それを認識すべきだ。


年度別チーム第1号本塁打は俺だ! 阪神編

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