私は藤浪晋太郎が好きである。ダイナミックな投球もさることながら、あの素直そうなところが「関西にどこでもいる兄ちゃん」という感じがして好感が持てる。


同い年の大谷翔平は、まだ花巻東高にいるころに「曼荼羅チャート」を書いている。サラリーマン各位の中には、記入させられた人も多いと思うが、自己実現のためになにをすべきかを、四角い升の中に記入していくやつだ。
当時の大谷の曼荼羅チャートには球速160km/hからプロ入り、さらにはMLB挑戦までが整然と描かれている。完璧だ。専門家が指導したためではあるが、高校時代から大谷は「自分の肉体を資本とする起業」をはっきり考えていたことがわかる。
そしてまさに大谷は、曼荼羅チャート通りに自分の道を歩いている。
本人はギラギラ上昇志向むき出しということはなく「野球部擦れ」もない好青年だが、すでに確固とした「自我」をもった大人であることをうかがわせる。

それに比べると藤浪ははるかに純真で、素朴なキャラクターのように思える。
チームは彼を大事に育て、その甲斐もあってここまで順調に伸びてきた。エースの自覚も芽生え、しっかりした発言も目立っていたが、今年になって成績は急落。

これは、昨年までの登板過多の影響もあっただろう。ここ2年間、藤浪はランディ・メッセンジャーと並ぶ2枚看板として、フル回転した。昨年は199回、投球数も3300球を超えていた。
藤浪は1回あたりの投球数が17を超えている。効率的な投球とはとても言えない。それだけに200回未満でも肩、ひじへの負担が懸念された。

私はキャンプのブルペンで藤浪の投球をまじまじと見たことがあるが、長い手足がまるでゴムのように伸びるのを見て、藤浪が大きいだけでなく柔軟で、素晴らしい肉体の持ち主であることを実感した。

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今年、監督が金本知憲に変わった。金本の「超変革」は、ありていに言えば「使える選手を手当たり次第に使う」ということだ。

当然、藤浪晋太郎はその筆頭格であり、フル回転することが求められた。藤浪もそれに応えようとしたが、残念なことに藤浪の肉体は万全とは言えなかった。

過去4年間の藤浪の登板間隔別の成績を出した。

S-Fujinami


2年目の藤浪は、登板間隔が短いほどERAが良かった。まだ勢いに任せて投げることができた。
しかし翌年からこの数字は逆転、今年は登板間隔が短くなれば、成績が下落するようになっている。パワーチャージの所要時間が長くなっている。疲労が蓄積しているのだろう。

それに加え、藤浪は「初回失点の呪縛」がある。立ち上がりに走者を許すと、ぐずぐずと崩れるのだ。昨日も、失策や内野安打が絡んで初回にKOされた。
例の7月の「罰投」以来、トラウマのようになっているのではないか。

前回登板で完封し、久々にいいところを見せた藤浪に対し、首脳陣は「これからは中4日でいくかもしれない。どんどんいく」と述べた。事実、今回は中5日の登板だった。
しかし今年の藤浪の状況を見れば、明らかに登板間隔を伸ばすべきだった。
「エースは指名されれば中何日でもいくもんや」という根性論は、今や「無知」同然である。

金本監督は、藤浪の昨年までの酷使に留意していない。また、選手の体のケアについて理解がある方とも思えない。

藤浪はいわば、営業畑で鳴らした「いけいけどんどん型」の上司によって潰されそうになっている若手社員というところか。

大谷翔平が、すでに登板できる状態になっているのに、ポストシーズンをにらんで肩を温存しているのとこれまた対照的だ。

藤浪晋太郎に足りないのは「根性」ではなく「時間」だ。中6日以上のゆったりした感覚でプレッシャーなく投げさせる意外に、解決策はないと思うのだが。


1966年小川健太郎、全登板成績【エースとしての働き】



nabibu-Yakyu01
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