野球の危機を語ると「競技人口が減っても問題はない、見るスポーツとして野球は繁栄し続ける」という反論をいただく。

確かに「大相撲」は、競技人口などほとんどいないと思われるが、人気を保っている。
今でも地方に行くと、学校の校庭に土俵が築いてあるのを見かけるが、相撲をしている子供はほとんどいない。
すでに競技スポーツとしての相撲は、マイナー化して久しいが、相撲人気は、八百長事件で落ち込んだものの相変わらず高い。本場所のチケットは入手困難だ。

P9160289


「フィギュアスケート」も人気が高い。浅田真央は、女性アスリートの人気ナンバー1だ。しかし競技人口は極めて少ない。スケートをしたことがある人は多いだろうが(私は2回目のスケートで前歯を折ったが)、フィギュアと名前が付く競技をしたことがある人は微々たるものだろう。

競技人口がほとんどいない「見るスポーツ」というジャンルも存在するのだ。

しかしそれには条件があると思う。
「大相撲」は、相手を土俵の外に出すか、足の裏以外の部分を土俵につけるかすれば勝ち。決まり手や組手などは複雑だが、ルールは極めてシンプルだ。何も知らなくても熱中できる。
「フィギュアスケート」は、採点方法などは高度に複雑だが、その競技自体が美しいから熱中できる。失敗すればすぐにわかる。詳しくなくても楽しめるのだ。

「野球」はそうではない。ルールは複雑で細かい。打った、投げた、走っただけならわかるだろうが、試合展開や勝負の機微などは一定以上の知識がないとわからない。
野球界に君臨した(今もしている?)渡邉恒雄読売新聞最高顧問は、野球界の権力を掌握してから
 「君、なぜ三塁に走っちゃいかんのだ」
 「君、セカンドとショートはどっちが一塁に近いんだ」
と側近に聞いたと言われるが、小さいころからなじんでいない人の野球の知識などこの程度である。

今、野球の競技人口は減少しているが、とりわけ軟式野球や、草野球、野球ごっこに興じる子供の数が減っている。いわゆるライトユーザーだ。
これは「やる側」ではなく「見る側」が減っていることを意味している。
子供のころに野球に親しまなかったこともが、大人になってから急に野球ファンになることなどあるのだろうか。
そういう危機感でこの本を書いたのだが。




「そうは言うが、今、球場で盛り上げっているカープ女子は、それまでほとんど野球なんか知らなかったはずだ」という反論もあろう。
確かに、今、スタジアムに詰め掛けているファンの多くは、野球についてそれほど詳しくないのかもしれない。

しかし、私はこうした盛り上がりがいつまで続くのかと思う。
世の中にはブーム、ファッションというものがいくつもある。それらの言葉には「一過性の」という修辞が付いて回る。
ブーム、ファッションが永劫続くことはないのだ。
原宿で竹の子族をしている若者はもういないし、ディスコで踊り狂うワンレンボディコンも幻と消えた。今のファンの中には、そういう類も含まれているのではないか。
球団が、そうしたファンも呼び込んで、楽しんでもらうための営業努力をするのは当然だ。もっとやってほしいと思うが、しょせん、一過性のものではないかという気がしてならない。
コアでずっと応援をしてきた人たちはこれからも変わらないだろうが、カープ女子は5年先も10年先もそのままいると思うべきなのだろうか。

DSC_6312


遅きに過ぎるが、子供たちに草野球、野球ごっこの楽しさを植え付けるような取り組実を始めないと、野球は「見るスポーツ」としても衰退するのではないか。



山本一義、全本塁打一覧|本塁打大全



nabibu-Yakyu01
私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

本日発売!