2年前のクライマックスシリーズ、私は京セラドームで試合前のセレモニーを見ていた。


オリックス対日本ハム。先発は大谷翔平、大谷はベンチ前でゆっくりとキャッチボールを始めた。
その後ろには、セレモニーで演奏をする大阪桐蔭高校のマーチングバンドが控えていた。

大谷の姿を数メートル先に見つけたバンドの女子高生たちは、楽器を手にしたままざわっと揺れた。目が釘付けになったようだった。
セレモニーがはじまり、マーチングバンドは大谷の横を通って、グランド中央に行進していったが、大谷の2mほど横を歩む彼女たちの気持ちが、手に取るように分かった。
スーザフォンを体に巻き付けた彼女の心臓はバクバクしていただろう。
大阪桐蔭高校である。有名な野球選手は見慣れているはずの高校生たちが、そんな風にときめいたのだ。

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スターには独特の輝きがある。イチローは、遠くにいてもそのストイックさが伝わってくる。独特のしぐさが遠くからも確認できる。MLBにわたってからは、歴史を目の当たりにしている、という特別な感じが加わった。イチローとの距離感からメディアなど周囲のリスペクトが伝わってきた。

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古い話だが、山田久志も遠目からでもはっきりわかった選手だ。西宮球場にはラッキーゾーンがあって、ブルペンになっていたが、ここで投球練習する姿が、バックネット裏からもくっきりと見えた。ゆったりと体を折り曲げるフォームが美しかった。「目に焼き付けておこう」と思った。

ダルビッシュは、あたりを圧するような威圧感がある。大谷翔平と大きさは同じくらいだが、2011年の肉体改造以降、仁王さんのような肉体になった。横幅も想像以上にある。本人にその気はなくても、周囲を睥睨しているような”怖さ”を感じる。

大谷翔平はそのどれとも違うインプレッションを与える。のびやかな四肢の上にのった小さな顔は、あどけない。10頭身の体を見なければ、小学生かと思うようなくりくりよく動く目を持っている。
そして、彼はいつも明るい。
大谷が出ている試合ではカメラはベンチの彼を追いかけるが、大谷は、試合に夢中で、屈託がなさそうだ。野球をするのが楽しくて仕方がないという気持ちが伝わってくる。
大谷にとって、野球は修行でも、野心を達成する手段でも、仕事でもないのだろう。彼にとっては野球は最大のホビーであり、楽しみなのだろう。
彼が野球をしているのはそれが「楽しくて仕方がないから」なのだろう。

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昨日の試合では、大谷は鋭い打球を飛ばすとともに、長い脚を駆って塁を奪って見せた。投手、そしてDH、いずれのポジションでもそれは求められるプレーではなかったが大谷は、「だって楽しかったんだもん」とでも言いそうな気楽さで、塁を陥れた。
同じ動機で、大谷は二刀流も楽し気にやりこなしているのではないかと思えた。

すでに2億円もの年収がある大谷だが、伝え聞くところでは、彼はファッションにもグルメにも興味がなく、コンビニのスイーツを喜々として楽しみ、ダルビッシュに教えられたトレーニングに励んでいるという。
私の母なら「ええ子やなあ」というそうな純真、無垢。

これほど注目を浴びていながら、彼はまだ”出世前”なのだ。すでにMLBが特集を組むほどの大物ながら、大谷翔平は、まだ自分の”偉さ””価値”に気が付いていないし、慢心もしていない。
これは人柄なのか、家のしつけなのか、球団の教育なのか、わからないが、その初々しさに人は果てしない可能性を感じるのだ。
何とも知れない鬱陶しい世の中にあって、大谷翔平は雲間にぽっかり空いた青空のような「希望」を感じさせるのだ。

願わくば、あの長い脚がぽっきり折れたり、肩が突然痛んだりしないでほしい。
少なくともあと10年は、我々に希望を抱かせてほしい。
みんな、希望を持ちたいと思っている。未来は明るいと思いたい。だから、みんな大谷翔平が大好きなのだ。



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