先日、野球ドクターの馬見塚尚孝先生の知己を得たが、馬見塚先生は野球指導者の一番の義務として「子供たちの安全を確保すること」と言われた。

練習中に怪我や心臓発作やアナフィラキシーショックなど、命にかかわる事故に遭わないように注意するのはもちろんことだが、それとともに、子供の体に過度な負荷をかけて、野球生命を縮めるようなこともしないようにすることも含まれているのだと思う。

私立の強豪校の取材をしていてその学校のOBの人と話し込むことがよくある。甲子園や地方大会で活躍した選手の話で盛り上がるのだが、選手のその後の話を聞くと「肘を痛めて野球をやめました」「肩をやってやめました」という話がしょっちゅう出てくる。
今の強豪野球部では、「肩やひじを故障するのは当たり前」と思っているような感じがする。

昭和の時代は、そういう故障は「故障する選手が悪い」「鍛え方が足りない」と言われていた。
指導者の中には「俺は肩の痛みを押して投げていた」「曲がったひじは木にぶら下がって治した」などと武勇伝を披露する人もいた。

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今でも古い野球人の中には「今の選手は鍛え方が足りないから、故障するんだ」という人もいる。
このあたりの事情を説明するのは難しいが、こういうことだろう。

今も昔も、選手の肉体には個人差がある。同じように投げ込みをしても、故障する選手も、しない選手もいる。何球投げたから壊れるという定義づけは難しい。
また、ひじや肩に負荷がかからないフォーム=正しいフォームで投げる投手は、故障しにくい。

多くの投げ込みをしても、故障しなかった投手は、たまたま強靭な肉体だったということになるだろう。また、教わったものか、生得のものかは別として、正しいフォームで投げていたのだろう。

故障して投げられなくなった投手は、肉体が強靭でなかった可能性が高いうえに、投球フォームもよくなかったのだろう。

しかし、正しいフォームで投げていたとしても球数が嵩めば故障のリスクは高まる。

制球力を高めたり、ボールの回転をよくするためには、ある程度の投げ込みは必要だろうが、フォームと球数のチェックは不可欠だということだ。

野球指導者、特に少年野球の指導者は、こういうことをよく理解して、バランスを考え、きめ細かくチェックすることが必要なのだろう。
多くの野球少年が、肩、ひじを壊してしまうのは、根性論で育った生半可な知識の指導者の責任だろう。

MLBに進む日本のエース級の投手は、MLBのメディカルチェックで必ず引っかかる。肘や肩に異常が見つかることが多いのだ。
これは主として高校時代の酷使によるものだとみなされる。

今、NPBの先発投手のシーズン登板数は28回程度だ。これで20勝を挙げるのは至難の業だ。トップクラスの投手であっても、15勝平均が精一杯だ。だとすれば、13年以上、高いレベルで投げ続けなければならない。

しかし、NPBのエース級の投手は、高校時代に酷使されていることが多いから、じん帯が摩耗するなど、常に古傷という「爆弾」を抱えている。そのために、200勝をクリアするのが難しくなるのだ。

かつての大投手を見ても、金田正一や別所毅彦のように長く一線で投げ続けた投手がいる一方で、稲尾和久のように、短期間で驚異的な勝ち星を稼いだものの、急速に衰えた投手もいる。昔の投手はみんな長期間、安定した成績を挙げた投手わけではないのだ。

そして看過できないのは、1年、2年酷使されて消えていった投手もたくさんいたということだ。

たまたま白星を積み上げることができた投手が「俺らの時代のほうが、投手は強靭だった」と行っているのだ。

もちろん、変化球のバリエーションの増加や打者の技術の向上など、環境変化も重要な要素だろうが、基本的には、投手の育成の基本はこういうことになろう。

1、(大前提として)高校時代の投げ込みを制限する
2、その投手にあった正しいフォームを選手と指導者が見つける
3、その投手の球数の限度、調整法を選手と指導者が見つける
3、常にメディカルチェックをする

ことで、今後も200勝投手が出てくるような改革は可能なのではないかと思う。
反対に言えば、そういう投手を育てることが指導者の役割になるだろう。

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1973年加藤初、全登板成績

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