この言葉に引っかかる人が多いようなので、一度整理をしておきたい。
この言葉は、別に略奪とか、そういう意味でもない。また「子どもは野球界のものではない」と言われるようなニュアンスでもない。
マーケティング的な説明をしていく。ちょっとでも勉強した人には、あまりにも初歩的で、苦笑されるかもしれないが。

非常にシンプルな話として、事業を展開する際に、商品開発とチャネルは以下のマトリックスように整理される。

Matrix


A の新商品を新市場に展開するのは、未知数の要素が多すぎるため、リスクが大きい。
Dの従来商品を従来市場に展開するのは、競争が発生するため、売り上げが見込めず、期待薄である。

だから、事業展開は、
B新商品を従来市場に展開するか、C従来商品を新市場に展開するか、いずれかしかないのだ。

川淵三郎さんは、Jリーグを創設し、サッカーのすそ野拡大を目指すにあたって、Bの戦略を選択したのだ。

すなわち、すでに地域でスポーツ(主として野球)に親しんでいる子供、その家族をターゲットにして、新商品である「サッカー」を普及しようとしたのだ。

そのためには野球との差別化が必要だった。「ファン」を「サポーター」と言い、「グランド」を「ピッチ」と言い、「コミッショナー」を「チェアマン」と言ったのも、すべて「差別化」のためだった。
また、「百年構想」などの新しい理念も、野球など従来スポーツを意識したものだ。
新市場に売り込むのであれば、こうした差別化は必要がなかったのだ。

川淵さんは「徹底的に差別化した」と強調したが、それは主として「野球界からファンを奪う」のが目的だった。

「ファンを奪う」と書けば穏やかではないかもしれないが、事業は市場から顧客を奪うことだ。
新規事業は、それ以外に展開の余地はない。

サッカーはこの後に、女子リーグを支援し、なでしこジャパンを立ち上げたが、これはC、従来商品(サッカー)を女性と言う新市場に展開したことを意味する。

サッカーは「グラスルーツ」という考え方を打ち出している。その中には「引退なし」と「障がい者も」という概念があるが、それはCの戦略をさらに進め、サッカーをシニア、ハンデキャップと言う新市場に展開することをも意味している。

サッカーは、マーケティング的に非常に優秀なのだ。

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今、野球界は従来市場をサッカーなどから奪われつつある。この対策の第一ステップとして、B、従来市場に新商品=新しい野球を広げていかなければならない。
しかし「新しい野球」がいつまでたってもできないために、市場で顧客離れが進み、シェアが縮小しているということなのだ。

野球界はD、従来商品を従来市場に展開することしかしていないので、顧客が減っているのだ。

野球界はこういう考え方に変わってほしいし、読者各位も理解していただきたいと思う。

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