NPBは、いろいろあるが、それでも進化していると思う。おそらくはナベツネの老耄もあって巨人の横やりも弱まり、合理的な選択をすることが多くなった。
その背景には「野球離れ」に対する深刻な危機感があると思われる。今となってはアマチュア野球の方が「抵抗勢力」なのではないかとさえ思う。
そんな中で、時代の変化を認識せず、放言を続ける元大選手がいる。

昨日紹介した野村克也、張本勲と金田正一、広岡達朗の4人だ。全員が戦前生まれ、野球殿堂入りしている。
彼らは、野球界での多大な実績があることから、今も大きな影響力を有し「ご意見番」として盛んに発言している。

しかし、彼らの言動は、一事で言えば「今のお前らより、わしらの方が偉い」に尽きる。野球界が時代の変化の中で揺れ動いていることに一切理解を示さず「お前らの努力が足りん」と吐き捨てる。

野球界は年功序列が厳しい。後期高齢者、そして野球界で60年近いキャリアを有する大御所の発言に、正面切って反論できる野球人はいない。
もちろん、彼らの言動に従う野球人もあまりいないのだが、言論の上では、老人たちが言いたい放題している。

これに快哉を叫ぶ中高年も多い。おそらくアメリカならトランプに1票を投じそうなおじさんだろうが、このために、他愛ない、意見ともいえない彼らの発言が、一定の影響力を保持し続けることになるのだ。
一定のニーズがあるために、メディアもこれを取り上げるのだ。

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蟷螂之斧ながら、私はそれを危惧していちいち取り上げている。彼らの発言が、野球の現状からいかに遊離しているかを指摘している。

一番の問題は、4人ともに「勉強不足」であることだ。
野球は1990年代に大きく変化した。球場のサイズが大きくなり、野村克也が量産したような100m以下のチープホームランは実質的になくなった。
また、選手の起用法も激変した。先発、救援の分化は70年代から始まっていたが、この専門性が高まった。そのために投手の調整法も変化した。
彼らもその変化を経験してきたにもかかわらず、昔のことばかり言っている。
馬鹿の一つ覚えみたいに「走れ走れ」しか言わない金田正一の時代とは違うのだ。

さらに、野茂英雄がMLBに移籍して以来、MLBの考え方が、NPBに流入した。
選手の生活管理や、調整法、作戦面、ビジネスの考え方が変化した。一事で言えば「視野が広がった」。
4人の老人のうち、広岡を除く3人はMLBが大嫌いだ。彼らの時代には、野球の頂点はNPBであり、彼らはその頂点にいたから、レジェンドとして尊敬された。NPBより上のステージがあるということになれば、自分たちの権威は色あせてしまう。嫉妬に近い感情が湧くのだろう。

MLBに移籍する選手を「裏切者」「恩知らず」と呼び、MLBのプレーを「基本がなっていない」とくさすのは、みっともないことだ。

確かに「MLB崇拝」は、浅はかな考えだ。桑田真澄のように「MLBにも良いところと悪いところがある」ことを冷静に見る必要はある。しかし、ろくにMLBについて知ろうともせずに、あたかもレベルが低いかのように言うのは、「井の中の蛙」のそしりを逃れない。

そうした声は、変化を求めない中高年には一定の支持があるが、そのことが改革すべき野球界の現状を見えにくくしている。

同じ世代でも吉田義男や故豊田泰光などには、そうした頑迷さは見られない。今と昔の野球を冷静に判断している。
だから「世代」でひとくくりすべきではない。個々のキャラクターによるところが大きいのだ。



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