WBC参加国の中で最初に敗退が決まったのは、台湾と韓国だった。IBAFのランキングでいえば3位と4位の強豪国が(1位日本、2位アメリカ)、41位のイスラエルと9位のオランダにあっけなく敗退したのだ。これは日本球界にとっても、良いことではない。
二つの国は、異なる理由で惨敗した。

韓国プロ野球、KBOは昨年833万人の観客動員を記録した。10年前からほぼ倍増。これは試合数の増加が大きい。KBOは1リーグ10チーム制、16回総当たりだから試合数はNPBより多い154試合。総試合数は693だから、1試合当たりにすれば1.2万人。NPBが総試合数858で、2580万人を集めているのに比べれば見劣りするが、人口5000万人の韓国では、最大のプロスポーツだ。ちなみにKリーグは494試合で300万人台だ。

経済的には発展を続けるKBOだが、昨今は主力選手がMLBに移籍している。2015年姜正浩、2016年呉昇桓、金賢洙、朴炳鎬、李大浩。彼らは必ずしも活躍しているわけではないが、NPBと同様、トップ選手が抜けていく状態が続いている。
日本の場合、MLBに移籍するのは投手だが、そのあとを埋める有望な投手が続々と生まれることで、NPB全体のレベルは落ちていない。少年野球から高校野球と広いすそ野があるからだ。高野連登録の選手数は12万人となっている(疑問のある数字であるのはたびたび指摘しているが)。

しかし韓国は、もともと野球の競技人口が極めて少ない。高校野球は50校ほど。競技人口は数千人に過ぎない。MLBへの海外流出によって、KBOの実力は低下している可能性がある。
2015年のプレミア12では、2016年MLB移籍組の選手が大半加わっていた上に、アメリカやメキシコ、ドミニカなどがMLB選手を出さなかったこともあり優勝したが、今回は対戦相手のレベルが高い上に、韓国選手のレベルの低下もあって、惨敗した。
KBOはNPBと同様、内向きの団体ではある。国内の盛り上がりを作るのには熱心だが、国際的なレベルアップはできていなかった。

それに加えて、韓国国内は大統領弾劾裁判が進行中の上、サムソン、ロッテなど財閥も混乱の極みにあり、その子会社である球団も浮足立っている。国際大会どころではないという空気があると思われる。
もともと「ニンジンをぶら下げられれば頑張る」という気質があった。オリンピック競技だった時代は「メダルを取れば兵役免除」というニンジンによって野球は頑張ったが、それもなくなり、モチベーションも低下していたのだろう。

韓国は今、国全体が現実を直視せず、刹那的になっているという印象があるが、そうした国の空気が野球にも漂っているように思える。

PB173152


台湾は、度重なる八百長事件によって、プロリーグCPBLの社会的信用が低い。
そのために、有力なアマチュア選手がCPBLに行かず、NPBやMLBを目指す傾向がある。
またアマとプロの実力差がない。
アジアウィンターリーグは若手主体の冬季リーグで、アマとプロの2チームが出場するが、常のアマの方が強い。
そういうこともあって、WBCの選手選考も、アマ球界とCPBLが共同で行っている。今回のWBCは、アマ側が主導権を握ったがこれに反発してLamigoが選手を送らなかった。昨年大ブレークした王柏融も出場しなかった。
もともと、ベストメンバーを組むことができなかったのだ。
それでもモチベーションは低くなく、オランダといい勝負を演じたが、台湾も東京に来ることなく終わった。
この国はいつも、ちゃんと準備をしないという印象がある。そうした体質が今回も現れたと言えよう。

PB160232


他山の石ではない。人口5000万人の韓国と2300万人の台湾は、NPBにとって重要なマーケットであり、人材供給源でもあるはずだ。野球愛好者も非常に多い。またNPBへの関心も高い。

この2つの国が、最も重要な国際大会の一つで惨敗した。これはマーケットを考えるうえで問題だ。
この2国の野球のレベルの底上げと、人材の育成に、NPBは力を貸すべきだろう。

日本も国内だけを考えればジリ貧なのだ。この2国と連携を強化し、ともに盛り上げていくべきだろう。




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