日刊ゲンダイ
「文武両道あり得ない」下関国際・坂原監督が野球論語る
盛りだくさんな内容だ。
――(中略)自主性をうたう進学校は増えています。
「そういう学校には、絶対負けたくない。実は東筑(福岡の進学校で今大会に出場)さんとは(現監督の)青野さんの前任者のときに1回、合同練習をしたことがあるんですけど、うちの練習を見た監督から『やってて意味がない』と言われたんです。(下関国際のように)きついことはしていない。賢い子も『意味がない』と、すぐに言うでしょ? (中略)僕ね、『文武両道』って言葉が大嫌いなんですよね。あり得ない」
(中略)
――文武両道は二流だと?
「そういうことです。勉強しているときは『いや、僕野球やってますから』となるし、野球やっていたら『勉強が……』となる。
(中略)
――選手に任せることはしない?
「自主性というのは指導者の逃げ。『やらされている選手がかわいそう』とか言われますけど、意味が分からない」
――昭和の野球ですね。
「他校の監督さんは『楽しい野球』と言うけど、嘘ばっかり。楽しいわけがない。僕は現役のとき、日々の練習で野球が楽しいと思ったことはなかった。『楽しく』という餌をまかないと(選手が)来ないような学校はちょっと違う」

この監督は、教育者でもなければスポーツ指導者でもない、調教師だ。動物を仕込むように生徒に「芸」を仕込んでいるのだ。
自分で考えさせるのではなく、強制的に生徒を絞り上げ、体に覚え込まそうとしている。
昔の軍隊のようでもある。言ってはいないが、鉄拳をふるうこともあるかもしれない。そして「野球馬鹿」を育成しようとしている。
彼らの将来がどうなるかはわからないが、自分で判断して行動したり、自主的に努力するような人はなかなか育たないだろう。また、MLBに行くような超一流の選手は出ないだろう。
この監督は選手を信じていない。また、選手個々のそれなりの目標も尊重しない。ひたすら「勝利」を目指すのみ。
「文武両道」をここまで毛嫌いするのは、自身の経験に照らしたコンプレックスがあるのだろう。
石毛宏典や福留孝介など「野球が楽しいと思ったことはない」と公言する野球人は結構いるが、昭和の野球はそうだったということだ。
この人物の門下からは同じような「野球を世渡りの道具」にする指導者が生まれるだろう。
ただ、この発言はいろいろな意味で貴重だ。
口を開けば「選手の自主性」「教育の一環としての野球」という指導者、学校のほとんどすべてが、一皮むけば「甲子園に行ってなんぼ」「生徒をしごきあげてなんぼ」「ふるいにかけてなんぼ」と思っていることは明白だ。
そうした実態を隠蔽して、口を拭ってきれいごとで世渡りをしている高校球界にあって「言ってはいけない"ほんまのこと"」を口にしたわけだ。
ある意味で勇気ある発言だし、虚飾を鋭く突いた貴重な発言だ。
高野連、そして他のメディアは、教育者にあるまじき、この野球調教師の発言を問題視すべきだ。そして高校球児の生活実態を調べ上げ、実態を公表すべきだ。
「あってはならないこと」が、おおっぴらに存在し、少しも改善されていないことを公表すべきだ。
2004年岩瀬仁紀、全登板成績
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「そういう学校には、絶対負けたくない。実は東筑(福岡の進学校で今大会に出場)さんとは(現監督の)青野さんの前任者のときに1回、合同練習をしたことがあるんですけど、うちの練習を見た監督から『やってて意味がない』と言われたんです。(下関国際のように)きついことはしていない。賢い子も『意味がない』と、すぐに言うでしょ? (中略)僕ね、『文武両道』って言葉が大嫌いなんですよね。あり得ない」
(中略)
――文武両道は二流だと?
「そういうことです。勉強しているときは『いや、僕野球やってますから』となるし、野球やっていたら『勉強が……』となる。
(中略)
――選手に任せることはしない?
「自主性というのは指導者の逃げ。『やらされている選手がかわいそう』とか言われますけど、意味が分からない」
――昭和の野球ですね。
「他校の監督さんは『楽しい野球』と言うけど、嘘ばっかり。楽しいわけがない。僕は現役のとき、日々の練習で野球が楽しいと思ったことはなかった。『楽しく』という餌をまかないと(選手が)来ないような学校はちょっと違う」

この監督は、教育者でもなければスポーツ指導者でもない、調教師だ。動物を仕込むように生徒に「芸」を仕込んでいるのだ。
自分で考えさせるのではなく、強制的に生徒を絞り上げ、体に覚え込まそうとしている。
昔の軍隊のようでもある。言ってはいないが、鉄拳をふるうこともあるかもしれない。そして「野球馬鹿」を育成しようとしている。
彼らの将来がどうなるかはわからないが、自分で判断して行動したり、自主的に努力するような人はなかなか育たないだろう。また、MLBに行くような超一流の選手は出ないだろう。
この監督は選手を信じていない。また、選手個々のそれなりの目標も尊重しない。ひたすら「勝利」を目指すのみ。
「文武両道」をここまで毛嫌いするのは、自身の経験に照らしたコンプレックスがあるのだろう。
石毛宏典や福留孝介など「野球が楽しいと思ったことはない」と公言する野球人は結構いるが、昭和の野球はそうだったということだ。
この人物の門下からは同じような「野球を世渡りの道具」にする指導者が生まれるだろう。
ただ、この発言はいろいろな意味で貴重だ。
口を開けば「選手の自主性」「教育の一環としての野球」という指導者、学校のほとんどすべてが、一皮むけば「甲子園に行ってなんぼ」「生徒をしごきあげてなんぼ」「ふるいにかけてなんぼ」と思っていることは明白だ。
そうした実態を隠蔽して、口を拭ってきれいごとで世渡りをしている高校球界にあって「言ってはいけない"ほんまのこと"」を口にしたわけだ。
ある意味で勇気ある発言だし、虚飾を鋭く突いた貴重な発言だ。
高野連、そして他のメディアは、教育者にあるまじき、この野球調教師の発言を問題視すべきだ。そして高校球児の生活実態を調べ上げ、実態を公表すべきだ。
「あってはならないこと」が、おおっぴらに存在し、少しも改善されていないことを公表すべきだ。
2004年岩瀬仁紀、全登板成績
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コメント
コメント一覧
なるほどなあ、と。
取材によって社会の問題点を白日の下にさらして問題提起するのが
マスコミの役割と考えるなら、この記事はかなりマスコミとしての役割を果たしている。
で、ちょっと関係ないのですが
本文中で話題にあがった福岡の進学校、東筑高校。
ここの監督へのインタビューも、日刊ゲンダイは行っています。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/210984
下関国際ほどでないにしろ、なかなか興味深いです。
東ドイツなどの旧東欧圏で、国家を挙げてオリンピックメダリスト養成に取り組んでいたことと、イメージが被ります。
メダリスト養成に金と人員を無為に費やすのでなく、そのリソースを産業等に振り向けていれば、国の発展という点ではより見返りがあったでしょうに。
どちらにしても、スポーツを行って、強くなって、良い成績を上げるのは、いったい何を目的としてのことなのでしょうか。
監督の指示は絶対と覚えこまされてしまい、完全に思考停止に陥ってしまっている。洗脳されてしまっているといってもいいかもしれません。
彼らが野球をやめたとき一体何が残るんでしょう。不憫でなりません。
折に触れてTVで見た程度でしたが、力負けの印象を持ちました。
下関国際高野球部は明日以降、自分たちに足りないのは何か?を考えるでしょう。
日刊ゲンダイの記事では下関国際野球部は坂原監督就任当初に部員の集団万引きが発覚し出場停止、グラウンド整備や道具の扱いがひどくマナーを教えると辞めていく、という「荒れた野球部」。
自分なりに坂原監督の心のうちを見てみよう(英雄たちの選択っぽいな…)
監督の気持ちとしては「生徒の自主性を重んじる?それは生徒個人が家庭教育でしっかりした躾と生活態度が身について、他人と自分の人格を尊重して、虐めや暴力沙汰など人の道に外れたことは絶対にやってはいけないという倫理観を持ち、野球に真摯に取り組む姿勢が備わっている、という条件があって成り立つもんだ。」ということを言いたかったのだろう。
「家庭での躾や教育がなってない『ヤンチャ』ではすまない生徒が通う、荒れた学校の野球部を指導してみろ!その苦労がアンタらにわかるか!」
荒れた生徒が通う学校で、どう生徒を教育し更生させるか…。
プロ野球だと負け癖があるチームを立て直した西本幸雄、広岡達朗が有名だ。
元プロ野球選手こそ「荒れた学校のヤンチャ野球部」を指導してほしいものだが。
広岡達朗氏にぜひ、幻冬舎plusの連載コラムで坂原監督と下関国際高校の一件を述べてほしい。
確かに、世間に批判を浴びたくないから綺麗事並べてる指導者とか絶対多いですからね(笑)
それなら寧ろ本音で喋れよと思うことがあります。
そういう意味では、重要な話です。
この監督個人の力では、こういった動物調教的な指導でないとできないでしょう。
生徒本人の意識と家庭の躾と教育、学校内部の教職員の取り組みをしっかり立て直して、動物調教的な指導からの脱却、生徒一人ひとりに責任を自覚させて自主性を重んじて考えさせる教育指導に変えていってほしい。
坂原監督とほぼ同じ世代からのたわごとですが。
「学校で理不尽な教育(丸刈り・肩にかかる髪は三つ編み・靴下は指定された色・模様のある靴下禁止など)を受けて、嫌な記憶しかなかった。こんなバカバカしい、無意味な管理教育は自分たちだけで沢山だ!」
90年代前半まで信じられてきた「教育界の非常識」は、もうやめよう。
学生の本分はだな...とか書こうと思いましたがこの学校...偏差値「36」だそうですね。これ最初から学問の方がなきに等しいから元から不可能な学校だったという悲劇的オチです
「格差社会」の一面だね。
今回のタイトルは切れ味バツグンですね。放言や暴言ではなく、「本当のこと」を言っているのが今回の一番の問題ですもんね。
この監督さんの「本音」に対して、教育界・スポーツ界の「建前」で批判することは簡単ですが意味が薄いでしょう。テンプレート的なきれいごとの通用しない「格差社会」の底辺において、曲がりなりにも甲子園出場を果たした監督の言葉だからです。教育界・スポーツ界の「建前」を順守しつつ、格差の下克上を果たす実例が出て来ないとこの監督を説得することはできないでしょうが、そんな奇跡が起きるとはとても・・・
少子化で学校経営がますます難しくなる昨今。「建前」ベースでは『ケシカラン指導者だ』と言いつつも、「本音」ベースでは「現実に即した実に優秀な監督だ。ウチにもほしい」と思う学校経営者は少なくないのでしょうね。
残った部員は監督を信じて、そして甲子園を勝ち取った。
どっちが正解なのか?
20年30年先になれば答が出るかもしれない....。
勝って選手たちに自信を持たせるという事ですかね。監督の手が離れたときにどうなるか、まずは今年の3年生が卒業したときに何を感じるのか野球に対してどう思うのか聞いてみたい気がします。
ずっと昔から皆知ってた(分かってた)事ですやん(笑)
建前上『そうではない』だけで…
時代が変わってきた事に気付けない企業や組織はいずれ退場させられます…
同感です。
高校野球の指導者としてはまだまだ青二才の鼻垂れ小僧です
偽善は美しい、というわけですね。あなたらしい。
偽善吐いてことなかれで済ましてれば下関国際はチームや学校に余計なプレッシャー与えずに戦えたでしょう
そういうのも監督の力量だと思いますが
偽善云々はラガーをめぐる言動に関して見るとあなたからは言われたくはありません
それよりも、インタビュー受けていた対戦相手の前回甲子園出場メンバーOBのヤカラ感が半端でなく、今どき正直だなあ、昭和かよ。と思っていましたが、こちらの方が一枚上手だったんですね。。。
まあ選手がそれでもいいならいいですが一番の問題は
名前を出して他校を一方的に罵倒している点ですね。
この点に関して学校、坂原氏からなんら謝罪の言葉が出ていないのが一番の問題ですね。
即刻坂原氏の監督辞任を望みます。
同様のケースを広尾氏が考える正しい方法で指導した例と合わせて紹介なさると説得力が増すでしょう。
先の記事でも部活が悪いと切り捨てておられますが、ゴールドグラブ氏のご指摘が的を射てると思います。
本当にMLBに日本選手が少ない理由は部活の指導が悪いからでしょうか?
私は経済状況と地理的要因の方が遥かに大きいと思っているのですが。
あなたに指図される筋合いはない。
メディアの情報に対して批評するという手法は確立されている。
この発言そのものが問題だったわけで、今更、何を取材に行くんでしょうか?
ちなみに部活の取材は過去25年、ずっと続けているので、部活の問題点は十分認識しています。
>私は経済状況と地理的要因の方が遥かに大きいと思っているのですが。
あなたこそ、どういう取材に基づいてこの見解に至ったのでしょう?
長くなるので分割します。
他者の発言は批判するのに自分への批判は許さないということでしょうか?
「メディアの情報に対して批評するという手法は確立されている。」
とのことですが、他メディアの情報には当たられたのでしょうか?
発言そのものが問題との逃げにはがっかりです。
あなたは発言そのものではなく指導方法を批判しているのではないですか?
発言では無く指導方法への批判だから部活批判へ展開できるわけでしょう。
指摘されている指導方法が事実なら批判は納得できる部分も多々あります。それだけに、この方は本当にそんな指導なのか?という疑問が湧くのです。
あなたに言わせるとこの方は「教育者でもなければスポーツ指導者でもない」そうですがそれは発言からですか?指導内容からですか?
これが単なる野球好きのブログなら別に構いませんが、スポーツライターでしょう?
プロとして発信しておられるわけですから、発言から想定しておられる指導なのかを確認し、問題があればそれを批判すべきではないですか?
仕事であればしっかりやりますが、私はジャーナリストやライターではなく、個人の感想ですので本件で事実確認=取材をする気はありません。
2016年MLB国籍
ドミニカ共和国149人 ベネズエラ112人 キューバ34人
プエルトリコ27人 メキシコ16人 カナダ13人 韓国9人 日本9人 パナマ8人
2016名目GDPランキング
日本3位 カナダ10位 韓国11位 メキシコ15位 ベネズエラ41位 ドミニカ共和国68人 パナマ76位
NYから首都までの所要時間
ドミニカ共和国約4時間 ベネズエラ約9時間 キューバ約3時間
プエルトリコ約4時間 メキシコ約5時間 カナダ約2時間 韓国約15時間 日本約13時間 パナマ約5時間
よりアメリカと経済格差が大きく、距離が近い所ほどMLBを目指す選手が多いのではと考えた次第です。
反対に部活が問題であるならば比較的アメリカとの格差が少なく、距離も近いカナダと日本が同数程度であり、ドミニカやベネズエラほど人数に差が出ていない理由が分かりません。(仕事ならばここで事実確認を行います。)
もちろん野球人口等も加味しなければならないでしょう。
部活の問題点を指摘されるのは結構ですし、問題も確かに多いでしょう。
しかし部活のせいでMLBで活躍できる選手が少ないと断じるには根拠に乏しいと思いますがいかがですか?
読めばわかるはずですが、私のこのブログは「坂原監督のインタビューに対する感想、批判」です。
そこを起点にして、さらに深く取材をし、この人物がこういう発言をした背景を探るのも一つの方向性ですが、それを発表するとすればブログではなく、著書か商業メディアになります。取材のコストまでかけて、無料で提供しているブログに書くことは普通はありません。
ブログでは日々メディアで発信される情報に対する批判、感想を書いています。それも一つの言論として成立しています。
普通、ブログを読む人は「そういうもの」として読んでいると思いますが?
「教育者でもなければスポーツ指導者でもない」という私の批判に対してどう思うおうと自由ですが、取材をして確認しなければならないことではありません。本人にそれを聞いても、彼は否定するだけでしょうし、確認のしようもありません。
ご存じないでしょうが、プロのジャーナリストで、ブログのためだけに取材をして発信している人はいません。
また、他のメディアに依頼されて取材した内容は、メディアの了承を得ない限りブログで発表することはありません。
部活とMLBの問題。
何の専門家なのか知りませんが、この物の見方は落第だと思いますが。
MLBに選手を多く送っている国は、地政学的に近く、アメリカの経済圏に取り込まれている国が多いのは当然の話です。カナダにはMLBのチームがあります。
日本はアメリカから遠く、MLBに移籍する選手が少ないのもまた当然の話です。
さらに言えば、MLBは国際化を進め、北中米の国の野球界を傘下に収めています。
日本はMLBの影響を受けながらもNPBというトップチームを運営し、独立性を保っています。そして選手の異動を制限してきました。
NPB出身のMLB選手が少ないのは、地政学的問題と、組織間の障壁の問題があるためなのは、間違いありません。
そのことと「部活」の問題を比較すること自体が、ナンセンスです。どちらが大きい小さいは確かめられないし、そもそも論理的におかしい。他国と比較することもできない。
「部活」の問題は、選手の心身の育成面の話です。
下関国際の坂原監督が言うように強制的な指導で、自分で考える能力を養うことができなかった日本の野球選手が、自由競争が激化するMLBでは通用するかどうか、を議論しなければなりません。そのためには、日本の部活の中身を知る必要があると思います。
それをせずに議論することは、少なくともプロの私にはできません。
感想としておっしゃるのは自由ですが「そうですか」としか言いようがありません。