もう10日も前のことではあるが、日本野球科学研究会の第5回大会に参加した。私は昨年、この回に入会している。
野球に関して様々な分野で研究発表を行っている研究者の集まりだ。
学会というほど大掛かりなものではないが、それでも野球に関する専門的な研究にまとめて触れる機会はこの大会しかない。

その様子は、フルカウントで詳細に報告した。

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今、スポーツはさまざまな分野で研究対象になっており、一つの大きなジャンルを形成しているが、野球の研究も実に多岐にわたる。

野球のプレーを力学的に解析したもの、データ解析、フィジカル面への影響を分析したもの、選手のメンタル面の考察、チームワークの考察、指導法、教育法、さらには野球界の組織論まで。
特にポスターの形で展示された46もの研究は、明日の野球を考えるうえで、本当に意義深い。

この会に参加して、多くの研究者と話す機会を得たが、異口同音に懸念を示したのが「野球離れ」についてだった。全国で、野球の競技人口が減少し、チームが成り立たなくなっている。また、野球に対する社会の理解も薄まっている。

研究者たちはそれに対して「何かしなくては」という使命感を持っている。

しかし残念ながら「野球の現場」では、その声は十分に届いていない。研究者の多くは指導者でもあり、自身が所属する学校では先進的な指導を行ったり、普及活動をしたりしているが、それが他の学校やリーグ、機構に波及することは少ない。
野球界は「お山の大将」をたくさん産む。そういう体質を有している。そのことが「わかっているのにどうすることもできない」現状を生んでいる。

この研究会には、多くの野球人も参加している。吉井理人日本ハムコーチは、筑波大大学院で学んだ経験がある。桑田真澄氏は今も東大大学院の研究員だ。さらに、多くの元プロ野球選手が大学院で学んでいる。

1日目の帰り、私は大島公一さんと一緒になった。大島さんは、この春から、吉井理人コーチの紹介で、筑波大学大学院で学んでいる。元日本ハムヘッドコーチの阿井英二郎さんも同期だ。
すでに指導者としての実績もある大島さんが、改めて学びなおそうとしているのだ。
筑波大大学院では、ソフトバンクの工藤公康監督も学んだことがある。こういう一流の野球人が、外側から学問的な厳密さをもって野球を学びなおしているのは、本当に意義深い。
その研究分野は技術論から指導者論まで実に多岐にわたる。
野球界は、上意下達、絶対服従の軍隊みたいな組織だと言われているが、ここに研究者の目線を持った指導者が入ることで内部から改革が進むことを期待したい。

帰りのJRで私と話し込みすぎて、大島さんは降りる駅を間違ってしまったようだ。いい意味で野球選手らしくない謙虚な人柄に、私はいっぺんでファンになってしまった。

こうした野球人の大学院生は、大学から進学した若い研究生とともに学んでいる。野球人の多くは、若いころ野球に明け暮れて「勉強する楽しさ」を知らないままに大人になった人が多い。それだけに、今の生活は新鮮だろう。

「野球離れ」に対する風穴が、この分野からも大きくなることを期待したい。


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