昨日起きた貴乃花部屋の新十両貴公俊(たかよしとし)の暴力事件は、貴乃花親方を完全に失脚させることになるだろう。
昨日、貴公俊は、土俵下の力士溜りに入るのが遅れて、境川審判委員(元小結両国)に注意された。
貴公俊は取り組みで負けて支度部屋に入ると、付け人を殴打したという。
軽く小突いた程度ではなく、握りこぶしで顔を正面から殴り、付き人は出血した。支度部屋には力士とその付け人や床山などの関係者もいる。報道陣もいる。公衆の面前で暴力をふるったのだ。
貴公俊には弁解の余地はないだろう。殴られた付け人は貴公俊よりも年上だったという。

この事件には、背景がある。貴乃花部屋は現在9人だが、このうち関取が4人もいる。
関取になると付け人が必要になる。幕下以下の取的は、風呂敷包みにまわしをいれて場所入りして相撲を取るだけだが、十両以上になると土俵入りのために化粧廻しがいる。場所入りの時はこれを入れた明荷という葛籠を付け人がもって付き添う。
さらに土俵入りなどのタイミングで連絡をしたり、様々な雑用が必要になるため、関取ひとりに付け人は3人程度は必要とされる。
貴乃花部屋のように、取的の数が少ない部屋は、一門の他の部屋から付け人を借りるが、貴乃花親方はこれを拒否し、5人の取的で4人の関取の世話をしていたという。
貴公俊の遅刻は、付け人の不足に起因したものと思われる。おそらく、これに類する小さなミスが頻発していたのだろう。
それに加え、本場所に親方がほとんど顔を出していなかったことも大きかっただろう。貴乃花部屋の力士は孤児のようになっていたのではないか。

貴乃花親方の土俵改革にかける意気込みは素晴らしい。不正を許さない正義感も大したものだが、この人はイデオロギーはあっても、周りを巻き込み、ムーブメントを作るようなマネジメントが全くできていなかった。
その挙句に足もとでこういう事故を起こした。賛同者を増やすことをせず、孤立を選び、孤高の存在のようにふるまったことが、この事件につながったというべきだろう。

日馬富士の暴力に比べれば小さな事件ではあるが、貴乃花は立場上、貴公俊をかばうことができないだろう。最悪の場合、廃業の可能性もあると思う。
確かに貴公俊は馬鹿としか言いようがないが、彼はまだ20歳だ。この責任は監督者たる貴乃花親方にあるといえるだろう。

貴乃花親方による相撲協会の改革に、私は大いに期待していたが、この事件で改革は完全にとん挫した。
残念で仕方がない。

P9160290



年度別チーム第1号本塁打は俺だ!・2 今は無き戦後誕生球団編



私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!