昨夜11時40分から、小澤正修解説委員が「球数制限」に関する議論を解説した。NHKらしいバランス感覚を感じさせた。
小澤解説委員は
高校野球のピッチャーへの球数制限導入の議論が静かに進んでいます。
と言った。そうなのか、私の周囲では議論はかまびすしいが、まだ「静かに」なのかと思った。

3つのポイントを抑える形で解説された。
① 球数制限を巡る経緯と今の動きについて。
平成3年夏の甲子園、沖縄水産の大野倫の773球、去年夏の甲子園、金足農業の吉田輝星の881球を例示して「球数制限」の必要性が論じられているとした。
昨年12月の新潟高野連の「球数制限」の導入を紹介し、日本高野連は、導入へは整備がまだ十分でないとして春からの導入の再考を求める一方、来月、有識者会議を設置し、球数制限を含めたけが予防にどう取り組んでいくか、検討していくことを決めた。と説明。
本格的な議論がようやくスタート地点についた、としている。

② なぜ球数制限の導入は難しかったのか。
アメリカでは「ピッチスマート」が、導入されたが、
日本の高校野球は、部活動であると同時に非常に注目度が高く、潜在能力の高い選手がそろう強豪から、ぎりぎりの部員数で試合にのぞむ学校まで、様々なチームが参加してトーナメントを戦う。
このため、導入した場合、エース級を複数揃えられる、部員数の多いチームが有利になり公平性が保てないのではないか、ファールで球数を稼ぐ作戦をとるチームが出てきたらどう対処するのか、高校野球が通過点ではなくゴールの選手も多く、投げたいと志願する選手の心情を考えたら、悔いの残らないようにしてやりたい、といった根強い声があった。とした。
こうした反論は高校野球の本分を考えれば、ナンセンスとしか言いようがないが、NHK的にはこれらも一応尊重する形をとっている。
注目すべきは馬見塚尚孝医師の意見を紹介していることだ。
馬見塚さんは、怪我の原因は・投球数、・投球の強度、・投球動作、・コンディション、・個人差であり、「球数だけを意識するのではなく、指導者が選手に、練習段階から、投球の強度や、コンディションなど、5つの要素を包括的に考える必要があることを教え、最終的には選手自身が、自ら、けが予防とパフォーマンスの向上に取り組むことができるようなコーチングが求められる」と主張した。
常々、馬見塚さんが言っておられることだ。
「球数制限」に関して、野球界から多くの反論があるが、ほとんどは少年野球の現状をほとんど知らず、自分たちがやってきた野球を肯定するだけの頑迷なものが多い。馬見塚さんは野球選手、指導者でもあり、医師でもある。現状をしっかり把握したうえで「球数制限」に対する反論をしておられる。今後議論を深めるためにも、論者はこのレベルまで知見を高める必要があるだろう。

③問われる意識改革、選手第一主義
新潟県高野連が問題提起した背景には、実は成長期にある小中学生のけがの予防がある、とし、この年代で怪我をした子供が、高校で無理をするとプレーどころか日常生活にも影響を与えるケースもあるとした。
このあたり、少年野球界では常識だが、一般的には知られていない。
そして今、特にジュニアの指導者には、勝利優先から育成重視への意識の転換が求められている、とした。
番組は最後に、DeNA筒香嘉智の
「指導者がよかれと思ってやっていることでも、実際は選手に負担になっていることもある。大人が中心になっていないか。スポーツの価値をみんなで高めていく行動が必要だ」。
で締めくくっている。
論じるに値しないレベルの反論まで取り上げているのはメディアならではの臆病な「バランス感覚」だが「球数制限」の問題を、過不足なく紹介していて、有意義なものだった。

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高校野球のピッチャーへの球数制限導入の議論が静かに進んでいます。
と言った。そうなのか、私の周囲では議論はかまびすしいが、まだ「静かに」なのかと思った。

3つのポイントを抑える形で解説された。
① 球数制限を巡る経緯と今の動きについて。
平成3年夏の甲子園、沖縄水産の大野倫の773球、去年夏の甲子園、金足農業の吉田輝星の881球を例示して「球数制限」の必要性が論じられているとした。
昨年12月の新潟高野連の「球数制限」の導入を紹介し、日本高野連は、導入へは整備がまだ十分でないとして春からの導入の再考を求める一方、来月、有識者会議を設置し、球数制限を含めたけが予防にどう取り組んでいくか、検討していくことを決めた。と説明。
本格的な議論がようやくスタート地点についた、としている。

② なぜ球数制限の導入は難しかったのか。
アメリカでは「ピッチスマート」が、導入されたが、
日本の高校野球は、部活動であると同時に非常に注目度が高く、潜在能力の高い選手がそろう強豪から、ぎりぎりの部員数で試合にのぞむ学校まで、様々なチームが参加してトーナメントを戦う。
このため、導入した場合、エース級を複数揃えられる、部員数の多いチームが有利になり公平性が保てないのではないか、ファールで球数を稼ぐ作戦をとるチームが出てきたらどう対処するのか、高校野球が通過点ではなくゴールの選手も多く、投げたいと志願する選手の心情を考えたら、悔いの残らないようにしてやりたい、といった根強い声があった。とした。
こうした反論は高校野球の本分を考えれば、ナンセンスとしか言いようがないが、NHK的にはこれらも一応尊重する形をとっている。
注目すべきは馬見塚尚孝医師の意見を紹介していることだ。
馬見塚さんは、怪我の原因は・投球数、・投球の強度、・投球動作、・コンディション、・個人差であり、「球数だけを意識するのではなく、指導者が選手に、練習段階から、投球の強度や、コンディションなど、5つの要素を包括的に考える必要があることを教え、最終的には選手自身が、自ら、けが予防とパフォーマンスの向上に取り組むことができるようなコーチングが求められる」と主張した。
常々、馬見塚さんが言っておられることだ。
「球数制限」に関して、野球界から多くの反論があるが、ほとんどは少年野球の現状をほとんど知らず、自分たちがやってきた野球を肯定するだけの頑迷なものが多い。馬見塚さんは野球選手、指導者でもあり、医師でもある。現状をしっかり把握したうえで「球数制限」に対する反論をしておられる。今後議論を深めるためにも、論者はこのレベルまで知見を高める必要があるだろう。

③問われる意識改革、選手第一主義
新潟県高野連が問題提起した背景には、実は成長期にある小中学生のけがの予防がある、とし、この年代で怪我をした子供が、高校で無理をするとプレーどころか日常生活にも影響を与えるケースもあるとした。
このあたり、少年野球界では常識だが、一般的には知られていない。
そして今、特にジュニアの指導者には、勝利優先から育成重視への意識の転換が求められている、とした。
番組は最後に、DeNA筒香嘉智の
「指導者がよかれと思ってやっていることでも、実際は選手に負担になっていることもある。大人が中心になっていないか。スポーツの価値をみんなで高めていく行動が必要だ」。
で締めくくっている。
論じるに値しないレベルの反論まで取り上げているのはメディアならではの臆病な「バランス感覚」だが「球数制限」の問題を、過不足なく紹介していて、有意義なものだった。

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コメント
コメント一覧
→自分で楽しむ価値がないと主張しているようなもの。
見るスポーツとしての価値しかないと自分で言ってどうするの。
そもそも、「日常生活にも影響があるようなリスクまで取らせて『すべてを出させてやりたい』という意見を言うのは何様だ」と、この番組を見ていた配偶者が激怒していました。
○個人差があるから一律の制限はどうなのか
→個人差を見て判断するだけの能力を持った監督がどれだけいるのだろう。個人差を見て判断できるから名将と言われると思う。
誰でも判断が出来る条件で制限しないと、監督の負荷が高すぎる。
率直に言って筒香選手の主張には同意することができません
球数の多さが怪我のリスクのどれくらいを占めてるか、どれくらいの球数制限が科学的に有効なのかエビデンスが不明だからです。
それより投球フォームやボール(の摩擦)、そして登板間隔などのほうが怪我のリスクを占めてると経験的に感じます。
そして、もし球数を制限するのであれば、その前に(筒香選手がいたような)名門校の選手かき集めをまずやめるべきでは、と皮肉も言いたくなります。
筒香選手は「高野連は球児を商品とするな」のようなことを言っておられましたが、球児を(NPBの)商品として見てるのは筒香選手のほうではないでしょうか。
>球数の多さが怪我のリスクのどれくらいを占めてるか、どれくらいの球数制限が科学的に有効なのかエビデンスが不明だからです。
日米で膨大な量のデータが発表され、統計も出されています。「不明」なのはあなたです。勉強してから出直してください。
アメリカのデータは参考になりませんし、日本のアマチュアでそんなデータは持っておりません。
甲子園ドクターの正富隆先生は、過去10年間の高校球児、中学生の投球数と、OCDなど野球肘との相関関係をデータにして、2017年の野球科学研究会で発表しています。
野球肘に関しては、昨年、徳島大学の柏口医師が「野球肘ガイドブック」を出版しています。類書はたくさんあります。
当然、お読みになったうえでおっしゃっているんですよね。
選手や監督が勉強していないから、高校野球はどんどんひどい状況になっています。