フルカウントがノーカットで収録したイチローのインタビューを読み直して「やっぱりだめだ、日本のメディアは」と思った。イチローが話したかったことを質問したメディア、我々が聞きたかったことを聞いてくれたメディアも少なかった。
インタビューの冒頭でこう言うやりとりがあった。

――子供たちに是非メッセージを。
「シンプルだなぁ。メッセージかぁ。苦手なのだな、僕が。(中略)色んなことにトライして、自分に向くか向かないかというより自分が好きなものを見つけてほしいなと思います」

日本のマスコミはこういう質問好きだ。中身のある答えが返ってくるはずがない。民放のアナウンサーでなければ恥ずかしくて言えないようなコメントを期待していたのだろうが。

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インタビューの直前にあった、イチローの東京ドーム一周は、やはり予定されていなかったものだった。そしてイチローにも感慨深いものだった。

――ずっと応援してくれたファンの存在は?
「ゲーム後にあんなことが起こるとはとても想像してなかったですけど、実際にそれが起きて、(中略)なんとなく印象として日本の方というのは表現することが苦手というか、そんな印象があったんですけど、それが完全に覆りましたね。内側に持っている熱い思いが確実にそこにあるというのと、それを表現したときの迫力というものはとても今まで想像できなかったことです」


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イチローはインタビュー中にたびたびいら立ちを見せた。

――開幕シリーズを「大きなギフト」と言っていたが、私たちが大きなギフトをもらったような気でいる……。
「そんなアナウンサーっぽいことは言わないでくださいよ」
――これからどんなギフトを私たちにくれるのか?
「ないですよ、そんなの、無茶言わないでくださいよ。でもこれ本当に大きなギフトで。去年、3月頭にマリナーズからオファーをいただいてからの、今日までの流れがあるんですけども、去年の春で終わっていても。まったくおかしくない状況でしたから」

こういう臭いセリフを公開の場で平気で口にできる神経はどうなっているのかと思う。イチローはそうしたノリには全く非協力的だった。

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――これまで膨大な時間を野球に費やしてきたが、これからその時間とどう付き合っていくか?
「ちょっと今はわからないですねぇ。でも多分、明日もトレーニングはしてますよ」


これはよい受け答えだったといえよう。このあたりに求道者イチローがにじみ出ている。
イチローの信条が垣間見えたのが、以下のやり取り。

――8回にベンチに戻る際に菊池選手が号泣していた。
「いや、号泣中の号泣でしょ、あいつ。びっくりしましたよ。それ見て、こっちはちょっと笑けましたけどね」
――抱擁の時にどんな会話を交わしたのか?
「それはプライベートなんで。雄星がそれをお伝えするのは構わないですけど、それは僕がお伝えすることではないですね」
――秘密ということで。
「それはそうでしょう。だって2人の会話だから。しかも、僕から声をかけているので、それをここで僕が『こんなこと僕が言いました』って、バカですよね。絶対に信頼されないもんね、そんな人間は。それはダメです」


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これもくだらない質問だ。

――キャンプなどでユニークなTシャツを着ていたが、何か心情を表していたのか? 全く関係なくただ好きで着ているのか?
「そこは……もう言うと急に野暮ったくなるから、言わない方がいいんだよね。それはだから見る側の解釈だから。そう捉えれば、そう捉えることもできるし、全然関係ない可能性もあるし。それでいいんじゃないですか?」
――好きに楽しんでいただきたいと?
「だってそういうものでしょ。いちいちそれ説明すると本当に野暮ったいもんね」


これも

――昨日の試合は第1回WBCで日本が優勝した日と同じだったが、それは運命的なものがあったりするのか?
「まぁ聞かされればそう思うこともできるという程度ですかね。僕はそのことは知らなかったですけど」

ただし、このコメントを引き出した可能性はある。

――菊池(雄星)投手が同じマリナーズに入って、去年は大谷(翔平)選手がエンゼルスに入った。後輩たちに託すことは?
「雄星のデビューの日に僕は引退を迎えたのは、何かいいなあと思っていて……もう『ちゃんとやれよ』という思いですね」

最悪だったのがこれ。

――(長々と説明後に)1年目のゲームから今日を思い出しましたか?
「長い質問に対して大変失礼なんですが、ないですね」


この質問者はそのことを誰よりも知っている当人に向かって、イチローデビューのシーンを長々と説明したのだ。馬鹿である。気の利いたコメントがほしかったのだろうが、レベルの低い予定調和には全く乗らずに切り捨てたのだ。

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野球の中身については、この答えが良かった。

――日本の野球で鍛えられたことは?
「基本的な基礎の動きって、おそらくメジャーリーグの選手より日本だったら中学生レベルの方がうまい可能性だってありますよ。それはチームとしての連係もあるじゃないですか。そんなの言わなくたってできますからね、日本の野球では。でも、こちらではなかなかそこは……。個人としてのポテンシャル、運動能力は高いですけど、そこにはかなり苦しみましたよ。苦しんで、諦めましたよ」


最後はこういう形

「お腹減ってきたもうー。結構やっていないですか、これ。今時間どれくらい? 1時間? 20分? あらー。今日はとことんお付き合いしようかなと思ったんですけどね。お腹減ってきちゃった」
――プロ野球人生振り返って、誇れることは?
「これ、先ほどお話しましたよね。小林君もちょっと集中力切れてるんじゃないの? 完全にその話したよね。ほらそれで1問減ってしまうんだから」


本当は2時間の予定だったようだが、同じような質問が相次いだこともあって、85分で打ち切りになった。

イチローが質問に答えるかどうかは別にして、私なら、262安打を打った時と、今の打撃の感覚の違いとか、手ごわかった投手、対戦して嬉しかった投手、ライバルのマウアーやオルドニェスのこと、イヴァン・ロドリゲスとの盗塁争い、外野手として最高のプレー、日本人投手とアメリカの投手の違い、などなど聞きたいと思ったが、そういうのはワイドショーやニュースでは取り上げられない。

要するに歯の浮くような薄っぺらい「感動」をメディアは期待したが、イチローはいっかなそれに乗らなかったということだろう。




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