高校野球の有名監督の考えをまとめて読む機会があった。「今時の高校球児」についての彼らの見方は一致している。
曰く「集団行動ができない」曰く「甘やかされている」曰く「言われたことができない」曰く「根性がない」、名監督は口をそろえて「それは時代だから仕方がない」という。そういう人間に育てた親や教育者に責任があって、子供のせいではないという。そして「俺たちが鍛えなおしてやろう」というのである。読み進めるうちに、むかむかがこみ上げてきた。

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昔と今を比べれば、今の子供のほうがはるかにレベルが高い。ネット環境を駆使していろいろな情報を入手できるし、学校の枠を超えた友達も作っている。世界中の様々なトレンドを知っているから視野も広い、リアルではないかもしれないが経験値も高いから、ものごとに直面しての対応力も高い。感情表現も、昔とは比較にならない。
いじめや非行が横行しているように言うが、犯罪率は昔よりも低い。今の若者層のほうが知力もリテラシーもはるかに高い。
そのうえ、彼らはこれから日本人が経験したこともない世界に出ていくのだ。終身雇用も年功序列なく、社会保障さえ十分でない社会、国際的な競争にさらされる社会。おそらくここ20年くらいの間に、先進国を巻き込んだ戦争も起こるだろう。
そんな未来に旅立とうとしている若者を見下して「教えてやろう」とは、どういう料簡なのかと思う。

今の老人世代は、戦後の高度経済成長期の果実を、若者には渡さず独り占めして食べてしまおうとしている。
辛抱して一生懸命働いていれば必ず報われた気楽な人生を歩んでおきながら、多難な道を歩もうとする若者に対して極めて冷淡で、馬鹿にしている。想像力も働かず、嫌な現実も見ようとしていない。トランプをはじめ、世界中で起きている排他的な極右勢力は、利己的な老人層の支援で力を得ているのだ。
昔の苦労とは「上の言うことを聞いて耐え忍んでいれば、報われる」程度の低次元のものであり、今後の「努力しても全く報われない」「答えがない」時代の苦労とは比べ物にならない。

高校野球の有名監督の多くは、昭和の時代に身に着けた野球を、そのまま続けている。「今どきの高校生」のために、多少物腰を柔らかくするなどの改変は加えているが、今の時代に即応したものではない。今の世の中にどんな変化が起きているかを正視しようとしていない。
丁稚を仕込むようなレベルの野球、しつけ、処世術を教え込んだところで、ブラック企業で下積みにあえぐのが関の山である。
今の世の中に必要な「ライフスキル」は、年寄りの指導者の頭の中にはない。

「球数制限」の話も、既存の指導者の「俺達が学んだ時代のものが一番」という時代錯誤と知的怠惰で進んでいないのだ。

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我が家にも20代なかばの若いのが二人いる。彼らを見てなにやらむかつくのは、私がおやじになったからだ。若さへの嫉妬と、子供に追い越されたことへの悲哀がないまぜになって「けしからん」と言いそうになっているのだ。そこに正当性はない。

時代は大きく動いている。年寄りにできることは、その前線にたつ「若者」を信用し、彼らの努力を評価してやることだ。少なくとも、邪魔をしないようにすべきだろう。
とっくに過ぎた「昭和の時代」の陋習を押し付けるなど、とんでもない。


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