大坂なおみの件で日清食品が世間の非難を浴びるのは2回目だ。
1回目は、2019年1月に出したPRアニメで、大坂の肌の色を白っぽく描いて、本人が不快感を示し謝罪したという件だ。
そして2回目は、今回、カップヌードルの広告で「原宿へ行きたい」というキャッチフレーズを立てて、大坂を「おしゃれでかわいい女の子」と表現した件だ。

大坂なおみは、全米オープンで黒人の人種差別反対を明確に訴えつつ2回目の優勝を果たした。BLMへの支持を訴えるアスリートの先頭に立つことを明言し、「モノ言うアスリート」のリーダーとしての姿勢を打ち出している。

ナイキなどは、彼女の姿勢を全面的に支持しているが、彼女の日本でのスポンサーである日清食品は、それに触れることなく「かわいい大坂なおみ」を表現したのだ。
日清食品への非難は「失望」だろう。この企業はインスタントラーメンを世界に普及させた。企業スローガンは「EARTH FOOD CREATER」であり、地球レベルで「食を創造する」企業を標榜している。
であるならば世界で起こっていることはすべて無縁ではない。BLMの問題も日清食品の問題であり、そのことについて所属アスリートである大坂が強く訴えたことについて、看過することはできなかったはずだ。大坂なおみの優勝に対する称賛の中には「何事にも屈することなく自らの考えを主張しつつ勝利した女性アスリート」という部分が多分に含まれていた。

しかし日清食品は、大坂なおみの現時点での最大の「強さ」「意味」から目をそらして、「かわいい」で彼女を表現しようとしたのだ。

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日本の国では「アスリートが政治的発言をするのは良くない」という、西側自由主義圏では極めて特殊な観念が大きくのさばっている。
このあたり、一番似ているのは日本人が大嫌いな中華人民共和国だ。
日清食品は、そういう国内の空気に気を使ってあえて「かわいい」を打ち出したのだ。こうした姿勢の日清食品に、大坂なおみをスポンサードする資格はない。

日本の国では「かわいい」は無敵である。前政権の汚点を隠ぺいするためだけに新総理になった71歳のさえない男性も「かわいい」、悪徳銀行家を演じる歌舞伎役者も「かわいい」、どこにでもいる犬や猫の動画も「かわいい」。馬鹿の一つ覚えである。
本当はぜんぜんかわいくないものまで「ね、かわいいでしょ」と言われれば、すぐにうなずく。

本質を見たくない、議論をしたくない、現実から目をそらしたいという日本人の「弱さ」「刹那主義」が、何でもかんでも「かわいい」で済ます風潮を生んだといえる。

毎日「かわいい」と言っているだけでは世の中は変わらない。「かわいい」しか言わない日本人は、そのまま立ち枯れていくだろう。


中日・ナゴヤ球場・ナゴヤドーム・シーズン最多本塁打打者/1950~1988、2007~2019

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