毎日新聞
男子個人総合で五輪2連覇の内村航平(リンガーハット)は体操国際大会の閉会式で「(オリンピックが)どうやったらできるのか皆さんと考え、どうにかできる方向に変えてほしい」「どうか、できないというふうに思わないでほしい」。と来夏の五輪開催へ理解と協力を呼びかけた。

内村のこの言葉は、私には違和感でしかない。意地の悪い解釈をすれば
「君たちは、アスリートの僕たちの活躍を見たいだろう?だったら東京オリンピックが何とか開催できるように、君たちが考えてくれよ」
と言っているように聞こえる。

オリンピックは単なる競技会ではない。国家や都市が巨額の税金を投じて競技施設を新たに建設し、世界からアスリートを招いて行う世界的なイベントである。
その目的は「アスリートが競技をする」にとどまらない。世界からアスリートだけでなく国家の首脳が集まることによって、世界の協調、連帯を促進する役割もある。オリンピック外交という言葉もある。
また、オリンピックのためにインフラ整備や再開発が進み、都市が近代化する。さらには景気が浮揚する効果もある。
これらの複合的な目的のために、国家予算を投じてオリンピックは行われるのだ。



納税者たる国民は「アスリートがうれしそうに競技をしているのを見て自分たちも幸福を感じる」ためだけにオリンピックの開催を承諾するわけではない。
自分たちが関係した巨額の税金を使うからには、自分たちの経済活動や生活にも良い影響をもたらしてほしいと思う。

38a5c566d33bafc07f2cf2b9d444f807_m


1964年の東京オリンピックでは、開催に合わせて東海道新幹線が開通し、高速道路が整備され、国際クラスのホテルが建設された。
また、開会式の行われた10月10日は「体育の日」となり、全国の学校での体育教育が充実した。さらに、テレビによるスポーツ視聴が普及した。

その後の長野、札幌のオリンピックでもウインタースポーツの振興が進み、都市のインフラも整備された。

箱もの行政の弊害はあったし、自然環境の破壊などマイナス要因はあったにしても、これまでのオリンピックは、単なるスポーツ競技会を超える波及効果があり、総体として納税者たる国民はオリンピックの開催を是認したわけだ。

2021年の東京オリンピックも、東京や競技会場となった市町村ではインフラ整備が進んでいる。それらは納税者の暮らしを少しは豊かにするかもしれないが、新型コロナ禍で日本のみならず世界が大混乱している中、国際的な大イベントを強行するメリットがどれだけあるだろうか?
来年前半にはワクチンの接種が始まると言われているが、東京オリンピックが開催される7月までに新型コロナ禍が完全に終息する可能性は極めて小さい。

内村はアスリートである以前に、一市民、一国民として「東京オリンピックの是非」を考えるべきだろう。

この話は「アスリートファースト」とは次元の異なる話だ。少々国民が迷惑を蒙ろうと、東京オリンピックを勢いでやってしまえ、と思っている向きは、経済界やメディアにも多いように思うが、そんな話ではないと思っている。

スポーツ、オリンピックは誰のためにあるのか、原点に戻った議論が必要だ。


夢の打点王レース/中田翔・浅村栄斗vs11人の打点稼ぎ人

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!