日本の大手メディアが「言論の意味」や「自分たちの責任」について自覚がないことは、これまでも重々述べてきたが「言論の危機」はいよいよ身近に迫っているという認識を持たざるを得ない。
中華人民共和国は「言論の自由」がない国とされているが、おそらく中国に住む多くの人々は「そんなことはない」「我々は自由だ」と反論するだろう。
新疆ウィグル自治区や香港などを除き、中国政府は、表立った言論弾圧を行っていない。アメリカなどで生まれたSNSの使用はできないが、人々は中国製のSNSで自由に発言している。そして反政府的なコメントをしても、ほとんどの場合、当局に呼び出されたり、言論を制限されることはないのだ。
そうしたコメントは、発信されても「いいね」などの反響はほとんどない。だから発信者は「世間はこの話題に関心がないんだ」と思って引き続いての意見発信をやめてしまうことが多い。そしてその発信はいつの間にか消えてしまう。
中国当局は「問題発言」を見つけても、一度や二度では発信者を咎めない。ソフトな形で発言を埋没させてしまうのだ。
またSNSやメディアは政府当局に忖度して、問題発言を自主的にチェックして掲載しないようにしている。
つまり、中国国内で普通に生活している人は「言論が抑圧されている」という実感はほとんどないのだ。もちろん、何度も反体制的な発言を繰り返す人は当局にマークされ、就職や居住、移動を制約されるが、そのことが一般の人々に知られることもない。

さらには今、中国で人気の職業になりつつあるのがSNSなどネットで発信される情報を検閲する「ネット世論分析師」だ。2013年にできた国家資格だが、この資格を得た人が自らのビジネスとして他の人の言論を検閲し、規制をかけているのだ。今数百万人がこの国家資格を持っているとされるが、「民が民を監視し、言論を封じ込める」巧妙な仕掛けができつつあるのだ。

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私が一番危惧するのは、今の日本は、中華人民共和国のきわめて高度な「言論統制」のシステムと、親和性が高そうだということだ。
新聞、テレビなど今の大手メディアは、頼まれもしないのに政権や企業に忖度して、伝えるべきものを十分に伝えていない。大きなスキャンダルは雑誌やネットが掘り出してくる。大手メディアは後追いで情報発信するだけだ。
権力やスポンサーやネット民などを怖がって、勝手に遠慮、自粛する体質が染みついている今のメディアには「言論表現の自由」「民主主義の守り手」という自覚は全くない。

私が見聞きするスポーツのような卑近な世界でも、大手メディアは「ファン目線でお伝えをする」ことが使命だと勝手に勘違いして、くだらないやりとりを発信するだけだ。スクープやスキャンダルなど世の中に波紋を投げかけるような情報はほとんど発信しなくなった。

中華人民共和国の日本への進出はすでに始まっているが、もう少しすれば「中国の悪口は全く言わない」メディアが出てくるだろう。特に経営が苦しい新聞社、今でも聖教新聞の印刷を請け負っている毎日新聞や、地方新聞などの新聞社は、やすやすと中国の軍門に下るだろう。

そして雑誌やネットメディアは締め付けを食らう。記者クラブ系の大手メディアはただでさえも、その他のメディアに押されて旗色が悪いから、雑誌、ネットの言論界からの締め出しには、喜んで協力するはずだ。

そして、今、勇ましく中国、韓国を叩いている右派の政治家や評論家は、いつの間にか他の標的を叩くように方針転換すると思う。彼らは民主主義への危機感から中国を叩いているのではなく、ネトウヨなどへの受け狙いや、党派的な対立で叩いているだけだ。中国が、何らかの利得をもって抱き込むことはいとも容易いと思う。

こういう感じで、我々は少しずつ「目、口、耳を閉ざされた国」の民になるのではないかと思う。国家安全保障の危機は、こういう地味な姿で我々に迫っているのだと思う。



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