高梨沙羅というアスリートは本当に運がないと思う。ついに金メダルはとれないままに終わるのかもしれない。ところで、彼女がメイクをすることに対して「チャラチャラしている」とか「メイクしている暇があったら練習しろ」などの批判があるという。
こういう批判が出てくるのは、彼女が10代前半から有名なアスリートだったことと関係があるだろう。
日本では、中学生が濃いメイクをすることはあまりない。ましてや彼女は地方の出身であり、そういうメイクをしている中学生はいなかっただろう。
それから10年、高梨沙羅は立派な成人、社会人であり、自分の好きなメイクをすることに何か問題があるとは思えない。

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この手の批判は匿名で行われるのが常だ。くだらない人間ばかりだとは思うが、その根底に
「スポーツ選手はわき目も振らずに一生懸命練習しているはずだ。そんなことをする余裕はないはずだ」
「高梨沙羅は、有名になって調子に乗っている。スポーツ選手としてけしからん」
という固定観念があると思う。

カビの生えた、昭和の価値観ではあろう。
「巨人の星」では父一徹にしごかれまくって育ってきた飛雄馬が、巨人に入ってライバルのオズマから「お前も野球ロボットだ」と言われたことにショックを受け、アイドル・オーロラ三人娘のルミと付き合うシーンがあるが、飛雄馬はゴーゴーを踊ることもできないのだ。

当時のスポーツ選手に対する観念は、そういう純朴で、スポーツしかない知らない求道者みたいなものだったのだが、今のアスリートの生活は多様だ。

大谷翔平のように野球中心の生活を送っているアスリートもいるが、多くのトップアスリートは、趣味やファッション、恋愛を楽しんでいる。自らの才能と努力によって得た報酬やステイタスを、果実として楽しんでいる。当たり前のことではある。
大事なことは、大谷のような生活も、高梨や多くのアスリートのような生活も「自分で選んだ」ということだ。

昔のスポーツ選手は「上の人の言うことを聞いて」練習し、生活も指導者に管理されていた。しかしそういう選手は、レベルが上がると「伸びない」ことが明らかになっているのだ。

今のトップアスリートは、練習や、スポーツのスタイルも、そして生活や趣味も、すべて「自分で選択し、自分の責任で実行している」。これが重要だ。大谷のライフスタイルも、高梨のライフスタイルも「自分で選んでいる」ことが大事なのだ。

15歳で国際大会に出てから10年、レギュレーションも様々に変化する中で、トップアスリートの地位をキープしてきたのは驚異的だ。彼女が誰よりも競技を愛し、才能をさらに飛翔させるような練習をしてきたからこそ、今があるのだ。

「メイクしている暇があったら練習しろ」という人間は、本当の努力も、本当の勝負も経験したことがない、つまらない連中だと断言してよいと思う。

今回の失格で、高梨はまた「チャラチャラしているから失格になるんだ」という匿名の非難を浴びるだろうが、そうした非難は彼女のためにもスポーツのためにもならない。日本にはこんなにつまらない人がたくさんいるのだ、と思うだけだ。

彼女が今後、どんな人生を歩むかは知らないが、長い期間、美しくて素晴らしいパフォーマンスを見せ続けてくれたことには、感謝しかない。



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