育成制度を最も積極的に使っているのは、巨人とソフトバンクだ。育成ドラフトは、この2球団の独壇場になる。
しかし、その運用の仕方は微妙に違う。ソフトバンクは3軍を編成し、大学、独立リーグ、社会人などと交流戦をたくさんこなして、その中から上で通用する選手を掘り起こす。千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成はじめ育成から這い上がった選手は数多い。今も埋年育成上がりが主力級になっている。

日本のドラフト、スカウティングは精度が低い。上位指名でとっても泣かす飛ばずで終わる選手が沢山いる。それはスカウトが人脈やコネなど情実に流されることが多いこともあるが、同時にアマ球界が選手を大事にせず、アマにいる間に故障持ちになったりピークアウトすることが多い事も一因だ。
育成枠の選手は、アマ時代にドロップアウトするか、本格的に鍛えられていない選手が多く、確率は低いが、磨けば玉になる素材が一定数いるのだ。それを見つけるのが、育成制度の主眼であり、ある意味だいご味ともいえよう。

巨人でも山口鉄也、松本哲也と制度の始まったころは、育成上がりでも目覚ましい活躍をした選手がいたが、その後はぱっとしない。3軍も編成し、試合も行っているが、ソフトバンクに比して、明らかに見劣りしている。いろいろな事情があるだろうが、ソフトバンクの編成が首尾一貫していて、一本の方針に貫かれているのに対し、巨人はいつの時代もいろいろな考えを持つ人がいて、思惑が交錯し、育成に関する考え方も揺れ動いていることが大きいだろう。

昭和の時代、有望株を他球団に取られないためにドラフト外で入団させたり、練習生にしたりする球団があった。西武がその代表格だったが、巨人も新浦壽夫、江川卓などをドラフト外で入団させている。1990年にドラフト指名選手の上限数が増えるとともにドラフト外、練習生は廃止された。育成枠はこれとは違うが、一度獲得した選手をいろいろな事情で70人枠から外す際に、他球団に取られないために保有しておくための「方便」として使うようになった。人的補償枠から外すためにも育成が使われるようになった。これは本来の「育成」とは違う目的だ。

Kajitani-G


「育成」をこんな風に使い始めると、制度はゆがみ始める。同じ育成チームにいろんな立場の選手が混在するのは良いことではない。巨人の「育成」は、選手の構成も目的も一枚岩ではない。そのこともあって、人材が育たないのだろう。おそらくはチーム内で「育成はおまけ」のような上下関係の意識も芽生えていると思われる。

ソフトバンクは今オフに4軍を作った。「すそ野は広い方が良い選手が出てくる」というマイナーリーグの原則によるが、巨人は育成精度を依然として「とりあえずいろんな意味で確保しておきたい選手を入れておく」合切袋のように使っている。

今季、巨人はストーブリーグで全滅しそうだが、その背景には「育成制度」の粗雑な扱いに象徴されるような「選手を大事にしない体質」がにじみ出ていることがあるのではないか。



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1982・83年松沼博久、全登板成績

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コメント

コメント一覧

    • seriseri
    • 2022年11月24日 08:19
    • 育成契約が事実上のマイナー契約となっていることはありますね。
      個人的にはやはり支配下から育成に変更する際に、実質的に他球団が獲得できないシステムとなっていることがこの用法が多い理由だと思っています。
      必ずウェーバーにかける、支配下から翌年の契約を提示しないいわゆる戦力外通告をした場合には育成契約を含めて何週間かは契約を提示できない期間を設けて他球団の話を聞く機会を設けるなどがあれば良いと思うのですが…。
      また、実質的に代理人が入れないので、法的・契約的なところはどうしても選手サイドが弱くなってしまい球団主導になってしまうところもあるのかと思います。
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