危機感を全く感じないではないが、日本のスポーツ紙はもはや回復不能の重病人になっている。
新聞協会が調べた毎年10月のスポーツ紙の合計部数の推移

Sports Paper


22年前には630万部もあったのだ。日本の世帯数は4800万台だから、8世帯に1つはスポーツ紙を取っていたことになる。実際にはスポーツ紙は駅売りだからこの数字は現実的ではない。またスポーツ紙の部数は広告代理店向けの公称であって、実際にはそれより少ない。
とはいえ、今世紀の初めにはまだスポーツ紙を読む人はいたということだ。

しかしそれから坂道を転がり落ちるように部数が減少して、2019年に300万部を割り込み、恐らく今年は200万部ぎりぎり、来年には100万部台になる。

このままいけば7年後にはスポーツ紙は日本から消えてなくなることになる。

一般紙も厳しい状況だが、スポーツ紙はさらに深刻だ。2000年を1としたスポーツ紙と一般紙の減少率の推移。

Sports Paper Ippan


一般紙も減少傾向が続いているが、それでも2000年の64.7%にとどまっている。スポーツ紙は37.6%にまで落ち込んでいる。
今、見ておかないと数年のうちにスポーツ紙はなくなってしまう。

スポーツ紙の現場にも危機感はある。私はスポーツ紙記者に「新聞取ってくれ」とよく言われる。またスポーツ新聞社を退職する人も多い。今のネットのスポーツメディアの多くは、スポーツ紙を退職した人が創設、運営している。
しかし、スポーツ紙自身が紙面の内容を変えたり、新たなマーケティングをするなど、改革をしている気配はほとんどない。

それはスポーツ紙が一般紙が発行しているか、その子会社であり、経営面で支援を受けていることが大きい。

日刊スポーツ=朝日新聞、スポーツニッポン=毎日新聞、サンケイスポーツ=産経新聞、報知新聞=読売新聞、デイリースポーツ=神戸新聞、中日スポーツ=中日新聞、西日本スポーツ=西日本新聞、道新スポーツ=北海道新聞。

一般紙も苦しいが、メンツにかけてもスポーツ紙をつぶすわけにはいかない。

一般紙では電子版化が進んでいる。系列の放送局もある。また不動産などの資産を持っているので、不動産業、住宅販売など経営多角化もできる。一般紙はなかなか倒産しないだろう。そしてスポーツ紙は寄生虫のように生き延びることになる(すでにそうなっているかもしれない)。
恐らく、スポーツ紙は部数減がさらに進めば親会社に吸収されるだろう。

親会社を持たない東京スポーツは大リストラに踏み切った。また餃子を売るなど副業も始めている。

実質的に「存在意義がなくなっている」スポーツ紙だが、記者は「運動記者クラブ」の会員として、プロ野球をはじめ多くのスポーツ界に優先的に取材をする権利を有している。
しかしその権利は健全に行使されることはない。スポーツ団体側と癒着して、談合みたいな記事を書いている。

雑誌メディア、我々のようなフリーランスは、スポーツ紙、一般紙が十重二十重に取り巻くその後ろから取材源にアプローチすることになる。「文春砲」はじめ、雑誌メディアは生き残りをかけて、激しい競争環境で生きている。新聞メディアとは全く異なる状況にある。

一般紙も苦しいのは間違いないから、スポーツ紙を手放す決断をするときがくるだろう。その時に単独で生き残ることができるスポーツ紙はいくつあるだろうか?



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コメント

コメント一覧

    • Bump
    • 2022年12月01日 14:19
    • 毎朝、スポニチと日刊の2紙を買っています。
      そのうちコンテンツを選んでダウンロードしたりするようになるでしょうか?
    • オリオン座
    • 2022年12月01日 14:30
    • 毎日新聞はむしろ子会社のスポーツニッポンに飲み込まれるような形で持株会社の傘下になりましたね。
    • 広尾 晃
    • 2022年12月01日 14:43
    • Bumpさん

      それは筋金入りですね。記事ごとのDLになればいいですが、Webでの定期購読になるかもしれませんね。
    • 広尾 晃
    • 2022年12月01日 14:43
    • オリオン座さん

      毎日新聞はスポーツ紙より経営状態が悪いかもしれません。
    • ボラーチョ
    • 2022年12月02日 12:00
    • 西日本スポーツは来年3月で紙を廃止してウェブ版だけになることが発表されました
      いずれ他紙もそうなるのでしょうか
    • 広尾 晃
    • 2022年12月02日 13:17
    • ボラーチョさん

      ウェブ版は今もありますが「定期購読」する人がどれだけいるかでしょう。実際には記事のばら売りができればいいところでしょう。
    • ボラーチョ
    • 2022年12月02日 15:10
    • 無料で読める記事(内容はともかく)があふれているインターネット上で生き残るには定期購読より広告収入に頼らざるを得ない気がします
    • 広尾 晃
    • 2022年12月02日 15:41
    • ボラーチョさん

      そうなんですが、そうなると雑誌メディアなどと競合しますから、難しくなりますね。コンテンツとしては雑誌メディアの方が圧倒的に過激ですから。
    • シューツヴァイ
    • 2022年12月03日 21:00
    • 最近のスポーツ新聞はコンビニ売りがメインになっているようですが、コンビニでも毎日大量に売れ残っています。
      ですから、発行部数と実売部数もだいぶ乖離しているということですね。
      一般紙であれば、いわゆる「押し紙」と呼ばれる水増しで広告料金の吊り上げやチラシ広告による利益を得られ、新聞社と販売店にメリットがあると思うのですが、スポーツ紙の場合にはどちらも期待できません。
      それなのに水増しするメリットがどこにあるのか…不思議です。
      コンビニには押し紙どころか、金を払って置かせてもらっているような気がします。そうでないとコンビニにメリットはないでしょうし。
      なんにしても、スポーツ紙の水増し問題にはかなりの闇を感じるので、ぜひとも広尾さんに取材をしていただきたいです。
    • 広尾 晃
    • 2022年12月03日 21:10
    • シューツヴァイさん

      私は広告屋が長くて、新聞広告や折り込み広告に出稿していたので事情は知っています。広告は、1部当たりの広告費×部数で、掲載費、広告費が決まるので、部数が多い方が売り上げが上がります。

      新聞の部数はABC協会と言う団体に申請した数字が基本になります。しかし一般紙は押紙、スポーツ紙は駅売りの売れ残りの廃棄があって、正確な数字ではなくなっています。
      業界ではもう常識になっていて、それが分かって出稿していますけどね。
    • zoohiko
    • 2023年01月19日 18:01
    • スポーツ新聞社がこんな時代にも悠然と見えるのは、一般紙親会社の「廃刊にはさせない」プライドが大きいのですね。いまのところ朝刊スポーツ紙の廃刊・休刊はまだ出ていない。第一号は避けたい、というのもあるのでしょうか。
      しかしこの記事にもある様にどう考えても存在意義が見出せなくなっているのも確かで、記者クラブの「横並び提灯記事」を、サブスクでカネ払ってまでネット購読する層が今後増えていくとは到底考えられない。やはり前途は多難かと…。
    • 広尾 晃
    • 2023年01月19日 18:13
    • zoohikoさん

      今日は週刊朝日の休刊のニュースが出ていましたが、新聞メディアの未来は暗いですね。
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