昨日は「NIIGATA野球サミット2022」の取材をした。新潟は冷たい雨が降っていた。サミットの開催は2018年以来だが、おそらく中央の野球界はちょっと警戒しながら注視していたはずだ。
前回、2018年の大会では新潟県高野連の富樫信浩会長が「高校野球に球数制限を」と提言をして大騒ぎになった。この年の夏の甲子園で吉田輝星が初戦から決勝戦まで投げ抜いたことで「球数制限」議論が起こっていたのだ。
翌春には県内の高校野球で適応すると発表。このとき、富樫さんに話を聞いたが、いかにも新潟県人らしい重厚、篤実な人で、信念は固かった。慌てた日本高野連は、「投手の障害予防に関する有識者会議」をつくり、富樫さんもそのメンバーになって議論を行って、翌年「7日500球」という規則を設定したのだ。

その富樫さんは今回はサミットを主催する新潟県野球協議会の会長になっている。「今年は何を言い出すのだ」という感じだった。パネラーとして参加した新潟県野球協議会の石井智雄副会長や、日本ハムの大渕隆スカウト部長などはいろいろ考えがあったようだが、今回は目立つなメッセージはなかった。

IMG_5536


メインスピーカーは益子直美さん。「怒ってはいけないバレーボール大会」を開催するまでの経緯を話した。56歳だそうだが美しい。イベントが終了して囲み取材で質問もしたが、受け答えも素晴らしくて賢い人だなと思った。

益子さんの後、大渕さんと日本スポーツマンシップ協会副会長の高橋正紀さんへの囲み取材となって、地元テレビ局が「新潟県は甲子園勝利数が全国最小だが?」と言う質問をした。春夏通じて31勝73敗は、富山の37勝79敗2分を下回り全国最下位である。
髙橋さんはサッカー畑で新潟県人ではないから、聞かれても困っただろうし、大渕さんは「野球改革」の提唱者だから「何を言うのか」という気持ちだっただろう。

新潟県は「球数制限」の発信源だ。それだけでなく少年野球から高校、大学、社会人まで加えた「野球協議会」を全国に先駆けて作ったし、運動器の10年・日本賞を受賞した「野球手帳」も制作している。私など全国屈指の「野球先進県」だと思っているが、「甲子園で勝てない」だけで、あたかも「国力がない」かのように騒ぐのだ。

そういえば、金足農の吉田輝星の活躍は、元をたどれば秋田県議会で「なぜ秋田県勢は甲子園で勝てないのか」という質問があったのがきっかけだ。これを受けて秋田県高野連が有望な選手を学校の枠を超えて支援し、神事努さんなど一流のアナリストを招へいして指導をした。金足農が甲子園に出たときは、秋田県高野連は「高校生が行ってもよい、美味しい焼き肉屋のリスト」まで作成したと言う。

甲子園と言うのは、本当に麻薬だと思う。たかが高校生の部活のはずが、あのマウンドに立って大声援を浴びると、世界が変わってしまったように思うのだ。テレビでも大々的に取り上げられるから、地元は大いに盛り上がる。
そういう経験をしていない県は、後ろめたい気持ちになる。「うちだけが取り残されている」と思ってしまう。特に地方は中央にコンプレックスがあるから焦燥感を持ったりする。

しかし新潟はそういう次元ではない「野球改革」を率先して行っている。だからわざわざ行ってまで取材する価値があるのだ。
地元メディアは、そのことについて密着取材してきたはずだが、それでもこんな低次元の質問をするのだ。

もちろん純粋な記録としての高校野球の比較は、私だって記事にもするし、野球ファンの興味の対象にはなる。しかし歴史的なその数字と「野球界の現状」は、関連性がない。むしろ強い県ほど野球界の荒廃が進んでいる。

野球先進都道府県と言えば、大阪にとどめを刺すだろうが、大阪府は10年前と比較して高校野球競技人口は30.3%も減っている。これは全国で3番目に悪い数字だ(新潟は23.7%減で30位)。

甲子園でいくら勝ったって、野球の競技人口は増えない。がつがつ勝つことばかり考える野球に将来がないことをみんなが気づき始めているのだ。
甲子園で強い地方は「成功体験」が忘れられないから、中々変わることができないのだ。甲子園の勝利数が多い地方は「野球後進県」と言ってもよいのではないか。

甲子園で何勝した、みたいなのは「その県がどんな野球をしているか」をは関係がない。古臭い「昭和の価値観」だと言うことを認識すべきだろう。



NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!

コメント

コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット