「野球をやったことがないくせに」と言うコメントをときどき貰う。その時にいつも思うのは「野球をやっている」とはどの程度のことを言うのか、と言うことだ。
私は「野球をやったことがない」が、それは「野球と言う競技をしたことがない」ということではない。小学校低学年から草野球をしていたし、中学では部活でソフトボールをしていた。高校は甲子園の優勝校だったが、私は「生物部」に入って休み時間はテニスボールで野球をした。軟球で草野球もしてきた。大学でも草野球をしたし、卒業後に勤務した上方落語協会では、昼間から落語家たちと野球をした。年間50試合くらいした時期もあった。一般企業に入社後も自分で野球部を作って草野球をしてきた。ユニフォームも作った。
つまりずっと野球をしてきたが、それをもって「野球をやったことがある」とは言わないだろう。一度も硬式球をさわっていないし、指導者について教わったこともないからだ。

IMG_1528


日本で「野球をやったことがある」とは、少なくとも高校の硬式野球部に所属しているレベルだろう。
そこで身体を鍛え、走攻守専門的な指導を受けた経験があることが求められる。
さらに言えば大学でも野球をしていればなお良い。「野球同好会」ではなく「体育会硬式野球部」で野球をしたことがある人だ。高校大学と7年間野球をすれば、草野球選手とは全く別の次元の野球選手になる。体力でも技術でも「別物」になる。
それとともに「体育会系野球部」独特の「作法」「文化」を身につける。「指導者、先輩に対しては絶対服従」「後輩は奴隷も同じ」「大声であいさつをする」「喫煙する」「時には暴力も振るう」みたいな。

社会人野球やプロ野球には、高校大学で「野球をやった」人しか行けない。独立リーグには別のルートで来た人もいるが「野球で飯を食っている」人のほとんどが高校大学で「野球をやったことがある」人なのだ。

彼らの特徴をもう一つ言うなら「野球をやったことがない人を、馬鹿にする」ということになるだろう。部外者、未経験者の言うことには耳を貸さない。「記録の神様」宇佐美徹也さんがなかなか認められなかったのも「野球をやったことがない人」だったからだ。

もちろん、高校、大学、社会人、プロで野球をした人でも、野球をやったことがない人を馬鹿にしない人もいる。私は「野球離れ」に危機感を抱く野球人をたくさん取材しているが、そういう人は未経験者を馬鹿にしたりはしない。むしろ「自分たちにない知見を持っている」として居住まいを正して話を聞く人も多い。

「野球をやったことがない」と未経験者を見下す人々は、経験者の中でも「守旧派」に属するのだろう。野球の競技人口、愛好者が減少する中で、危機感を抱かず、今までの認識のままでいる人たちと言っても良いかもしれない。

結論付けるなら「野球をやったことがある」ことは、今の世の中で、それほど重要なことではない。むしろ「旧弊な人間」とみられる可能性もある。「野球馬鹿」と見なされる危険性もある。
むしろ「野球をやっていた」にも拘らず、柔軟な発想ができ、誰の意見でも取り入れることができる人が、今後、求められる野球人だ。
彼らは決して他者に「野球をやったことがないくせに」とは言わないのが特長だと言えよう。



NOWAR


1982・83年松沼博久、全登板成績

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!

コメント

コメント一覧

    • masa
    • 2022年12月16日 11:19
    • 5
      最先端を走ってるMLBのフロントにはコンサル大手のマッキンゼー出身やモルガンやGSなどの投資銀行出身者、統計学の専門家なども普通に在籍してるみたいですしね。
      彼らはもちろん、元アスリートでもなんでもないわけで。

      「外の視点で見るからこそ、見えてくるものがある」ということが旧弊な人には理解できないというか、既得権・優越的地位を脅かされるようで不愉快なんでしょう。
    • 広尾 晃
    • 2022年12月16日 11:59
    • masaさん

      おっしゃる通りですね。
    • のぶ。
    • 2022年12月16日 23:52
    • 経営や事業展開については、ビジネスのプロフェッショナルのほうが当然力量が上でしょう。なのにNPBは旧弊のせいでMLBのように市場拡大が出来ないのが残念でなりません。

      ビジネスだけでなく野球の技術論においてダルビッシュも一目置いているとのお股ニキさんは中学軟式までらしいので、広尾さんの言う通り「野球経験」にこだわる弊害は大きいですね。
コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット