私は高校野球などの経験者ではないが、小さなころから他のスポーツより野球を見るのが好きだった。なぜかと言えば「数字」がたくさんちりばめてあって、いろんな比較ができたからだ。
私が子供のころはONのキャリアの後半だったが、王貞治や張本勲が、川上哲治、そして野村克也の記録を追い抜きつつあったころだ。ほとんどの指標で、現役選手が歴代1位に立っていた。
その後「華の1968年ドラフト組」、田淵幸一、山本浩二、有藤通世らがどんどん数字を伸ばしてくる。私は小学校時代、有藤通世がいた近大野球部寮の近くに住んでいて、私の叔母たちは近大の野球選手たちと映画を観に行ったりしていた。
当時の記録の本と言えば共同通信のオフィシャルベースボールガイドくらいしかなかったが、これは高価だったので図書館で見たりした。あとは子供向けの本。MLBの記録は永井正義さんの読み物が楽しかった。
高校時代になると、宇佐美徹也さんの本が次々と出て、数字の世界が一気に広がった。また1980年代に入るとベーマガからベースボール・レコードブックが発売された。私は数字の世界に耽溺したものだ。
またベーマガのMLB関連のムックもたくさん出て読みふけった。
後楽園球場の中にあった野球博物館の図書室で分厚い「ベースボールエンサイクロペディア」を見たときは感動した。「将来買うぞ」と思ったが、その夢は社会人になってすぐにかなった。銀座のイェナ書房で購入したのだ。そのころは東京には「本を買うため」に通っていた。


私の野球の「価値感」は、純然たる「記録」で出来上がっている。野球選手時代の試合や練習の記憶、感触などは一切ない。草野球はたくさんしたが、それは私の「野球観」とは恐らく関係がない。
「記録」が私に教えてくれたことは「過去の記録は未来の予言」ということだ。積み重ねた記録のなだらかな曲線の先に、未来の記録もつながっている。これを裏切る選手は、ほとんどいない。
30歳までに通算、打率.250だった選手がその後首位打者を取ることはめったにない。K/BBが2やそこらの選手が防御率1位になることもほとんどない。
それはNPBとMLBについても同様だ。NPBとMLBの「交換レート」は1:1ではない。NPBの選手はMLBに行けば、必ず数字が落ちる。超絶凄いNPB選手はMLBに行けば普通の選手か、ちょっとましな選手になる。
野茂英雄はNPB時代ERAは3.15だったが、MLBに移籍して4.24になった。あのイチローでさえも打率は.353から.311に落ち、長打率は.522から.402に激落ちした。イチローがそれでも素晴らしい成績を残せたのは、NPB時代の「積み増し分」が多かったからだと解釈できる。

「過去は裏切らない」「前例主義」は正しい。NPB時代の成績を上回る成績をMLBで残す選手は出てこない。それは私だけでなく、多くの野球ファン、そして専門家の「常識」であっただろう。
この「価値感」をただ一人裏切ったのは、大谷翔平だ。彼は投手成績も、打者成績も、NPB時代よりMLBに移籍してからの方が良い。そして今も伸び続けてもっと良い成績を残しそうな予感に満ちている。彼はNPB86年の歴史で恐らくただ一人、「前例主義」の壁を乗り越えた選手だ。なぜそれができたのかは全然わからないが、彼は日本人の「ニュータイプ」なのだろう。


来年、海を渡る吉田正尚と千賀滉大についても、私は素晴らしい結果を残すとは思えないのだが、ひょっとすると奴らも「前例主義」の壁を乗り越えていくかもしれない。
2023年は、そういう奴らをたくさん見ることができればいいと思う。良いお年を!

1982・83年松沼博久、全登板成績
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その後「華の1968年ドラフト組」、田淵幸一、山本浩二、有藤通世らがどんどん数字を伸ばしてくる。私は小学校時代、有藤通世がいた近大野球部寮の近くに住んでいて、私の叔母たちは近大の野球選手たちと映画を観に行ったりしていた。
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高校時代になると、宇佐美徹也さんの本が次々と出て、数字の世界が一気に広がった。また1980年代に入るとベーマガからベースボール・レコードブックが発売された。私は数字の世界に耽溺したものだ。
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私の野球の「価値感」は、純然たる「記録」で出来上がっている。野球選手時代の試合や練習の記憶、感触などは一切ない。草野球はたくさんしたが、それは私の「野球観」とは恐らく関係がない。
「記録」が私に教えてくれたことは「過去の記録は未来の予言」ということだ。積み重ねた記録のなだらかな曲線の先に、未来の記録もつながっている。これを裏切る選手は、ほとんどいない。
30歳までに通算、打率.250だった選手がその後首位打者を取ることはめったにない。K/BBが2やそこらの選手が防御率1位になることもほとんどない。
それはNPBとMLBについても同様だ。NPBとMLBの「交換レート」は1:1ではない。NPBの選手はMLBに行けば、必ず数字が落ちる。超絶凄いNPB選手はMLBに行けば普通の選手か、ちょっとましな選手になる。
野茂英雄はNPB時代ERAは3.15だったが、MLBに移籍して4.24になった。あのイチローでさえも打率は.353から.311に落ち、長打率は.522から.402に激落ちした。イチローがそれでも素晴らしい成績を残せたのは、NPB時代の「積み増し分」が多かったからだと解釈できる。

「過去は裏切らない」「前例主義」は正しい。NPB時代の成績を上回る成績をMLBで残す選手は出てこない。それは私だけでなく、多くの野球ファン、そして専門家の「常識」であっただろう。
この「価値感」をただ一人裏切ったのは、大谷翔平だ。彼は投手成績も、打者成績も、NPB時代よりMLBに移籍してからの方が良い。そして今も伸び続けてもっと良い成績を残しそうな予感に満ちている。彼はNPB86年の歴史で恐らくただ一人、「前例主義」の壁を乗り越えた選手だ。なぜそれができたのかは全然わからないが、彼は日本人の「ニュータイプ」なのだろう。


来年、海を渡る吉田正尚と千賀滉大についても、私は素晴らしい結果を残すとは思えないのだが、ひょっとすると奴らも「前例主義」の壁を乗り越えていくかもしれない。
2023年は、そういう奴らをたくさん見ることができればいいと思う。良いお年を!

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