改めてNPBジュニアトーナメントの問題点について整理しておこう。
このイベントは前のブログで述べたように「常設チーム」による大会ではない。プロアマの厳しい規定によってプロ球団が常設チームをもって大会に出場することはできない。
あくまで、大会のためだけに選手を選抜してチームを作るのが前提となる。その選出方法については、多くの指導者や父母が指摘するように情実が混じり不公正だとされる。

その上12月末の3日間開催の大会のために、多くは11月になって結成されるチームであり、チーム練習もろくにしていない。指導者は各球団アカデミーの監督、コーチが努める。有能な人が多いが、チームとしての熟練はほとんどできない。
同じ小学生レベルでもU-12侍ジャパンは常設チームで、選手の身体に配慮しつつ、極めてレベルの高い練習を行っている。
しかしジュニアトーナメントのチームは促成栽培だ。監督も選手の特性を見極めて試合を行っているとは言えない。

IMG_4542


何より問題があるのは「大会期間」だ。日本高野連では12月から3月初旬までを「アウトオブシーズン」として対外試合を禁止している。寒い時期に無理をすると肩肘腰を故障することが多いからだ。この時期でも最低気温が10度以上ある沖縄県では「例外規定を設けてほしい」という要望が上がっているが、最高気温が10度前後の東京都で、この時期に高校生よりもはるかに体ができていない小学生の大会を開催するのは無謀と言ってよい。
さらに3日間で最大4試合を行うと言う強行日程だ。イニング数は6回、投球数は70球とされているが、連投の規定はない。
神宮球場がたまたま閑散期だから、そして子供が冬休みに入るから、この時期に設定しているのだろうが、子供の身体への配慮が決定的にかけていると言えよう。
おまけに一戦必勝の「トーナメント」は、子供に無理をさせがちだ。投手がこの時期に全力投球をすれば、怪我のリスクは極めて高くなる。

そもそも「小学生の年代で全国大会で活躍する」ことと「将来の成功」は、直結しているわけではない。確かにこの大会の出場選手から、プロ野球選手になった事例は18年間で77人に上っているが、彼らはこの大会に出たからプロになれたわけではない。
むしろそれより、小学校の時代から大人や高校生の「真似事」をして注目されたことで、将来を狂わせる選手も多いのだ。

中学生以下と高校生以上では、子供の身体は大きく変化する。中学生までの野球選手に多い故障はOCD(離断性骨軟骨炎)だが、高校生以降は肘のじん帯損傷やインピンジメント症候群など、全く異なる。

子供の時期に大人と同じことをさせて、一時期の栄光を味わわせることに、何ほどの意味があるのか?野球の技術など、身体が出来上がった高校以降で習得したとしても、何ら遅いことはないのだ。
むしろ、大人に言われるのではなく、自分で自分の身体を理解して練習法も学んで、自発的に「能力開発」する方が、はるかに可能性が開けるのだ。

角兵衛獅子の獅子じゃあるまいし、大人を喜ばせるために、子供を過酷な状況で野球をさせることの異常さに世間は気が付くべきだ。



NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績

私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!

コメント

コメント一覧

    • ワイマン
    • 2023年01月05日 14:20
    • 少し認識が違っている部分有ります
      チームは夏休み中に自選他薦の4〜500人の応募者の中から、1〜3次選考を経て18人前後が選ばれます
      9月後半から毎週土曜、日曜に全体練習を行い、11月からは他のジュニアチームとこれも毎週土曜、日曜に練習試合を行いチームプレイを体得して、しっかりとしたチームを作って12月下旬のトーナメントに挑みます
      したがって、3ケ月半は一つのチームとして練習を行いますので、11月にチーム編成するとの記載は間違いです
    • 広尾 晃
    • 2023年01月05日 14:28
    • ワイマンさん

      11月まで試合をしていないので、そういう解釈をしました。トーナメントの勝利至上主義なので、いずれにしても駄目でしょう。やめた方がいいと思います。
    • ワイマン
    • 2023年01月06日 21:56
    • 極端な意見ですね
      多分あなたの認識は大きく間違っていると思います
      現場は勝利至上主義など全く有りませんよ
      各チームの指導者は多くの小学生の中から、素質が有る子を発見して、きちっとした指導をすることを目指してます
      だから、シニア、高校と過ごしたジュニアチームOBが、NPBでこれだけの活躍をしてくれてるのだと思います
    • 広尾 晃
    • 2023年01月06日 22:19
    • ワイマンさん

      >各チームの指導者は多くの小学生の中から、素質が有る子を発見して、きちっとした指導をすることを目指してます

      多分コーチングとか新しい指導理論とか知らないのだと思いますが、小学校時代に素質が目立つ子を、今のバカな指導者がエリート教育すれば、大半がつぶれるか野球が嫌になってしまいます。
      筑波大でも早稲田でも慶應でも、野球の指導理論では、小学生の間は素質を見出すのではなく「ずっと野球を好きでいてくれること」を主眼に指導します。それはサッカーに範をとったものです。

      小学時代に体が小さな子が中学に入って、突然大きくなることが良くありますが、スポーツの才能も同様で、小学校で目立たなくても中学以降で伸びる子がたくさんいます。
      むしろ小さなうちに素質が目立つ子は、大きくなって伸び悩むことが多い。なぜなら大人がおかしな指導をするし、子供が大人の期待に応えようとするからです。小学校のエース級はこれまで大概OCDになっていました。
      大人にできることは、そういう可能性のある子も含めすべての子供を「小さいうちに潰さないこと」です。
      小学校時代の「きちっとした指導」なんて大人の自己満足です。

      仁志敏久さんには何度も話を聞いていますが、U12の子供の指導は、極めて理に適ったまともなものです。今の凡百の少年野球指導者とは別次元です。


    • じゅた
    • 2023年01月26日 22:42
    • 今年ジュニアに選出された子を持つ親です。
      このJr.トーナメント開催や指導内容どうのこうのより
      地元チーム少年野球界の監督コーチ達の考え方の古さの方が問題だと思います。
      強いチームは土日は1日でダブル、トリプリでの試合は当たり前にしていますし、バントばかりして勝ち進んでいるチームもあります。相手監督が選手を煽ってくるチームもありました。
      現状はそういうチームが強く、勝ち進んでいきますよ。試合中ギャーギャー怒鳴られたりも当たり前な
      チームもあります。
      Jr.に選出されて、指導内容、日程に不満や疑問は
      ありませんでした。だって子供達にとっては
      ひとつの目標でありご褒美みたいな時間だからです。元プロの選手達からの指導を受けれるチャンス
      なんて滅多にないし、親も子もバカじゃないので
      チームでの自分の立ち位置くらいすぐ察して役割を
      果たそうと努力します。それも一つのいい経験だと
      思います。
      我が子の場合ですが、ジュニアの活動が毎時楽しみ
      で4カ月過ごしましたし、より野球が好きになりました。
    • 広尾 晃
    • 2023年01月27日 00:12
    • じゅたさん

      ジュニアトーナメントは、NPBの多くの球団がやっている普及活動や、アカデミーの指導とは相容れない方針で行われています。
      おっしゃることはわかりますが、所詮、おらおらチームの選手の「御褒美」に過ぎず野球界全体の発展には何ら貢献しないスポット的なものになっています。
      しかも12月末の東京で屋外で行うと言うのも問題大ありです。

    • ハゲ侍
    • 2023年02月01日 22:18
    • 私もこの大会に疑問を持ちました。
      まず、投げる打つなどの基本が出来てない子供達が凄く多い。基本が出来てないのに、技術を無理に付けていて、筋力が付いたときに怪我をしないか凄く心配になりました。
      また、捕球時のハンドリングも基本が出来てない子が目立ちました。
      私は地方在住ですが、大都市であの程度だという現実を知りがっかりしました。
      今は動画で沢山の情報を入手出来ますが、付け焼き刃的な技術が非常に多いので、知識が無いと簡単に騙されてしまいます。
      大会を行うのはいいと思いますが、指導者への情報拡散や教育、育成を行った方が野球かいの
    • ハゲ侍
    • 2023年02月01日 22:19
    • >>7
      野球界の為ではないかと、思いました。
    • 広尾 晃
    • 2023年02月01日 22:29
    • ハゲ侍さん

      NPBそのものの育成方針は進化しているんですけどね。
コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット