野球が面白いかどうか、昨日書いたが、そもそも、これまでの芸術やスポーツのジャンルは、誰が聞いても、見ても、すぐに理解できて、すぐに面白いもの、というのはそんなになかった。
能、歌舞伎、クラシック音楽などの古典芸能は、基礎知識が必要だ。「今やっているこれは何なのか?」がわからなければ、理解できないし、面白いとはなかなか思えない。しかし、ひとたびその面白さがわかると、ぐんぐん深みにはまっていく。絵画や彫刻、工芸品などもそうだ。

スポーツにしても、基本的なルールや技術がある程度わかるようになって、面白くなってくる。速さや高さを競うシンプルな陸上競技であっても「見どころ」を知ってこそ「面白さ」が増すものだ。

野球のようにルールが複雑なスポーツが日本で「ナショナルパスタイム」と言われるほどに普及し、愛好されたのはちょっとした奇跡だと思う。日本人の就学率が高く「学ぶこと」が好きで、歴史やデータなどへの関心も高いことが、野球好きを増やしたと思う。

「趣味」というのは、須らく入門者には敷居が高いが、我慢してその高い敷居を乗り越えれば、そこに新たな世界が広がる、というものだった。その新たな世界は奥行きが深く、汲めども尽きぬ泉のようなものでもあった。

その点が、昨今のデジタル化によってできた新たな趣味との違いではないだろうか?
例えばコンピュータゲームのたぐいは、すぐに面白さがわかる。だから幼児があっという間に夢中になる。もちろん、そこからあとに広がる世界は広大ではあるが、とにかく敷居が低い。それほど我慢しなくても、面白さに到達できる。

またYoutubeなどのSNSで毎日大量に投稿される動画コンテンツの多くも「基礎知識なし」ですぐに面白さがわかるものになっている。

要するに、新たなエンタテインメントの主流は「受け取る側が努力しないでもすぐに面白くなれるもの」になっているのだ。
そういうものに慣れた世代は「面白くなるまで待っていられない」傾向が強い。映画を何倍速かで見たり、端折ってみたりする視聴者が多いようだが、これもその例だろう。映画監督、演出家は、セリフの「間」や役者の微妙な表情の表現に神経を注ぐものだが、今やそれは「独りよがり」になりかねない。それよりも「ストーリー」「結末」を早く知りたいと言う人が多くなっているのだ。

「努力せずにすぐに面白くなりたい」と言う傾向は、若者だけでなく大人、中高年にも強くなっている。趣味の「ライト化」「大衆化」とでも言うべきか。

いまどきの地上波テレビが「野球なんて面白くない」と思うのは、そういう「我慢しない」視聴者を相手にしているからだ。我慢強いファンはBS、CSやネット配信を見るわけだ。

そして球団も「我慢強い愛好家」ではなく「すぐに面白くなりたい」ファンを大事にしようとする。どんな試合であっても、とりあえず歌って踊って「盛り上がる」ファンをたくさん抱え込もうとしている。

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一方で「ヲタク」と言われるディープなファン、マニアも確実に存在しているが、その市場は大ききはない。プロ野球は、彼らだけを相手にするには経済規模が大きすぎるのだ。

要するにプロ野球ファンは二極化しているのだ。
プロ野球がライトなファン層を「上顧客」とする傾向は今後も続くだろうが、いずれ「手詰まり」するときがくる。ライトなファン層は「深まらない」そして「飽きっぽい」からだ。
そろそろマーケティング的にも「次の一手」が必要になって来るのだろう。


NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績

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コメント

コメント一覧

    • ribo
    • 2023年02月13日 12:40
    • 野球に限らず、今のご時世はパッケージが目を引くものじゃないとなかなか手に取ってもらえないですもんね。その分中身が安っぽくなってしまったり、値段が高くなってしまうから、ある意味消費者は損をするので、昔からあるものを手に取って、すぐに評価しないという選択を
      してくれればいいんですけどね。無理ですけど。
      美味しいものはそう何回も食べれないから、結局長く続く飲食店は、程よい味付けだったり、定番のもの、マンネリのものだったりするので、野球がそういう立ち位置に落ち着けばなあと思ってます。
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