昭和の野球人は、チームを超えた「合同自主トレ」を酷く嫌う。「そんなに仲良くなったら、試合のときに真剣に戦えないだろう」「敵のチームに秘密を漏らすことになるだろうが」
こうしたことを言うおじさんたちは、今、宮崎で行われているWBCの春季キャンプをどのように思うのだろうか?

侍ジャパンの選手たちは、MLBからただ一人キャンプに参加したダルビッシュ有に対して、尊敬の念を抱きつつ彼から少しでも学ぼうとして、周囲に集まっている。
ブルペンでは、NPBを代表する山本由伸や佐々木朗希などの投手が、捕手の後ろでダルビッシュの投球を凝視し、少年のような声を上げている。佐々木朗希と宮城大弥は、ダルビッシュからボールの握りを伝授されている。

2012年に海を渡ったダルビッシュ有は、当時野球少年だった彼らにとって、憧れの存在であり、目標だった。11年の歳月を経て、相まみえた36歳のダルが、自分たちが憧れた以上の存在になっていることに、彼らは純粋に驚き、どんなことでも学ぼうとしている。

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日本野球は、指導者が「お前らは俺の方だけ見ていればいいんだ。俺の言うことだけ聞いていればいいんだ」という姿勢で選手を教えていた。そういう指導者にとって、他チームの選手は「敵」であり、その敵と練習したり、教え合ったりするのは「裏切者」だった。
そういう「狭い了見」で日本野球は、ちまちまと派閥を作ってここまでやってきたのだ。

「侍ジャパン」という存在は、そうした派閥のつまらない壁をことごとく取っ払うような力があった。選手たちはペナントレースやリーグ戦の関係を越えて、同じ野球人として教え、教えられ、刺激し合うことでさらに成長することができたのだ。
NPBでチームを超えた合同自主トレをする習慣が広がったのは、侍ジャパンが結成されたことと、交流戦が始まったことと無関係ではないだろう。

日本を代表するエリート選手である彼らは、チームを超えて切磋琢磨することで、一段上の選手になろうとしているのだ。

「それは一握りのエリートだけだ。レベルの低いお前らは、俺の言うことを聞けばいい」と指導者は言うかもしれないが、レベルが低いのはそういう指導者の方だ。
純粋に「うまくなりたい」「自分の思うように体を動かしたい」と思う野球選手の向上心は、チームや派閥を易々と超えるのだ。

宮崎のWBCで連日伝えられるシーンは、全国の野球選手に熱い感銘を与えているだろう。それは本当に良いことだ。


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NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績