世の中には微罪から大罪までいろいろな犯罪があるが、今の世で一番情けない犯罪は、コンビニコーヒーの「Sサイズ」を買って「Mサイズ」を入れるような犯罪だろう。たかだか50円得するだけだが、立派な窃盗罪になる。
窃盗罪で現行犯逮捕される例が、最近相次いでいる。ほとんどは、コンビニ側がこれに気づいて警察に相談し、警察が張り込んでいる中で窃盗に及び、現行犯逮捕されるケースだ。多くが年金生活者とみられる高齢の男性だ。元は社会の担い手として誇りを持って働いていた人も多かったと思うが、わずかな年金で生活するうちに、たかだか50円の金を浮かせることにささやかな喜びを見出すようになったのだろう。そもそも、大きいサイズコーヒーが飲みたかったわけでもなかろう。金額よりもちょっとだけ高いことに満足感を得たわけだ。犯人は「複数回やった」というのが常だ。

コンビニコーヒーはここ10年ほどの間に急速に普及した。取材の途中に立ち寄ったコンビニで、初めてコンビニコーヒーを飲んだ時に、私は思わずうなってしまった。喫茶店のコーヒーの多くは「挽きたて」でも「淹れたて」でもない。保温した作り置きのコーヒーをカップに注ぐだけだ。香りもなく、くたびれたような味わいだったが、こんなものだと思っていた。
本当のコーヒーは、専門店で高い金を出して目の前で淹れてもらうしかないと思っていた。
それがコンビニで100円そこそこで飲めるようになったのだ。私はコンビニ周辺の喫茶店は確実に影響を被るだろうと思った。

4676475_s


コーヒーだけでなく、コンビニは日本人の生活を徹底的に変えてしまったと思う。今や、入金、出金もコンビニ、各種支払いもコンビニ、チケッティングもコンビニ、郵送、配送もコンビニ、コピーや出力もコンビニ、ATMもコンビニ、朝食も、ランチも、下手をすれば夕食もコンビニ。
年寄り二人がのんびりと、さして経営努力もせずに営んできたような雑貨店やよろず屋は、立ちいかなくなったし、ありものの菓子パンを売っていたパン屋もなくなった。タバコ屋や酒屋も苦しくなってきた。

海外でコンビニ行くこともよくある。アジア圏のコンビニは日本と同じ屋号の店も多いが、品ぞろえははるかに劣るし、コピーサービスはないし、挽きたての豆を使ったコーヒーも打っていない。台湾のコンビニでおいしい焼き芋を食べたことはあるが、総じて、海外のコンビニで、日本ほど「コンビニエント」な店は見たことがない。
恐らくは、何事にも徹底的やらないと気が済まない日本人、そして店にどんどん高度なサービスを求めてしまう日本人の特性が、恐るべきコンビニストアを生んだのだろう。

そういうことを考えながら、紙カップをコーヒーマシーンの注ぎ口において、ボタンを押したのだが、間違ってキリマンジャロだったか、ブルーマウンテンだったか、高いコーヒーのボタンを押してしまった。顔から血の気が引いた。「逮捕される!」と思った私は店員に「間違ってボタンを押した、差額払うわ!」と言ったのだが、店員は「いいっすよ」とそっけない返事だった。

かくして私は犯罪者にならずに済んだわけだ。どうでもいい話ですいません。


私のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。ぜひコメントもお寄せください!

好評発売中!



NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績