芸能人や有名人が「WBCなんて興味がない」と言って、ネット民に叩かれている。「非国民」的な非難もされているし「盛り上がりに水を差すな」などと言われている。日本人のつまらないところだ。
私は10年この方、野球のことばかり考えてきて、その挙句に野球のことを書くライターになったが、そうなってからしみじみ思ったのは「野球に関心のある人の少なさ」だ。
昔に比べて野球の露出はものすごく減っているし、他のスポーツの方が好きな人が本当に多くなった。このことへの危機感は、私の大きな取材テーマになっているが、同時に「これが当たり前の状態なのだ」という意識もある。昭和の昔のように、プロ野球、それも巨人戦しかテレビでやっていない時代の方がおかしかった。当時の子供は、ファンでなくてもYGマークの野球帽を被っていたのだ。それしか売ってなかったのだから。

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むしろ野球が一度他のスポーツと同じフラットな関係になって、そこから新たな魅力を構築していくと考えるほうが良いのではないか。そういう感じだ。

WBCブームは野球人気を再燃させるための好機になるのは間違いないが、今のブームは、ぶわーっと注目度が上がって、何が何やらわからないうちに盛り上がっているだけだ。この手のブームが長続きすることはまずない。
それを象徴するのが、東京ドームの外周を取り巻いて並んだWBC関連グッズを買う人々の行列だ。その多くは試合のチケットを持っていなかったし、試合も観戦していなかった。それよりも侍グッズが欲しかったのだ。転売ヤーも混ざっていたが、そういうさもしい連中はごく一部で、グッズを買うことでWBC人気に乗ろうとした人が多かったのだろう。そういう人の多くは「野球が好き」ではなく「今大人気のイベントに参加している自分が好き」だったのだろう。
そしてその人の相当数は「WBCなんて知らないよ」という人を非難する人と重なっているのだろう。同調圧力は日本人の得意技だが、ナンセンスなことだと思う。

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大事なことはそういうブームの中から「本当に野球が好きになってくれる人」を見つけることだ。砂の中から砂金を見つけるようにそういう人たちに「大谷翔平はいないけど、野球っていいな」と思ってもらうことだと思う。

アメリカではこういうブームは起こらないようだ。デーブ・スペクターが
「仮にアメリカが勝っても猫に小判」「決勝戦でさえ地上波ではなくFOX系スポーツチャンネルで、ケーブルプランに加入してないと観られない」
と言って、これまた日本の同調圧力御一行に叩かれていた。そもそもアメリカでは金を払って好きな番組を見るのがテレビ視聴の主流になっているからではあるが、一つのスポーツが国民的話題になる時代はとっくに過ぎ去っている。オリンピックでアメリカは大量のメダルを獲得しているが、国民が大騒ぎすることはない。
日本では映画のキャッチフレーズに「全米が泣いた」とよく使われるが、そういうことは起こらないのだ。多くの人々が「自分はこれが好き」というものを持っていて、軽々にブームに巻き込まれないのだろう。

日本の若者を見ていると、日本でもそういうコンシューマーが出てくるのだろうと思う。それはいいことだと思うし、そういう若者にも選んでもらえる「野球」であるべきだと思う。

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1960~62年柿本実、全登板成績