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トレカ「輪ゴム」に批判 山梨県警の主張は
トレーディングカードの嚆矢は野球のシガレットカードだろう。これは、早くからコレクターズアイテムになり、レアなカードはずいぶんな高値がついている。

私は野球のカードは好もしいものだと思っている。野球選手が好きになると、その選手にゆかりのものを何か身の回りに置いておきたくなる。サインボールやユニフォームや写真など、それはいろいろだが、小さくてコンパクトに情報がまとめられているカードは小さいがゆえに愛着心も沸くし、野球への造詣も深くなる。

コレクターズアイテムになるのもわかるが、それが一般的に「価値がある」と見なすべきかどうかは、また別の話だ。

トレカの前には「切手」が似たようなコレクターズアイテムになった。切手収集は100年以上の歴史があり、有名な切手には数千万円もの値段がついている。切手は、郵便料金を支払ったという「証紙」のようなものであり、本来はそれで完結しているが、絵柄やデザインが珍重され、プレミアがつくようになった。それに呼応して総務省(旧郵政省)も、愛好者向けの切手を数多く発行している。こういう切手は使用されないことが多いから、丸儲けになる。
「切手」は保存状態が問題になる。使用、未使用。1枚かシートか。指紋がついているかどうか。それらが厳密に鑑定される。

切手収集は趣味の世界として広く認知されている。しかしだからと言って、すべての人が「切手=価値のある文化財」だとみなしているわけではない。大部分の人にとっては切手は「郵便を送るためのもの」だ。

ましてや切手のあとに出てきた様々なコレクターアイテムの多くは「本質的には何の価値もない」ものだ。トレカなどその代表であって、使用目的はない。収集、交換、売買だけのものだ。
多くのマニアがそれに「価値がある」と信じることで、値段がついて「市場」ができる。しかし、そこで交換しているのは「本質価値」ではなく「価値があると信じられているもの」だ。

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カードを販売する業者ほど「おいしい」ものはない。カードの原価はデザイン、印刷、用紙代を含めても安いものだ。それを刷って販売するだけで売り上げになる。お札を刷っているようなものだ。「限定何枚」とかの設定には何の根拠もない。何万枚でも刷る事はできるし、データがあれば何度でも刷る事ができる。それをしないのは希少性を担保したいからだ。
阿漕な商売もしようとすればできるが、カードメーカーは、それなりの「良識」があるように思える。カードの「市場性」は、信頼によって裏打ちされている。あくまでも「文化的目的」「意義」のために発行しているという建前を堅持しているのだ。そうでなければカードをめぐる市場の健全な運営ができなくなるから。



しかし周辺の取引業者やマニアの中には、ブームを異常に煽ってカードの価格を吊り上げようとする連中がいる。価格が上がれば、本来の愛好者だけでなく「投機目的」の人間もたかってくる。
こういう形で、カードを不正に入手したり、強盗、窃盗したりする輩が出てくるわけだ。

本来何の値打ちもない「厚紙」をめぐって、犯罪が行われるのは浅ましい限りだが、人間はこういう愚かなことを繰り返してきたのだ。

本来、人が創る「価値」とは、時代を代表する芸術家が渾身の力で作ったものを頂点として、「二度と作れないようなもの」だ。それとトレカが同じように扱われるのは、ちゃんちゃらおかしいとしか言いようがない。
「なんでも鑑定団」が、絵画や美術品と玩具屋やマニアの収集物を同列で取り上げてから、この手の風潮が強まったように思うが。

山梨県警が窃盗犯から押収したトレカを輪ゴムでくくったことについて

「輪ゴムでまとめるとカードに傷がつき、商品価値が落ちてしまう」と、SNSなどで、山梨県警を批判する投稿が相次いだ

とのことだが、カードの価値は本来、そのゲームが好きで、そのキャラを愛玩したい人が購入することで決まるはずだ。輪ゴムによって軽微な傷がついたからと言って「カードが好き、そのキャラが好き」というファンの気持ちは大きく変わらないのではないか。
それよりもこのカードが「金品」であるかのように見えている一部の人間が、あたかも「文化財のように扱え」といっているわけだ。
警察の扱いが良かったとは言えないが、ごく一部の人の価値観を世間全体が尊重すべきかどうかは、議論が分かれる。ありていに言えば、家の廊下に落ちていれば、掃除機をかけるお母さんが「何これ、いるのいらないの、いるのならしまっときなさい」という程度のものだろう。

トレカのショップには、風呂に何日も入っていないような体臭芬々たる人も押し寄せているという。そういう人間は何らかの問題を抱えている場合も多く、一概に排除すべきとは言えないが、本来無価値で、ごく一部の人が楽しみで集めるような「愛玩物」が、投機の対象になるのは、浅ましい限りだと思う。



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