野球のアップデートとは「ビデオ判定」や「AI」を導入することではない。
野球界がビデオ判定を導入したのは「審判が劣化している」からではない。放送技術が進化し、プロ野球などの試合がテレビ中継され、プレーがスローモーション込みで人々に視聴されるようになって、野球のジャッジにも「厳密性」が求められるようになったからだ。
さっきから繰り返しで言っているが、従来は「一連の流れの中でプレーが行われれば、アウトにしよう」というパターンがいくつかあった。ビデオ技術が発達していない時代は、それで通用したが、今は誰もが極めて微妙なジャッジについて判断ができる。
そういう時代になったから、野球界も「ビデオ判定」を導入することになったのだ。
しかし、それでも「微妙なジャッジ」はかなりの頻度で発生する。
たとえば「同時セーフ」のケース。走者の足がベースに触れるのと、塁を守る野手がグラブやミットでボールを捕球するのが「同時」の場合。ルール上は「同時セーブ」となっているが、厳密性をさらに高めていけば、何十分の1秒、何百分の1秒のレベルで「速いか遅いか」も判断することができる。
野球のプレーにそこまでの厳密性を求めるのか、という問題がある。
フェンシングは主要な大会で電気審判機を導入し、極めて微細な判断も機械で行っている。野球もそこまでするのか、ということになる。
フェンシングは電気審判システムを導入しても、総合的なジャッジは人間の審判が行っている。反則などの判断は審判が行っている。
さらに「ビデオ判定」に「AI技術」が導入されることで、複雑なジャッジも人間の手を経ずに行うことが可能になるかもしれない。
「人間なんて不完全なもんなんだから、人間の審判を全部クビにしてAIにする方がいい」と思うかもしれないが、例えば人間が試合をしなくなって、AI搭載のアンドロイドが競技者になるのならいざ知らず、生身の人間がプレーをする限り、人間の審判が必要だ。選手は審判とコミュニケーションを取りながらプレーをするものだ。試合は選手と審判によって成り立っている。試合の運営は「マスターオブゲーム」の審判と選手が協力して行っている。その前提を崩すところまで行くことは考えられない。
そして「ビデオ判定」や「AI技術」が進歩しても「ジャッジへのクレーム」は絶対になくならない。
自分が贔屓にしている選手やチームが不利な判定をされたときに「あの判定はおかしい」「あの審判は失格だ」と言っていた連中は、人間の審判がいなくなっても必ず「ビデオ判定で何が分かる」「AI判定は信用できない」と言い出すものなのだ。その一方で自分の贔屓が有利な判定をされたときには、黙っているものだ。ようするに審判の判定へのクレームの大部分は「身びいき」によるものなのだ。
審判をめぐるトラブルの「肝」はここにある。健全なスポーツ競技において、一度決まった判定に次いで、気に入らないときだけ文句を言うファンの存在が、審判の権威を貶め、競技のコストを無駄に押し上げるのだ。
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先発全員奪三振達成投手／1994～2023
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しかし、それでも「微妙なジャッジ」はかなりの頻度で発生する。
たとえば「同時セーフ」のケース。走者の足がベースに触れるのと、塁を守る野手がグラブやミットでボールを捕球するのが「同時」の場合。ルール上は「同時セーブ」となっているが、厳密性をさらに高めていけば、何十分の1秒、何百分の1秒のレベルで「速いか遅いか」も判断することができる。
野球のプレーにそこまでの厳密性を求めるのか、という問題がある。
フェンシングは主要な大会で電気審判機を導入し、極めて微細な判断も機械で行っている。野球もそこまでするのか、ということになる。
フェンシングは電気審判システムを導入しても、総合的なジャッジは人間の審判が行っている。反則などの判断は審判が行っている。
さらに「ビデオ判定」に「AI技術」が導入されることで、複雑なジャッジも人間の手を経ずに行うことが可能になるかもしれない。
「人間なんて不完全なもんなんだから、人間の審判を全部クビにしてAIにする方がいい」と思うかもしれないが、例えば人間が試合をしなくなって、AI搭載のアンドロイドが競技者になるのならいざ知らず、生身の人間がプレーをする限り、人間の審判が必要だ。選手は審判とコミュニケーションを取りながらプレーをするものだ。試合は選手と審判によって成り立っている。試合の運営は「マスターオブゲーム」の審判と選手が協力して行っている。その前提を崩すところまで行くことは考えられない。
そして「ビデオ判定」や「AI技術」が進歩しても「ジャッジへのクレーム」は絶対になくならない。
自分が贔屓にしている選手やチームが不利な判定をされたときに「あの判定はおかしい」「あの審判は失格だ」と言っていた連中は、人間の審判がいなくなっても必ず「ビデオ判定で何が分かる」「AI判定は信用できない」と言い出すものなのだ。その一方で自分の贔屓が有利な判定をされたときには、黙っているものだ。ようするに審判の判定へのクレームの大部分は「身びいき」によるものなのだ。
審判をめぐるトラブルの「肝」はここにある。健全なスポーツ競技において、一度決まった判定に次いで、気に入らないときだけ文句を言うファンの存在が、審判の権威を貶め、競技のコストを無駄に押し上げるのだ。
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コメント
コメント一覧
ヒューマンエラーなんてたまに起きるのは仕方がないことなのに割り切りが足りません
「センサーの位置が悪い」「カメラの角度が悪い」「ホームチームの有利になるようになっている」などのケチがついて、しまいには
「AIの判定に問題がある場合は人間が判定しろ」なんて、何が何やら分からない話になりそうな気がします。
なにより、個人的には人間が審判をするからこそ、深みというか面白みがあるような気がするのです。
ホームでのクロスプレー。一瞬時が止まり、アウトかセーフか全員が球審を見守るなか、一拍おいての球審のコールが響き渡るっていうのが野球の醍醐味の一つだと思っています。
AIで瞬時にアウトとかセーフとか表示されても、なんか拍子抜けしそうです。
私が古い人間なんでしょうかね。
微妙な判定があった場合、マイクを取って、「ただいまのプレーはこうこうこういう理由でアウト(セーフ)です」と説明をしてほしい。観客にもわかる様に。
それと、昨年のロッテの佐々木投手のように、審判に抗議をしようとしていると判断されただけで、審判から恫喝まがいのことをされてしまうようなことはあったはなりません。
試合中であろうと、お互いに紳士的に話し合いをしなければなりません。
メジャーなんか、大谷投手が、攻守交替の時に審判に直前のプレーについて確認をしているシーンを見かけますが、日本でもそういうコミュニケーションは必要です。
審判は「マスターオブゲーム」ですから、原則として説明する義務はありませんし、抗議を受ければ審判の判断で警告、退場させることができます。
MLBでは問答無用で退場させられることもあります。大谷は審判とのコミュニケーションがうまいのでそうなっていないだけ。
審判にも落ち度はありますが、多くの場合、問題は選手、指導者の側にあります。
それは百も承知していますが、
それを、緩和してもいいんじゃないかとおもっています。
そうしないから、憶測でＳＮＳなどでジャッジについて批判する、ひいては審判員をも批判する事態になったいると思います。
SNSで批判されるから審判が説明すれば、みんな納得するでしょうか？
白か黒かのジャッジで、覆ることはないのですから、よけい特定の審判に非難が集まるだけでしょう。
1つのジャッジ、勝敗にこだわって、いつまでもぐじぐじ言う「無関係の人間」が愚劣なだけだと思います。