戸郷翔征を、あそこまで酷使する根底には「戸郷はうちの社員だ」的な巨人側の認識がある。
昭和の時代の「社員」は、企業と言う「藩」の「藩士」であって、企業に滅私奉公で尽くすことで、一生面倒を見てもらえた。社員は会社に「能力」と「忠誠心」を示して評価される。
昭和の時代から、プロ野球選手は「個人事業主」ではあったが、意識の上では「会社員」のように思っていて、試合で活躍するとともにチームに「忠誠心」を示すことで、監督の覚えがめでたくなり、年俸も上がると言う感覚だった。

特に巨人は「純血主義」を標榜していた時期もあり、選手に会社員のような「忠誠心」を求める傾向が強かった。

近年、トップクラスの選手はMLBに挑戦するようになったが、巨人的な感覚でいえば「何たる不忠者」だった。だから松井秀喜がヤンキースに移籍した時に「ここまでしなくていいのに」と思うほどファンに謝ったわけだ。他にも野村貴仁、岡島秀樹、桑田真澄らが移籍したが彼らは「非エリート」だったり「エリートの道を外れたり」していたので、それほど目くじらを立てなかった。

しかし監督原辰徳の甥で、絶対的なエースだった菅野智之の場合、簡単ではなかった。原監督は自分の甥を特別視するわけにはいかず「メジャーに行くなら十分に活躍してからにしろ」と圧力をかけた。いわば「御礼奉公」を強いたわけだ。菅野は伯父の期待に応えるべく奮闘し、2017、2018と2年連続で沢村賞を獲得した。しかしそれがピークであって、菅野はそこから成績が安定せず、いつの間にか「メジャー移籍」の可能性はなくなった。「御礼奉公のやりすぎ」とでも言おうか?

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菅野が万全な状態でメジャーに移籍していたら、田中将大と同じくらいの活躍は間違いなかっただろう。球威、制球力ともに一級品で、非常にクレバーな投手だったのだから。

伯父の原辰徳は甥がメジャーで活躍できなかったのは残念には思っただろうが、監督としては「エースの流出」を食い止めたと言う気持ちもあっただろう。

さて、菅野の後に出てきた戸郷翔征である。23歳の彼はWBCで「世界」を見たことで、メジャー挑戦に強いあこがれを抱いている。
しかし巨人としてはメジャー移籍を熱望する菅野に高いハードルを与えた経緯がある。戸郷にも同様の高いハードルを科さないと筋が通らない。
戸郷自身もそのことを知っているから「自ら志願して140球以上を投げる」ことになるのだ。その結果として彼も「御礼奉公しまくり」で、キャリアを終える可能性があるだろう。

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他球団は「年俸が上がりすぎて抱えられなくなった」主力選手を、ポスティングで放出している中、巨人はなまじ資金力がある上に、「昭和のブラック企業」的な体質でもあるために、MLBで存分に活躍すべき人材を潰してしまうのではないか。

「夢はMLB、そしてWBCで活躍」と考える有望な選手は、巨人を避ける時代がくるだろう。もう来ているのかもしれないが。


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先発全員奪三振達成投手/1994~2023