日本ハムファイターズと札幌ドームの関係について、よく理解していない人が多い。改めて説明をしておく。
税金など公的資金で建設された施設は、基本的に行政が管理運営するのが筋ではある。
しかし、行政職員の数にも業務量にも限界があるので、他の業者に委託することが多かった。
2003年までは、公的施設の業務を自治体など行政機関に代わって委託できる(管理主体)は行政が出資した法人、公共団体、公共的団体に限定されていた。行政が出資した法人とは、基本的に第3セクターのことだ。
しかし、こうした従来の外部委託は、実質的に「行政が直でやっている」のと変わらない。
結果的に行政組織が肥大するし、いわゆる「お役所仕事」で非効率な業務になりがちだし、コストだけがかかって収益に乏しいという大きな欠陥があった。
そこで小泉純一郎内閣のときに、公的施設の業務のの管理主体は「法人その他の団体であれば特段の制限は設けず」と切り替えたわけだ。
それによって一般企業やNPB法人などでも公的施設の管理運営ができるようになった。
これによって行政側は
・管理のための人的コストが大幅に減少する
・施設のサービスが民間のノウハウを活かすことで向上する
委託される民間側は
・公的機関が造った施設を使って商売ができる
というメリットがある。
基本的に行政は、委託する民間業者に「委託料を支払う」ことになっている。
今、公立の図書館や駐車場、公共ホールなども、民間企業が指定管理者になっている。長谷工が受託している図書館が結構あるし、駐車場など有限会社やNPO法人なども指定管理者になっていたりする。もちろん、そこに公益財団法人や第3セクターなど行政の息がかかった法人が入札して参入することもあるが。
ただ、プロ野球球団が「指定管理者」になる場合は少し異なる。球団は行政側に「委託料はいりません、その代わり営業権を全面的に委託してください」という契約をする。そう言うことも可能なので。
その結果として行政側は
・管理コスト、運営コストは一切かからない
・委託料もかからない
ことになる。
委託されるプロ野球チームは
・自分達で建てた球場のように、自由に商売できる
わけだ。行政側には利益のキックバックなどは一切支払う義務はない。

こう書くと
「税金で建てた施設をプロ野球にただでプレゼントしただけじゃないか」
と思われるかもしれないが、行政が公的施設を建てる目的は・住民サービスの向上や、・賑わい空間の創出などだ。これまで行政がコストを負担して施設を運営してそれを実現してきたが、民間の方がよりうまくこうした目的を実現できるなら「ただでプレゼントする方が得」なのだ。
札幌ドームの場合、第3セクターの株式会社札幌ドームを「指定管理者」にしている。経営は札幌の財界が担っていることになっているが、実質的に業務をしているのは「元行政職員」たちだ。ようするに「札幌市の支店」になっているわけだ。
何故そう言うことをするかと言うと、札幌ドームの収益を「行政側の財布に入れたいから」だ。日本ハム球団には渡したくなかったのだ。利益を株式会社札幌ドームの内部留保にすることで、退職した行政職員を良い給料で雇うことができる。退職金もたくさん出せる。

実は大阪ドームや横浜スタジアムも、同じように第3セクターが「指定管理者」だった。しかし両施設ともに経営不振に陥り、大阪ドームを運営していた株式会社大阪シティドームは会社更生法の適用を受けて実質的に倒産、オリックスグループがドームそのものを買収した。横浜スタジアムは、第3セクターが経営不振になったので、DeNAがこの会社を買収した。
札幌ドームもこのままいけば、第3セクターの株式会社札幌ドームが経営困難になる可能性が高い。しかし日本ハムとの関係がなくなってしまったから、ドームや会社を買収するような企業は出てきそうにない。
今の最大の店子であるコンサドーレ札幌を運営する株式会社コンサドーレは年商36億、総資産は19億程度、株式会社日本ハムファイターズはP/Lを公表していないが、総資産は100億円に近づいている。年商は150億近いだろう。コンサドーレには、第3セクター札幌ドームの買収は難しいだろうし、たとえ買収したところで札幌ドームで収益を上げるのは厳しかったはずだ。
日本ハムの体力なら容易だっただろうが、もはやそのチャンスは失われたということだ。
ざっくり言えば、こういうことだ。
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1972年外木場義郎、全登板成績【3度目の無安打試合達成】
しかし、行政職員の数にも業務量にも限界があるので、他の業者に委託することが多かった。
2003年までは、公的施設の業務を自治体など行政機関に代わって委託できる(管理主体)は行政が出資した法人、公共団体、公共的団体に限定されていた。行政が出資した法人とは、基本的に第3セクターのことだ。
しかし、こうした従来の外部委託は、実質的に「行政が直でやっている」のと変わらない。
結果的に行政組織が肥大するし、いわゆる「お役所仕事」で非効率な業務になりがちだし、コストだけがかかって収益に乏しいという大きな欠陥があった。
そこで小泉純一郎内閣のときに、公的施設の業務のの管理主体は「法人その他の団体であれば特段の制限は設けず」と切り替えたわけだ。
それによって一般企業やNPB法人などでも公的施設の管理運営ができるようになった。
これによって行政側は
・管理のための人的コストが大幅に減少する
・施設のサービスが民間のノウハウを活かすことで向上する
委託される民間側は
・公的機関が造った施設を使って商売ができる
というメリットがある。
基本的に行政は、委託する民間業者に「委託料を支払う」ことになっている。
今、公立の図書館や駐車場、公共ホールなども、民間企業が指定管理者になっている。長谷工が受託している図書館が結構あるし、駐車場など有限会社やNPO法人なども指定管理者になっていたりする。もちろん、そこに公益財団法人や第3セクターなど行政の息がかかった法人が入札して参入することもあるが。
ただ、プロ野球球団が「指定管理者」になる場合は少し異なる。球団は行政側に「委託料はいりません、その代わり営業権を全面的に委託してください」という契約をする。そう言うことも可能なので。
その結果として行政側は
・管理コスト、運営コストは一切かからない
・委託料もかからない
ことになる。
委託されるプロ野球チームは
・自分達で建てた球場のように、自由に商売できる
わけだ。行政側には利益のキックバックなどは一切支払う義務はない。

こう書くと
「税金で建てた施設をプロ野球にただでプレゼントしただけじゃないか」
と思われるかもしれないが、行政が公的施設を建てる目的は・住民サービスの向上や、・賑わい空間の創出などだ。これまで行政がコストを負担して施設を運営してそれを実現してきたが、民間の方がよりうまくこうした目的を実現できるなら「ただでプレゼントする方が得」なのだ。
札幌ドームの場合、第3セクターの株式会社札幌ドームを「指定管理者」にしている。経営は札幌の財界が担っていることになっているが、実質的に業務をしているのは「元行政職員」たちだ。ようするに「札幌市の支店」になっているわけだ。
何故そう言うことをするかと言うと、札幌ドームの収益を「行政側の財布に入れたいから」だ。日本ハム球団には渡したくなかったのだ。利益を株式会社札幌ドームの内部留保にすることで、退職した行政職員を良い給料で雇うことができる。退職金もたくさん出せる。

実は大阪ドームや横浜スタジアムも、同じように第3セクターが「指定管理者」だった。しかし両施設ともに経営不振に陥り、大阪ドームを運営していた株式会社大阪シティドームは会社更生法の適用を受けて実質的に倒産、オリックスグループがドームそのものを買収した。横浜スタジアムは、第3セクターが経営不振になったので、DeNAがこの会社を買収した。
札幌ドームもこのままいけば、第3セクターの株式会社札幌ドームが経営困難になる可能性が高い。しかし日本ハムとの関係がなくなってしまったから、ドームや会社を買収するような企業は出てきそうにない。
今の最大の店子であるコンサドーレ札幌を運営する株式会社コンサドーレは年商36億、総資産は19億程度、株式会社日本ハムファイターズはP/Lを公表していないが、総資産は100億円に近づいている。年商は150億近いだろう。コンサドーレには、第3セクター札幌ドームの買収は難しいだろうし、たとえ買収したところで札幌ドームで収益を上げるのは厳しかったはずだ。
日本ハムの体力なら容易だっただろうが、もはやそのチャンスは失われたということだ。
ざっくり言えば、こういうことだ。
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1972年外木場義郎、全登板成績【3度目の無安打試合達成】
コメント
コメント一覧
過去記事の何も考えていないようなコメントしかしてこない人たちばかりだったら恐ろしいですね。
他地域の人にあれこれ言われるのが気に入らないというのはあるでしょう。
、確か元金で400億借り入れていたはず。利子を含めると550億くらいで札幌市の負担は270億だったかな。返済計画は2031年までかかって完済予定だったので残金が現在も残っている状況。それでエスコンの計画前の時点で日ハムが指定管理者になったところで今度は札幌ドーム側が建設費の回収ができなくなるから、どのみち日ハムは指定管理者にはなれなかったのでは。となると札幌ドームを早い段階で日ハムに売ってしまえばよかったかもしれないけど、別の場所に自前の球場を建てたほうが安上がりだったら、結局、遅かれ早かれ移転していたと思う。
いえ、どこの球場でも施設の償却には30年程度の期間を設定しています。この間に、直接的な収入がなくても、市としての税収増があれば、市民に説明がつきます。
ドーム球場の直接的な売り上げで、償却をするというビジネスモデルはもともとあり得ません。ロッテも償却期間内に指定管理者になりましたが、以後、大成功を収めています。
札幌ドームは三セクの株式会社札幌ドームに委託費を支払っていましたが、日ハムを指定管理者にすれば、それはなくなったはずです。日ハムを指定管理者にすれば、球場使用料の収入はなくなりますが、委託費用も支払う必要はなくなりました。
大阪ドームは、近鉄が営業不振なうえに、無駄な設備投資をしたために償却できずに第3セクターが破綻しましたが、札幌ドームは日ハムが何度も「指定管理者」の申請をしたことでもわかるように、観客動員もあって、十分な採算が見込めました。
なるほど、売り上げで償却をするという目先のビジネスモデルの甘い汁の味を覚えてしまい、市の税の増収が見込めるかどうかを判断できないまま札幌市側がビビっちゃったんでしょうね。じゃあ札幌ドームは今後どうするんだろうと考えても、札幌市が直接運営にタッチできる公営競技をやるくらいしかないかなぁ。サイズ感としても他でも言われている競輪場にするくらいですかね。
>売り上げで償却をするという目先のビジネスモデルの甘い汁の味を覚えてしまい、市の税の増収が見込めるかどうかを判断できないまま札幌市側がビビっちゃったんでしょうね。
的確な表現です。確かに日本では「指定管理者」ビジネスは、まだそれほどなじみがありませんから。
でも、最終的にはこの選択肢しかありません。行政はどんどん小さくなりますから。
株式会社札幌ドームは副市長が副社長で、実質的に仕切っていますが、お先真っ暗はよく理解しているはずです。
競輪などギャンブルは市民の評判も良くないですし、高齢者しかいませんから、厳しいでしょう。いずれ大阪ドームみたいになるでしょうが、ホワイトナイトはいないんじゃないでしょうか。
今見た限りだと、J1のチームでなっていないのはコンサドーレ札幌やFC東京、名古屋グランパスぐらいかな。もちろん、J2等に広げていくと、増えるでしょうが。
ただ、この指定管理者という制度。「聞いた事はあるけど何だ?」という人の方が多いと思います。実際、私もその一人です。
私も元NPB球団の経営者だった方にいろいろ教えてもらいました。