野球界の「パワハラ問題」の背景は「宝塚問題」とよく似ている。そうした不祥事を起こすような「業界の体質」が背景にあるのだ。
そもそも日本の職業野球の原点の一つである「宝塚運動協会」は、小林一三が「宝塚歌劇の男版を作る」ことを目的として、東京にあった「日本運動協会」を引き取ったのがはじまりだ。

大正期に生まれた宝塚歌劇は「清く、正しく、美しく」をモットーとしていたが、上下関係が非常に厳しく、年齢、年次の上位者には絶対服従が大前提となっていた。こういう硬直した組織には「電車に乗っている先輩団員に対して、後輩団員がホームでお辞儀をする」ような、ナンセンスな風習がいくつもできる。組織内に「マウントを取る」ことに執心する人間がでてくるからだ。

野球界も、先輩や指導者に大声で挨拶をする文化が残っているが、これなども本来の挨拶が意味する「親愛の情」「尊敬の念」の発露からは逸脱して、常に「上下関係」を確認するための行為に変質している。こうした組織では、挨拶だけでなく「偉いのは俺か、お前か」の確認行動=マウントが、日常的に行われるようになる。
端的に言えば、これが「暴力」「パワハラ」の温床になる。「相手を殴る」「威嚇する」「言葉で傷つける」のもエスカレートした「マウント」であることが多いのだ。またあまりにマウント行為がひどいために、下位者が反撃して暴力に及ぶこともある。

ただし、こうした組織にいれば、全員が「パワハラ体質」になるわけではない。「パワハラ」を行うのは、その中でも限られた人間だ。「知的レベルが低い」とか「もともと粗暴だった」などの資質の問題もあるが、それ以上に、その組織内で「自分の地位が揺らいでいる」「自分に自信が持てない」ような人間が、安心感を得るためにパワハラを行うことがしばしばあるのだ。「パワハラ体質」になる人間の多くは「小心」で「自尊心」が小さく、「承認欲求」が満たされていないことが多い。また「主体性」がなく周囲に流される人間も多い。
それを指導者が看過すれば、パワハラ体質がさらに強化されるのは言うまでもない。

反対に言えば「自己肯定感」が強く「主体性」が確立した人間はおかしな組織にいても「パワハラ体質」にならないことが多い。

高校、大学時代に「パワハラ体質」になった野球選手の多くは、プロ野球にはいればその体質を薄めていくようになる。プロ野球選手は「個人事業主」であり、社員ではない。また球団も昭和の昔とは異なり、選手に「自己責任」を求める。だから彼らの「パワハラ体質」は次第に解消されていくことが多い。
プロ野球側も、特に高校上がりの選手には、社会人としての常識を身に着けさせるための「教育」を行っている。メディアやファンに対しての接し方、コンプライアンスについて、などなど一通りの教育は行う。

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しかし球団は「教育機関」ではない。選手が不祥事を起こせば、最終的にはその責任は、選手一個が負うべきものであり、球団は選手に責任を取らせることになる。球団には管理責任はあるが、それは限定的だ。MLBでは犯罪行為を起こした選手を、球団が「信頼を損ねた」として訴える場合もある。

安樂智大の場合、愛媛済美高校時代、上甲監督の恩寵を得て「特別の存在」だったが、彼自身は「自己肯定感」が低かったのだろう。パワハラが起こりやすい古い組織だっただけに、高校時代に「パワハラ体質」を獲得したとみるべきだと思う。
プロに入って、自分が不本意な境遇になって不安が増大し「パワハラ体質」が顕在化したのではないか。

球団は安樂を庇うのではなく、是々非々で対応し、場合によっては切ればよいと思う。成人した社会人の問題行動は基本的に「自己責任」だ。



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